艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
野分が歌っているのを想像しながらゲーセンでプレイしたらちょっと笑えた。
「ちょっとあなたたち!?落ち着きなさい!」
完全に怒りで支配された三日月と雪風は矢矧の制止も振り切り、深海棲器片手にベアトリスに向かって突撃する。
「あらあら、随分とその肉塊にご執心なのね、でもそれを失ったからって私たちは退かないわよ?牡丹雪!」
そう言ってベアトリスは牡丹雪を発艦させる、真っ赤な目を爛々と輝かせる
「はあぁっ!」
「だりゃあぁっ!」
しかし三日月たちは深海棲器を使ってそれらを弾き飛ばし、無理やり道を作る。
「ちょっ…!いくら何でも滅茶苦茶でしょ!?」
目を剥いているベアトリスなど気にもとめず、三日月と雪風は
「ぐうぅっ!」
籠手でガードはしたものの、深海棲器による一撃はベアトリスの籠手を裂き、その身にダメージを与える。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺スコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ!」
三日月と雪風は完全に我を忘れて深海棲器による猛攻を繰り返す、装甲を砕き、皮膚を切り裂き、骨肉を断ち、思いつく限りの暴力を加える、より相手が痛がるように、苦痛を味わえるように、恐怖させられるように、そして殺しやすいように。
「くっ…そっ…!」
ベアトリスの艦種は艦娘で言うなら空母だ、艦載機を飛ばして超遠距離からの攻撃を得意とする、しかし手が届くほどの超至近距離からの攻撃には他の空母棲艦同様滅法弱い、艦載機を発艦させる余裕も無ければ至近距離からの空撃による相打ちの危険もあるからだ、人間から“姫”と恐れられる彼女でも自らの艦載機の攻撃を受ければ軽傷では済まない。
「アアアアアアアアァ!!!!!!!!」
「ガャアアアアアァアアアアァ!!!!!!!!」
ダメージを追ってボロボロになっていくベアトリスにトドメをさそうと喉が潰れんばかりの叫び声を上げて三日月たちは得物を振り上げる。
「ぐぎっ!?」
「ぐぁっ…!」
しかしその一手は敵の砲撃により阻まれてしまった。
「全く、ベアトリス先輩ともあろう方がこんなチンケな
「ここは私たちが相手をします、ベアトリス先輩はシャーロット先輩と一緒に休んでいてください」
メアリーとマーガレットがベアトリスを庇うように立ちはだかり、三日月と雪風に砲撃を加えたのだ。
「すまない…頼んだわよあなたたち…!」
ベアトリスは足を引きずるようにして後方へ下がっていく。
「コロス!」
「シネ!」
「残念」
「そんな怒りに任せた攻撃は簡単にかわせるのよ」
しかしメアリーとマーガレットは三日月たちの攻撃をまるでダンスを踊るようにひらりとかわす、そして…
「ひとつ教えておいてあげる、“怒り”を力に変える事は強さにおいて間違いではないわ、でも本当に強いのは…」
「その“怒り”を正しく力に変えられる“冷静さ”を持っている者よ、闇雲に怒りをぶつけているだけのあなたたちは、ただ目的も無く暴れているだけの愚かな獣よ」
三日月の腹にフルスイングでパンチを食らわせ、砲撃で後方へ吹き飛ばす。
「ごふぁ…!」
「ゲホッ…ゴホッ…!」
手痛い一撃を食らった2体は胃液を吐き出しながら嗚咽を漏らす。
「だから言ったじゃない!無謀なのよ!」
矢矧は2体を素早く後方へ下げると、メアリーたちに向けて砲を構える。
(とはいえ私は軽巡、戦艦は
矢矧は目の前の敵を見据えながらも、額に浮かぶ脂汗を止められずにいられなかった。
◇
「あなたたちさぁ、さっきから何度も雷撃ばかりやってるけど、いい加減無駄だって事を理解したら?」
こちらはレオ隊サイド、エリザベート撃破のためのいい案があるというローマの指示のもと、吹雪たちと中衛の一部水雷戦隊がエリザベートの浮島に雷撃を続けていた。
「ならその言葉、そっくりあなたに返しましょう」
依然エリザベートに目立ったダメージを与えられてはいないが、ローマは余裕を見せた表情でエリザベートに指を突きつけてこう言った。
「私はただ闇雲に雷撃を指示したわけではないわ、今までの雷撃が浮島のどこに向かっていたか、よく思い出してみなさい」
「え…?」
ローマにそう言われ、エリザベートは浮島に命中した雷撃の命中箇所を思い出す。
「…全て鋼鉄島前方の一カ所のみ…ってまさか…!?」
ようやくローマの狙いに気づいたエリザベートは顔を青くするが、すでに遅い。
「確かにめったやたらに雷撃を行ったらその浮島は強固な盾になるでしょう、でもそんな鋼鉄の島でも強力な雷撃を一カ所に集中的にぶつけられたら、耐久も脆くなるわよね?」
ローマはニヤリと笑うと最後の雷撃を水雷戦隊に指示し、魚雷を鋼鉄島にぶつける。
「っ!?」
すると、耐久力が限界に達した鋼鉄島の前面部に穴が空き、ものすごい勢いで浸水が始まる。
「きゃああっ!」
浸水で浮力のバランスを失った鋼鉄島は大きく傾き、エリザベートは海面に投げ出された、他の深海棲艦のように水上移動装置は付けていないらしく、沈まないように必死にもがいている。
「今よ!雷撃開始!」
ローマの号令により魚雷の装填を終えた水雷戦隊たちが魚雷を一斉にエリザベートに向けて発射。
「ぎゃああああああああぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
雷撃をまともに食らったエリザベートは一気に大ダメージを受け、溺れそうになる。
「全くもう…あんた泳げないんだから浮き輪のひとつでも持っておきなさいっていつも言ってるでしょ」
「…ごめんなさい」
するとアルビオンを休ませるために後方にいたシャーロットがエリザベートの身体を抱えて再び後ろへと下がる。
◇
「…マズいわね」
少しずつ劣勢になっていく戦況に七海は焦りを感じ始めていた、ベアトリス、シャーロット、エリザベートが戦闘不能、そしてメアリーとマーガレットもいつまで保つか分からない、単純な個々の戦力で言えばこちらに分があるが、向こうは控えの艦娘を絶えず入れ替えているのでこちらの一方的な消耗戦になってしまっている。
「…仕方ない、私も行くか」
七海は意を決したように呟くと、艤装を変化させて前衛へと繰り出す。
「ベアトリス、私も出るから後ろはよろしくね」
「はっ!ご武運を!」
「くれぐれも無理だけはしないで下さいね!」
「何かあればすぐにお助けします!」
ベアトリスたちに敬礼されながら七海は出撃する。
「
次回「博士」
深海棲艦の秘密。