艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
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アークロイヤルは欲しかったですが、ウォースパイトやグラーフがゲット出来たので収穫はありました。
イベント中にゲットしたレーベでマックス建造チャレンジしたら一発でマックス建造出来て驚いています、出るもんですね。
1週間にわたり行われていた相互着任会も最終日を迎え、吹雪たちが台場へ帰る日になった。
「1週間お世話になりました」
「またいつでも来てくれ、歓迎しよう」
「今回は急に大規模作戦が入って大変だったから、次はゆっくりしたいですね」
武蔵と大和に見送られ、吹雪たちは台場へ戻るべく帰路につく。
「一時はどうなるかと思ったけど、終わってみれば楽しかったね」
「最終的には木村とも和解できたし、成果は上々って所ね」
吹雪たちが思い思いの感想を言い合っていたまさにその時…
「台場鎮守府所属の艦娘、曙さんですよね?ちょっとお話伺えるかしら?」
突然物陰からひとりの女性と数人の男が現れて吹雪たちを取り囲み、女性はマイクを持って曙に詰め寄った。
「な、何なんですかあなたたちは!?」
半ば押しかけのような状態で曙にマイクとカメラを向けてくる連中に、吹雪が間に入る。
「テレビ夕日のハイパーKチャンネルの絵菜と言います、彼女が先日の都営環状線の事件の“加害者”…曙さんよね?彼女にお話を聞きたいの」
絵菜は吹雪たちに素性を名乗ると、吹雪を押し退けて曙にカメラを向ける。
「困りますいきなり!そういうのは鎮守府にアポを取って貰わないと…!」
「アポが取れなかったからこうして直接来てるんじゃない」
尚も吹雪が止めに入るが、絵菜はそう言って吹雪を一蹴する。
「いや、だったら素直に引き下がりなさいよ、こんな方法で押し掛けてくるなんて馬鹿じゃないの?」
暁が遠慮の“え”の字も無い言葉で絵菜に突っかかる、暁に限らず台場鎮守府の艦娘たちはメディア関係者にあまり良い印象を抱いていない、曙の心傷に散々塩を塗ったというのが主な理由だ。
「何とでも言いなさい、私にはこの事件の真相を突き止める使命があるのよ、さぁ、話を聞かせてちょうだい」
絵菜は高圧的な態度で曙に詰め寄った、これでは取材というより尋問だ。
「ちょっと…!」
「いいわよ吹雪、取材受けるから」
行き過ぎた取材行為に吹雪が止めに入ろうとしたが、曙がそれを遮る。
「この様子じゃ話すまで帰してくれそうにないし、協力しないと面倒くさそう」
最早なげやりとも言える諦めムードで曙は言った、“協力”というより“観念”といった感じだろうか。
「中々物分かりがいいじゃない、なら聞かせてもらうわ」
おおよそ質問する側とは思えない態度はそのままに、取材と言う名の尋問が始まった。
「まず、あなたはどうして殺人を犯したの?」
最初の質問に曙は“またか”という気持ちを隠しきれなかった、その手の質問はあの時に何度も聞かれている、なのでこちらからの答えもひとつだ。
「私と友達を買った奴からそう命令されたからです、人殺しなんてしたくなかったけど、友達と自分の命が人質に取られていたから、逆らえなかったんです」
「逃げようとは思わなかったの?」
「何度も思いました、でも爆弾の首輪を外すことは出来ないし、起爆装置のリモコンを奪おうにも部屋にいるときは鍵付きの金庫に仕舞われていたから逃げても死ぬかもしれない、そう考えると怖くて逃げられませんでした」
曙は淡々と質問に答えていくが、その心境は決して穏やかではない、あの事件は今もなお曙のトラウマとして心に刻み込まれている、しかしそれを忘れてしまおうとは思わない、確かに思い出すのも恐ろしい記憶だが、本当に忘れてしまえば何かを無くしてしまうような気がするから、いつまでも記憶の片隅に置いておこうと曙は決めていた。
「…本当にそうかしら?」
「?」
絵菜の切り返しに曙が首を傾げる、曙が言ったことは当然と言えば当然なのだが、どうやら腑に落ちていないらしい。
