艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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第2話「吹雪の場合2」

海原は耳を疑った、この艦娘を?台場鎮守府(ここ)に置け?。

 

 

「海原司令官が言う“何か”が本当にあるのなら、私はそれを知りたいです、なのでお願いします!私をここに置いてください!」

 

 

海原は少し迷っていた、吹雪の申し出に対する答えは“YES”だ、この状態の吹雪をむげに追い出せるほど心無い人間ではないし、艦娘が生還したという興味深い事に対する真相は提督としては是非知ってみたい、しかしそれにはいくつか問題がある。

 

 

「…お前の申し出は聞いてやりたいが、お前はかつて別の鎮守府に居たんだろ?戻らなくてもいいのか?、なんなら俺がそこの提督に掛け合うけど」

 

 

これが一つ目の問題だ、吹雪が艦娘と言うことは轟沈(しず)む前にどこかの鎮守府に所属していたという事になる、艦娘は轟沈が確認された時点で所属記録から抹消…つまり除隊されてしまう、早い話が今の吹雪は無所属(ノラ)なのだ、もし前居た鎮守府に戻りたいと思っているのであれば海原は最大限手を貸すつもりでいる。

 

 

「いえ、前の鎮守府には戻りたくありません」

 

 

しかし、吹雪は海原の提案を拒否した。

 

 

「…理由を聞いてもいいか?」

 

 

「私、前は横須賀鎮守府にいたんですけど、そこの司令官は私達艦娘に色々と酷いことをしているんです」

 

 

「…横須賀が?」

 

 

横須賀鎮守府は支部の中では艦娘保有数が一番という事で有名な鎮守府だ、たしか第5艦隊まで存在して艦娘の在籍数は32人だと海原は記憶している。

 

 

「つまり、横須賀はブラック鎮守府だって事か?」

 

 

「はい、艦娘達の食費を削って武器開発や建造の資材を購入したり、練度(レベル)の低い艦娘や戦力不足の駆逐艦を捨て艦として突撃させたり、あとは性的暴行を加えたり…色々です」

 

 

「…前々から横須賀はブラックなんじゃないかって言われてたが、本当にブラック鎮守府だったとはな」

 

 

吹雪の話を聞いて海原は忌々しげに吐き捨てる。

 

 

「…お前には悪いが、生存していたことは横須賀の提督には伝えさせてもらう、轟沈(しず)んだハズの艦娘が生きていたってなったら色々と面倒なんだ」

  

 

「はい、それに関しては異議はありません、海原司令官に余計な問題を押し付けるワケにはいきませんから」

 

 

随分と物分かりがいいんだな、内心そう思いながら海原は電話を取ると横須賀鎮守府の番号を入力する。

 

 

「台場の海原だ、元気にしてるかクソ野郎」

 

 

(…あまり仲が良くないのかな)

 

 

いきなり相手の提督を罵倒する様子を見て吹雪は冷や汗を流す。

 

 

「お前の所の吹雪が生存していた、あぁ、そうだ、あぁ、あぁ、」

 

 

短い相づちだけしか言っていないが、海原の機嫌が目に見えて悪くなっていくのが顔を見て分かった。

 

 

「っ!!」

 

 

すると、突然海原が受話器を乱暴に置き、クソが!と小さく呟く、吹雪は横須賀の提督がなんと言ったのかはだいたい予想はついていた。

 

 

「…“軽巡棲艦如きにやられる艦娘なんざいらねぇ、吹雪はお前にくれてやる”…だとさ」

 

 

そう吹雪に告げる海原はどこか申しわけなさそうな顔をしていた。

 

 

「…そうですか、まぁ予想できたことなので別に何とも思ってないですよ」

 

 

そう自嘲気味に言う吹雪を見て、海原は改めて決意を固める。

 

 

「なら吹雪、俺の鎮守府に来るか?、俺がお前の生還した理由を一緒に探してやるよ」

 

 

海原はそう言って吹雪に手をさしのべる、“この鎮守府の現状”を考えると吹雪にとっては良くないのかもしれないが、身よりのない今の吹雪をこのまま追い出す事など出来なかった。

 

 

「もちろんお受けします、元は私が言い出したことです、どんな厳しい環境でも頑張ります!」

 

 

高らかにそう宣言する吹雪を見て、海原はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「そうか、なら今から一つ言っておく、心して聞け」

 

 

海原の言葉を聞いて吹雪は身を強ばらせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの鎮守府、おまえ以外に艦娘いないぞ」

