艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
最近ドラゴンクエスト11(3DS版)をプレイしています、これが初ドラクエなのですが中々面白いです、70時間以上プレイしてもクリアが見えない辺りこのゲームのボリュームナメてました。
艦これのイベントはE-2をクリアしてE-3に取り掛かろうとしているんですが、トリプルゲージという心折設計で早くも挫けそう。
「さて、今回は最近になって頻発している、人間が艦娘を不正に売買して犯罪行為を行わせている問題について特集したいと思います」
絵菜の司会進行で番組のコーナーはつつがなく進んでいく、原稿を読み上げていく絵菜の姿は中々様になっており、海原たちの知っている彼女とはまた別の一面をみせている。
「今回は特別ゲストとして、海軍の鎮守府に所属している現役の司令官にお越しいただきました」
開始早々に絵菜からの紹介を受けた海原は姿勢を正す。
「ご紹介にあずかりました、台場鎮守府の司令官をしています、海原充といいます」
海原は畏まった態度で自己紹介をする、横にいる曙が“コレジャナイ感”で笑いを堪えているのが視線の端に映ったが、海原自身も多少は自覚しているので大目に見ることにした。
「それでは海原さん、最近の艦娘が利用されている事件について、どう思われますか?」
「そうですね、とにかく艦娘たちが気の毒でならないというのが本音です、聞くところによれば犯罪の片棒を担がせるために薬物依存にさせて飼い慣らしていたとか、犯人には強い怒りを感じますよ」
海原は落ち着いた様子で絵菜の質問に答えていく、今回のテレビ出演で重要なのは艦娘は世間で噂になっているような悪ではないということを伝えることだ、それだけは何としても達成しなければならない。
「なるほど、世間では艦娘の運用を取り止めるべきだという声が日に日に大きくなっているようですが、それについてはどう思われますか?」
「まったくバカバカしい事だと思いますよ、艦娘は深海棲艦に対抗できる唯一の手段です、それを取り止めようなんて自殺行為もいいところですよ」
「しかし、たとえ利用されていたとしてもその艦娘たちは実際人を殺しているんですよね?そんな人を殺せるような兵器を使い続けるのは問題があるのでは?」
そう言って海原に反論したのはどこかの政党に所属している
「あなたは一つ大きな勘違いをしている、本来艦娘は深海棲艦を倒すための兵器であり人を殺すための道具じゃない、今回は良識の無い人間が間違った方法で艦娘を悪用したに過ぎない、艦娘たちが責められるような道理はありませんよ」
海原がそう言うと、浪川はうぐっ…と息を詰まらせる、本当に自分の信念を持って艦娘保有に反対しているのならこの程度のカウンターで言葉を詰まらせるようでは話にならないのだが…。
(支持率稼ぎのために大衆の意見に同意しているだけか…)
そう確信した海原は浪川を早々に黙らせようか、などと考えていたが、浪川がさらに言葉を返してきた。
「で、では今回のように悪用されるリスクを負ってでも艦娘の運用を続けていくと?」
「それは悪用する人間が悪いんであって艦娘たちに罪はない、それにリスクを承知で目先の利益を取るのは我々海軍だけではないでしょう?例えば原子力発電所なんかは40年前に起こった東日本大震災での被爆事故という大きなリスクの前例があるにもかかわらず脱原発は進んでいない、それどころか原発の必要性を訴えて稼働を再開する場所もある、それと同じです」
海原がそう言うと、浪川は完全に沈黙してしまった、もっと食い下がってくると思っていたが、拍子抜けである。
「そうでしょうか?俺はそうは思いません、彼女たちにも非はありますよね?環状線事件にしろ今回の銀行強盗にしろ、努力をすれば艦娘も逃げられたはずです、自分から現状を変える努力を怠った艦娘にも罪はあると思うんですがねぇ」
「そ、そうですよ!それは私も言いたかった!」
すると今度は専門家の枠で呼ばれた
「聞いた話じゃ君の隣に座っている彼女がその事件で人を撃った艦娘だそうじゃないか、この際だから言わせてもらうけど、君がいくら被害者の顔をしたって人を殺したっていう罪は消えてなくならないんだよ、問題解決のために自分から何の努力も行動もしなかった君に被害者の名乗る資格は無い、君はただの人殺しだ!」
蘇我が曙を指差し堂々とその言葉を突きつける、ある程度の覚悟はしてきた曙だったが、やはりこうして面と向かって言われてしまうと心を抉られる気分になる。
(…やっぱり絵菜さんみたいな事を言う奴ばかりだな)
ある程度予想できたこととはいえ、海原は呆れながら小さくため息を吐く、隣を見れば曙が悲しそうな顔で俯いていた。
(…よし、ならアレをやるか)
海原は本番前にこっそりポケットに忍ばせていたモノを曙にこっそり手渡す。
「(ほ、本当にやるの…?何もここまでしなくても…)」
「(口で言ったって伝わらない奴には伝わらないんだよ、ここは実践あるのみだ)」
「(うぅ…なんだか罪悪感…)」
曙はやや不安そうに海原から受け取ったモノを隠しながらそっと席から立ち上がる。
「…しかしそうは言いますがね蘇我さん、環状線事件の艦娘…ここにいる曙はあなたの言う努力や行動を封じるために爆弾付きの首輪を着けて、さらには同じモノを着けた友人を人質にとられていたんですよ?その点に至っては仕方ないのでは?」
「それこそ起爆装置を奪うなりこっそり抜け出して警察に駆け込むなり努力をするべきだったんですよ、俺ならそうしてますねぇ」
「ほほう、それはすごい、出来れば今ここでこいつにそのお手本を見せてもらいたいですね」
「俺もそうしたいところですが、何せそういった状況では無いですから…」
蘇我はハハハ、と笑いながら海原の発言を流すが、その言葉こそ海原が待ち望んでいた言葉だった。
「…なるほど、では今から検証してみましょう」
海原はそう言って曙にハンドサインで合図を送ると、曙は素早い行動で蘇我の後ろに回り込み、首筋に何かを取り付ける。
「な、なんだこれは…!?」
突然首に何かを着けられた蘇我は、慌てて首筋に触れてその形を確かめる。
「…首輪…?」
「事件で使われた首輪型の爆弾を再現しました、俺が持っているこのスイッチを押すと爆発するようになっています」
海原はそう言ってポケットから取り出した防犯ブザーのような形状の起爆装置を手で弄ぶ。
「ふん、そんなことを言って、どうせレプリカか何かだろ?いいからこれを外せ」
「レプリカ?いえいえとんでもない」
海原はポケットから蘇我の首に着けた首輪と同型のモノを取り出すと、スタジオ真ん中の床に放り投げ、スイッチを押す。
刹那、首輪が小さな爆発を起こし、決して小さくない爆発音がスタジオ中に響きわたった。
スタジオからは出演者とスタッフの悲鳴が聞こえ、一気に緊迫した雰囲気になる。
「これでその首輪が本物だと信じてもらえましたか?」
海原はニコリと笑いながら蘇我の元へ近付くと、すっかり怯えてガタガタと震える蘇我の前にカッターナイフを置く。
「今からあなたにミッションを出します、その首輪を爆破されたくなかったら、そのカッターナイフでここにいる誰かひとりを切りつけてください、それが嫌なら俺から起爆装置を奪って爆破を阻止してください、制限時間は10分です」
「さぁ、検証開始だ」
そう蘇我に向かって呟く海原の顔は、悪魔ですら震え上がらせるほどの恐ろしい笑顔だった。
次回「言うは易し行うは難し」
これでもお前は、こいつを否定できるか?