艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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第四章「ヒューマノイド・ソルジャー編」&chapter14「H/S:001編」更新開始。

深海棲艦の始原である七海の誕生経緯を語る過去回想です。

連載当初からご都合主義で続けてきたこの小説ですが、この話以降さらにそれが強くなります、あらかじめご了承ください。

タイトルでは0011になってますが、最後の1はナンバリングなのでそこ注意!(笑)


第四章「ヒューマノイド・ソルジャー編」
第182話「H/S:0011」


『深海棲艦が現れてから人類の平和は失われてしまった』

 

 

 

深海棲艦発生以降人々は口を揃えてそう言った。

 

 

では深海棲艦が現れる前は人類は平和だったかと聞けば、大多数の人間は首を横に振ってNOと言うだろう、それはなぜか?理由は至極簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦が現れる前は、人と人が戦争をしていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第三次世界大戦』

 

 

 

 

そう名付けられたその戦争はアジア、ヨーロッパ、アメリカなどの主要国が参戦した、主な火種のきっかけは枯渇した化石燃料や資源の奪い合いだったと記録されているが、規模が大きくなりすぎて最初の火種を正確に把握している者はいないだろう、話が大きくなりすぎて始発点を見失うのと同じだ、きっかけなど最早どうでもいい、向こうが攻撃してきたからこちらも同じように攻撃する、戦争というのはその程度の事でいくらでも大きくなれる。

 

 

その火の粉は当時平和主義を掲げていた日本にも降りかかるようになった、他国からの襲撃が相次いで起こり、資源の略奪や国民の鹵獲が行われるようになった、その戦火が次第に大きくなった日本政府はとうとう100年近く守り続けてきた平和主義を捨て、戦争への参加…迎撃を決意した。

 

 

とはいえ政府が最初にぶち当たったのは徴兵だ、日本にも自衛隊という名の国防軍が存在するが、当然人数に限りがあるし戦いを続けていけば戦死などで数は減る、国民を徴兵するという手もあるのだが、平和主義を掲げてきた日本に対人…それも殺しの戦闘経験がある者などいるわけもなく、技術を仕込むだけの時間も無い。

 

 

第三次世界大戦に日本が参加してから約5年、人員的、戦力的にも限界が見えてきた日本政府はとうとう禁忌とも言える手段を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦死した兵士や戦争の犠牲者の一般人の死体を素材にクローン技術、遺伝子組み替え技術を応用して軍事用人造人間…ヒューマノイドの兵士を大量生産するという、まさに悪魔の所業とも呼べる計画だった。

 

 

クローンのような人造人間は何も遠い未来の技術ではない、世界初の哺乳類クローンである羊のドリーなどと言うシロモノがすでに40年近く前に作られているのだ、ヒトのクローンが出来上がっていても不思議はない。

 

 

戸籍や人権などの諸々の理由でヒトのクローンの製造は禁じられていたが、日本政府は極秘で研究を続けており、戦争に勝つために日本はその禁忌の技術を実戦投入する事を決意する、軍事用ヒューマノイド『軍事用人工兵士(ヒューマノイド・ソルジャー)』…通称ヒュースの製造に踏み切った。

 

 

 

ヒュース製造計画は他国は疎か国民にも知られないように極秘で進められた、ヒュースを完成させるため、その手の分野に詳しい専門家や研究者などが集められて開発が始まった。

 

 

 

 

 

そして開発が始まってから2年、ついにそれは完成した。

 

 

「おぉ、ついに完成したぞ!」

 

 

 

ヒューマノイド・ソルジャーの開発主任を任されていた榊原啓介はヒュースの開発成功に嬉しさのあまり踊り出しそうだった、開発開始から芳しくない結果が続いていたが、とうとう完成した。

 

 

榊原の目の前にあるヒュース製造用のカプセルの中では中学生くらいの背丈の長い黒髪の少女が緑色の液体の中で眠っていた、この少女が榊原たち開発チームが完成させた初めてのヒュースだ、そのあどけなさの残る見た目はとても殺戮用の兵士とは思えない。

 

 

「それでは覚醒準備に入りましょう」

 

 

研究員のひとりがカプセルの脇に取り付けられている機材とパソコンをケーブルで繋ぐ、これは強制記憶(インプット)と呼ばれる作業で、このパソコンからヒュースの脳へ直接情報を刷り込み、教育の手間を省くのだ。

 

 

「まずは名前ですね、どんな名前にしましょう」

 

 

「そうだな、“七海”…なんてのはどうだ?」

 

 

「七海?」

 

 

「日本は島国だからな、まずはこの海を支配しなければ他国へは攻められない、最終的に七つの海を制覇すればどこへでも攻撃を仕掛けられる」

 

 

「なるほど、それで七海なんですね、分かりました、その名前で登録しましょう」

 

 

研究員はパソコンにヒュース…七海の名前を入力する、これで七海の脳には自分の名前として刷り込まれる。

 

 

その他に強制記憶(インプット)されるのは七海の個体を表す個体識別番号(シリアルナンバー)や日常生活においての必要最低限の知識、戦闘や殺しに関する知識などだ、兵士として育てられるため、殺人に対する善悪や人道、道徳といった知識は対人戦闘の妨げになるので除外する。

 

 

 

「それでは覚醒させます」

 

 

あらかたの強制記憶(インプット)を終えた研究員はパソコンを操作して中の液体を抜き、カプセルを開けて七海を外へ出す。

 

 

 

「…目覚めますかね?」

 

 

「そのはずだが…何せヒトのヒューマノイドはついこの間まで開発が禁じられていた未知の領域だからな、何が起きても不思議はない」

 

 

榊原はそう言うと七海の頬を指でつついてみる。

 

 

「…ん」

 

 

すると、それに反応したのかヒュースの少女はゆっくりと目を開け、黒い双眸で榊原を見る。

 

 

「はじめまして、俺は榊原啓介、よろしくな、お前の名前は?」

 

 

榊原は七海にそう挨拶をすると、強制記憶(インプット)が正常に行われているかの確認もかねて自己紹介をさせる。

 

 

「…はじめまして、私は個体識別番号(シリアルナンバー)“H/S:001”、名前を七海といいます、これからよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、ヒューマノイド・ソルジャー…後に深海棲艦と呼ばれる事になる怪物とひとりの男の出会いだ。




次回「七海の観察日誌」

あくまでも七海と榊原との関係を書いていくので第三次世界大戦とかにはあまり触れません、その他突っ込みどころ満載な展開ですが、近未来のちょっと進んだオーバーテクノロジーということで!。

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