 

 

 

 

 

 

「艦娘がいないって、どう言うことですか司令官!」

 

 

海原に言われたことが未だに信じられず、つい声を荒げてしまう吹雪。

 

 

「今言ったとおりだ、台場鎮守府は工廠が差し押さえられてるから建造や開発が出来ない、つまりここで戦えるのはお前だけって事になる」

 

 

「それ鎮守府として成立してないと思うんですけど!?」

 

 

「そんなこと言われてもな…っと、そういえば吹雪にはこの台場鎮守府の事を話してなかったな」

 

 

「?」

 

 

「吹雪、そもそもお前はここに来るまでに『台場鎮守府』という名前の鎮守府を聞いたことがあったか?」

 

 

海原にそう言われて吹雪は記憶を辿る。

 

 

「…無い…です」

 

 

吹雪は台場鎮守府という鎮守府を聞いたことが無かった、しかしそれはよくよく考えればおかしな話だ、日本の各地にある鎮守府支部は互いの連携を取るために専用のネットワークを構築している、どの艦娘がどの鎮守府に所属しているか、この鎮守府の提督は誰か、そもそも鎮守府はいくつあるか…などの情報を共有できるようになっている、だからネットワークに無い鎮守府なんていうのはありえないのだ。

 

 

「そりゃそうだ、台場鎮守府は鎮守府専用ネットワーク…『電子書庫(データベース)』にも載っていない特別な場所だからな」

 

 

「えっ?どうしてですか?」

 

 

吹雪は首を傾げて海原に問うた。

 

 

「それは、この台場鎮守府は問題を起こした提督の流刑地…いわゆる陸の孤島だからだ」

 

 

「…えっ…?」

 

 

吹雪は言葉を失った、流刑地?陸の孤島?つまり司令官は…島流しになったって事…?。

 

 

「俺は以前ある作戦で主力艦隊の艦娘を5人轟沈(しず)めてしまったことがある、それに対する罰としてこの島流しの地…台場鎮守府に飛ばされたってわけさ」

 

 

「…そんな事が…」

 

 

吹雪は海原に何か声をかけようとしたが出来なかった、艦娘に指示を出す提督の責任は重大だ、自分の一瞬の判断ミスが艦娘の命を散らす結果になってしまう事だってありえる、そんな中で艦娘を5人も轟沈(しず)めてしまった提督の心の傷は浅いものではないのだろう、だから吹雪は自分の浅はかな一言では慰めにもならないだろうと思い、何も言えなかった。

 

 

「まぁでも、この海域は深海棲艦なんてほとんど出ないから安心しろ」

 

 

海原は笑ってそう言うが、それは“そんな俺にお前は指揮されたくないだろ?”という意味とも取れる、そんな風に言われているような気がして吹雪は悲しかった。

 

 

「司令官、失礼ながら言わせていただきます」

 

 

「?」

 

 

「司令官が艦娘を轟沈(しず)めていたとしても、それは過去の話です、私は今の司令官を…私を救ってくれた今のあなたを信じます、だからそんな事を言わないでください」

 

 

吹雪は海原の目をまっすぐに見て言った、反面海原は少し驚いたような顔をする。

 

 

「出過ぎた事を言いました、申し訳ありません」

 

 

吹雪は素直に頭を下げて謝罪する、一瞬ひっぱたかれるかも、と思ったが…

 

 

「ありがとな、今日初めて会ったばかりのお前にそこまで言ってもらえるなんて、嬉しいよ」

 

 

そんな心配は杞憂に終わった、海原は吹雪の頭を優しく撫でた。

 

 

「俺はもう誰かを轟沈(しず)ませるつもりはないし、全員が生きて帰ってこれる艦隊にするつもりだ、だから吹雪、こんな俺だが付いてきてくれないか?」

 

 

今度は海原が吹雪に頭を下げた、海原は過去の過ちを悔いているのだろう、だからこそ、目の前にいる吹雪にそのチャンスを与えもらおうとしているのだ。

 

 

「はい!こちらこそよろしくお願いします!司令官!」

 

 

吹雪はとびっきりの笑顔で海原に敬礼をする。

 

 

「…よし!駆逐艦吹雪、今日からお前はここ…台場鎮守府の仲間だ!」

 

 

そう宣言する海原は、吹雪に負けず劣らずの笑顔だった。




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戦艦と空母のレベリングが不足していて絶賛火力不足中…

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