「逃げられなかったんじゃなくて逃げなかったんじゃないの?」
「…どういうことですか?」
この時すでに曙は絵菜が何と言うかを察していた、自分がこう答えた時、取材者が何と言うかはこの1パターンしかない。
「あなたが逃げる努力をしなかっただけじゃないかって言ってるの、その起爆装置だって金庫に仕舞うときに奪おうと思えば奪えたはずだし、何なら警察に駆け込むことだって出来たはず、何の努力もせずに言いなりになってるだけだったあなたにも非はあるんじゃないかしら?その挙げ句に殺人なんて馬鹿馬鹿しい…」
絵菜はそう言って曙を非難する、しかしそれこそ曙が一番言われてきた、そして一番言われたくなかった言葉であった。
「…口では何とでも言えますよ、それに実際にそんな状況にたった事がない外野にだけはそんな事言われたくないです」
曙ははっきりとした言葉で絵菜の見解を否定する、彼女のような言葉は何度もメディア関係者からぶつけられたが、実際に経験したこともない第三者からそんな風に言われるのだけは我慢ならなかった。
「…人殺しが生意気言ってんじゃないわよ、あなた本当に反省してるの?自分が殺した人やその遺族に対して、罪の意識はちゃんとあるのかしら?」
絵菜が明らかな怒気を含んだ口調で曙に問い掛ける、なぜ彼女はそこまでこの事件にこだわるのだろうか、曙には分からなかった。
「…もちろん、私が殺してしまった人やその家族には申し訳ないと思っています、でも…」
以前の曙ならここで謝罪の言葉を吐くだけで終わっていただろう、でも今の曙は違う。
「私は人を殺した“加害者”でもあり、組織に金で売られ、友人と自分の命を人質に取られ、やりたくもない殺人を強要された“被害者”でもあるんです、そんな私のことを、もっとちゃんと見てください」
自分の心の底からの本音を、自分が本当に伝えたかった事を、ハッキリと口に出すことが出来る、台場鎮守府での出来事が曙を確かに強く成長させていた。
「っ!」
刹那、突如その場にパン!という乾いた音がいやに良く響いた。
「ふざけないでちょうだい!」
絵菜が曙の頬を思い切り叩いたのだ、一瞬何をされたか理解できなかった曙だが、数秒遅れて自身の右頬にヒリヒリとした痛みが伝わってくる。
「人を殺しておいて自分は被害者?馬鹿も休み休み言いなさい!あんたが殺した人を…私の夫を返してよ!何であの人はあんたみたいな
絵菜は曙の胸倉を掴んでガクガクと揺さぶると、涙ながらにまくし立てる。
「夫…?」
絵菜の言葉を聞いて曙はどこか腑に落ちたような気分になる、なぜ彼女がここまでこの事件に固執するのか、それが曙には分からなかったが、絵菜の夫が被害者ならばそれも納得がいく。
「あの、これ以上私情を挟んで取材をするようならお引き取りください、あなたのしていることは取材ではなく個人的な尋問と糾弾です」
そこへ吹雪が間に止めに入る、絵菜はハッと我に返ったような顔をすると、どこかばつの悪そうな顔をして帰り支度を始める。
「…このまま終わらせるつもりはないから」
それだけ言うと、絵菜はスタッフと車に乗って走り去ってしまった。
吹雪たちはその姿をただ見送ることしか出来なかった。
◇
「それじゃあ、室蘭と舞浜の提督は艦娘売買の事実を否定してるんだね?」
「はい、海軍警察の事情聴取の報告によると、艦娘を民間人に売ったような事実はないし、そもそもその艦娘が鎮守府に在籍していた事もない、と言っているようです」
造船所所長室、榊原は潮風から海軍警察が行った事情聴取の結果報告を聞いていた。
「ふむ…なるほど…」
榊原は保護している山風と浜風のデータを見ながらうーん…と唸る、何度確認してもこの艦娘の所属記録は室蘭と舞浜だ、所属記録は各鎮守府への配属が決まった時点で
「となると残りの可能性は…」
榊原が頭を回しながらあれこれ考えていると、あるひとつの仮説が頭に浮かんだ。
「…だとしたら、まさか…」
ある程度考えをまとめると、榊原は潮風にこう指示を出した。
「潮風、ちょっと“マザー”のデータを見てきてくれないか」
次回「安楽死」
せめて苦しまず安らかに…