艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
現在E-6の攻略を始めてますが、TPゲージ1150って何だ。
「はい、私がここの司令官の海原です」
報道メディアの人が来ている、という知らせを聞いた海原はまさかと思ったが、門まで来てみれば本当にいるではないか。
「テレビ夕日のハイパーKチャンネルの絵菜と言います、今月の頭にあった都営環状線の事件の加害者の艦娘、こちらにいますよね?お話を伺いたいんですが」
絵菜は海原に詰め寄るように聞いてくる、本当なら帰れと一蹴したいところだが、その前に聞かなければならないことがある。
「その前に、なぜ加害者の艦娘がここにいると思ったんですか?ニュースやメディアではその艦娘がどこにいったかなんて言ってなかったですよ」
海原は慎重に言葉を選びながら絵菜に問う、まず一番に聞きたかったのは事件の加害者…曙がここにいるという情報をどこで手に入れたのかだ、曙のその後については海軍上層部も情報をメディアには一切開示しておらず、普通なら知り得ない事だ。
「すみません、
絵菜はニコリと笑い、ハッキリと海原の問いに答えることを拒絶した。
(となると、軍内部の誰かが漏らしたかだな、銀行強盗の事件で余計にメディアが艦娘をつついてるって言うし…)
メディアに出回っていないとなれば内部から聞き出したということになる、先日の銀行強盗事件で艦娘が関わっていると判明して以降メディアが大本営に連日集まっていると海原は聞いていた、おそらく対応に困った一部の人間が曙に関する事を聞いてくるメディアを台場に向かわせたのだろう。
「すみませんが、当事者の艦娘には非番を与えていて、3日間の旅行に行っています」
海原は絵菜にそう言った、もちろん曙は非番ではないし居ない理由も旅行ではなく相互着任会なのだが、“居ない”事に変わりはないので嘘は言っていない。
「旅行…?行き先はどちらに?」
「すみませんがお教えするわけにはいかないですね、艦娘にも守られるべきテリトリーはありますので」
海原はそう答えて絵菜の質問をやり過ごす。
「…分かりました、また伺います」
海原の対応に若干不服そうな絵菜であったが、実際にいないのだからこう言うしかない、それにいたとしても曙をメディアに会わせる気はない、散々心傷を抉られている彼女にこれ以上追い討ちをかけるような事はしたくなかった。
もっと粘るものだと思っていたが、予想に反して絵菜は大人しく引き下がって帰って行った。
「司令官…」
「司令殿…」
絵菜の姿が見えなくなると、近くの物陰に隠れていた三日月と夕月が姿を現す。
「…まさかメディアが来るとは思わなかったな、曙が横須賀に行ってて良かったぜ」
「ですが、この事は横須賀の司令に話すべきかと思います、あの女、大人しく引き下がったように見えましたが、どこか狡猾さを秘めているような感じがしました」
「ほう、お前も気付いたか」
夕月の観察眼に海原は感心するように言う。
「まぁ、とりあえず木村には報告しておいた方がいいだろうな」
海原は三日月と夕月を引き連れて鎮守府へと戻っていく。
…一方そのころ、絵菜とその他スタッフの乗るバンの中。
『艦娘にも守られるべきテリトリーはありますので』
先程海原から言われた言葉が頭の中をぐるぐると周り、その度に彼女の中でイライラが募る。
「…あんな殺人兵器に守られるテリトリーなんて…バカみたい」
そう呟いて拳を握り締める絵菜の瞳に宿る感情は、『憎悪』だった。
◇
「…というワケだ、必ず来るかどうかは分からんが、一応用心しておいてくれないか?」
海原が提督室に戻った後、さっきあった事の顛末を話す。
『なるほど、分かった、メディアが来るような事があったら適当にあしらっておくよ』
「すまないな、そっちにまで迷惑かけて」
『俺だってお前やお前の所の艦娘に迷惑かけまくったんだ、お互い様だよ』
「そうか…悪いな、よろしく頼む」
『了解』
海原が受話器を置くと、それと同時に提督室のドアがノックされる。
「海原提督、矢矧、天雲、秋霖です」
「どうぞ」
海原が答えると、ドアが開いて矢矧たちが入ってくる。
「どうしたんだ?3体揃って」
海原がそう聞くと、矢矧たちが揃って腰を折り…
「この度は申し訳ありませんでした、提督の指示とはいえ、あなたとここの艦娘たちにご迷惑をお掛けしてしまいました、改めてお詫び申し上げます」
代表で矢矧が海原に謝罪した。
「おいおい、別にそんなかしこまって謝らなくていいよ、お前たちは木村の指示でやったんだから矢矧たちに罪はない、これから仲直りしていけばいいだけさ」
海原はそう言って笑う、それを見た矢矧たちは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにフッ…と口元を緩める。
「それでは海原提督、残り僅かですが、改めてよろしくお願いします」
矢矧たちはそう言って無駄のないきれいな動きで敬礼する。
「あぁ、こちらこそ」
海原もそれに倣い、敬礼を返した。
◇
「ふぅ、しかしマスコミか、海原も厄介な案件を抱え込んだもんだな」
木村は椅子の背もたれに寄りかかって伸びをしながら誰に言うわけでもなくぼやく。
「それにしても、まさか曙ちゃんがあの事件の加害者だったなんて…」
その横で会話の内容を聞いていた大和が依然信じられないといった様子で言う。
「俺も驚いたよ、でも海原から話を聞く限りじゃ友人を人質に取られて、おまけに首に爆弾を付けられてたって話じゃねぇか、なのに曙だけが槍玉にあがってるのが気に食わねえな」
「全くです」
木村と大和は口々にそう言う。
「失礼します、提督」
すると、提督室のドアが開いて古鷹が入ってくる、その表情には困惑と焦りが浮かんでいた。
「どうした古鷹?」
「あの…玄関に絵菜さんという女性の方が来ています、テレビ夕日のハイパーKチャンネルのインタビュアーだそうで…」
「…おいおい、まだ海原と電話して半日も経ってないぞ」
どうやって追い返すかの対策をさっさと考えておけば良かった、そう後悔する木村だった。