艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そう言えば前に共謀罪の答弁をニュースで見ていたときのことですけど…
「花見であれば弁当を、テロの視察であれば地図や双眼鏡やメモ帳などを…」
上の答弁を聞いたとき
「…何を言い出すかと思えば、深海棲艦と内通?バカバカしい」
「いいから俺の質問に答えろ」
銃を向けられて内心ヒヤッとした海原だが、質問の内容のくだらなさにそれがどこかへ吹き飛んでしまった。
「なら簡潔に答えてやろう、答えは“NO”だ、深海棲艦と内通だなんて…馬鹿も休み休み言え」
海原は木村の問いに答え、Pitを返すよう迫る。
「そうか、分かった」
「素直に言うつもりはないって事だな」
木村はそう言うと引き金を引いて銃を発砲する、サイレンサーを付けているので大きな音ではなかったが、確かな発砲音と共に弾丸が銃口から射出された。
「…おいおい、こっちは質問に答えたっていうのに随分な扱いだな」
海原は一筋の冷や汗を流しながら木村に言う、木村の撃った弾丸は海原の右頬を掠めて飛んでいき、背後の壁に穴をあけてめり込んだ、威嚇射撃といった所だろうか。
「お前が真実を言えばそれで済む話しさ」
「だから言っただろ、俺は深海棲艦と内通なんてしていない、お前の勝手な妄想だ」
「嘘を吐くな!」
木村は突然海原を怒鳴りつけると拳銃をもう一度撃つ、今度は左頬を掠めて弾丸が飛んでいき、壁にふたつ目の穴を作る。
「…なぜ嘘だと思う?」
「考えても見ろ、普通なら
木村は拳銃の次弾を装填しながら大声でまくしたてる、確かに木村の言うことには筋が通っているかもしれないが、それだけの理由で内通者だと思われるのは海原にとっては本意ではない。
「お前の言うことには一理ある、だが俺や艦娘たちが深海棲艦との内通者だと断定する証拠にするには決定力不足なんじゃないのか?実際に深海棲艦と密会してるような証拠写真なんかがあれば話は別だが、
海原はそう言って木村に反論する、しかし彼はそんな海原の言葉などには耳も貸さず、さらにこう続ける。
「別に確たる証拠なんていらない、深海棲艦に関わるモノは全て悪!早々に始末するのが海軍の為だ!元帥はあの化け者共の存在を許してるみたいだが、みんなあの化け物に騙されている!」
「なぜ
「深海棲艦は俺から大切な人たちを奪った悪だ!だから深海棲艦の一部であるあいつらも悪!俺は司令官として鎮守府の艦娘を守るために危険因子は排除する義務がある!これは海軍と艦娘たちのための正義だ!」
無茶苦茶だ、海原はそう率直に思う、木村は
「…ひとつだけ言っておく、お前のやってる事は正義でもなんでもない!自分の感情を周りに押し付けてるだけの独りよがりな自己満足だ!馬鹿の極みだ!」
「っ!!黙れえぇ!」
激情した木村はもう一度銃を撃とうと引き金を引くが、それより先に海原が携帯電話を木村の右手に投げつける。
「ぐっ…!?」
その衝撃で木村は拳銃を落としてしまった、慌てて拾おうとするが、海原がダッシュで木村との間合いを一気に詰めて拳銃を蹴り飛ばす。
「このっ…!」
拳銃を失った木村は海原に殴りかかろうとするが、海原はその腕を掴んで思い切りぶん回して木村を壁に叩きつける、背中から叩きつけられた木村は肺の中の空気を吐き出し、そのままずるずるとへたり込んでしまう。
「よくも俺や吹雪たちを振り回してくれたな、お前の馬鹿みたいな独りよがりのせいでこっちは大迷惑だぜ」
「うるせぇ!お前に何が分かる!家族や友達…大切な人たちを深海棲艦に皆殺しにされたこの悲しさが!自分じゃ何も守れない…あいつらに傷ひとつ付けられないこの無力さがお前に分かるか!?何も知らないやつが知った風な口利くんじゃねぇ!」
木村がそう吐き捨てた瞬間、顔への凄まじい衝撃と共にの視界が突然横向きになった、つい今まで起きて座っていたはずなのに、まるで寝転がったように視界が横を向いたのだ。
「…ならその言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」
しかしその理由はすぐに分かった、木村は海原に殴られていたのだ、その反動で木村は倒れて横向きになり、顔の骨への痛みが遅れてやってくる。
「吹雪たちの事を知ろうともせずに、勝手に自分勝手な正義ばっか語ってんじゃねぇ!」
海原は倒れた木村の胸倉を掴んで引き寄せると、さらに続けてまくし立てる。
「お前の気持ちは俺も分かるよ、俺も家族や友人を深海棲艦の空襲で失って、あいつらに復讐する目的で提督になった、憎かったし悔しかったよ」
「なら何で尚更あいつらを庇うような真似なんて…」
「んなもん理由は簡単だ」
「あいつらが生きたいって願ったからだよ」