艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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気付けばブラウザー版の艦これを始めて一年が経ちました、ですがイベント海域は一度も完走していません…

そして由良のクリスマスボイスの「あーん♪」がまた聞けるので嬉しい。


第200話「渋谷奪還作戦14」

鹿沼からの連絡を受けた海原はすぐに曙を連れて渋谷に向かった、周辺の交通は完全にマヒしていたためテレビ夕日の空撮用ヘリで近くの公園まで乗せてもらった、そのおかげで想定よりも早く現場に到着することが出来た。

 

 

「あ、司令官!こっちです!」

 

 

作戦の拠点となる渋谷駅近くのスクランブル交差点に設置された仮設テントへ向かうと、すでに到着していた吹雪たちDeep Sea Fleetのメンバーが待機していた、他には海軍警察、レスキュー隊、救急隊、陸上自衛隊などの人間があちらこちらを走り回っている。

 

 

「それぞれの隊員さんたちには民間人の避難や人払いなどを任せているそうです、ここら一帯の住民はすでにこの下にあるシェルターへ避難させているようですよ」

 

 

「そうか、そういやこの真下には避難用の地下シェルターがあるんだっけか」

 

 

海原は道路脇に現れているシェルターの入り口を見て言った、渋谷の地下には大規模な避難用シェルターが存在し、深海棲艦の空襲などにも耐えられるようになっている。

 

 

「しかし、今回の作戦の拠点がスクランブル交差点というのが些か疑問だな、こんなだだっ広い場所に拠点を構えては敵に狙ってくれと言っているようなものじゃないか」

 

 

すると夕月が先ほどからずっと疑問に思っていた事を周りを見渡しながら呟く、今回の作戦の拠点はスクランブル交差点の端の方…人気ファッションショップの309(通称サンキュー)の近くだ、夕月の言うとおり周辺に遮蔽物などはほとんどないため敵からはこちらの姿が丸見えになる、しかしこれはデメリットばかりではない。

 

 

「確かにお前の言うとおりだが、それは逆を言えば敵も身を隠す手段が無いから自分たちからも敵の姿がよく見えるって事だ、そうすれば奇襲を受ける確率も減るし、下手に入り組んだ場所や屋内にいるよりも瓦礫の下敷きになりにくい、お互いノーガードだからまだ牽制のし合いで済んでるんだ」

 

 

「なるほど、大本営の作戦も案外まともなんだな…」

 

 

「まるで大本営がまともじゃないみたいな言い方は止めてもらいたいもんだがな」

 

 

夕月のトゲを隠そうともしない言い方に鹿沼が反応して言い返す、海原に作戦の指示をするためにこちらに来たようだ。

 

 

「生憎だが私はお前らの事をマトモだと思ったことは一度もない」

 

「…それじゃあお前たち台場への指示を説明する」

 

 

挑戦的な台詞で挑発してくる夕月を無視して鹿沼は説明を始める。

 

 

「今回の作戦名は『敵渋谷陸上泊地強襲作戦』、目的は陸上泊地艦隊の撃滅、艦隊を構成するのは多数の駆逐戦車とその旗艦(リーダー)である姫級…『泊地棲姫(はくちせいき)』だ」

 

 

鹿沼は説明しながら海原にコピー用紙を渡す、そこには空母艦娘の索敵機が空撮した今回の作戦の撃破目標である深海棲艦…泊地棲姫の写真がプリントされ、その下には現時点で判明している攻撃方法や能力などが書かれている。

 

 

泊地棲姫の姿は一言で言えば“巨大ロボに乗った姫級”といった所だろうか、巨大化した駆逐戦車のような四足歩行の艤装に姫級の上半身が生えている、いや、泊地棲姫の手元には操作デバイスのようなモノが見えるので、生えているというよりはコックピットのような場所に乗り込んでいると言った方が正しいかもしれない。

 

 

そして武装は艤装の左右にそれぞれ搭載されている大口径主砲3基×2、後方に搭載されている対空機銃と艦載機の発艦装置、前方に搭載されている中口径主砲2基、そして前方には駆逐戦車同様に巨大な口が付いており、主砲の位置も併せて顔のように見える、しかも口の中には火炎放射器が内蔵されており、うかつに接近すれば灼熱の炎を浴びる事になる。

 

 

「…何て言うか、すげぇな、こんなにフル装備で仕掛けてくるなんて…」

 

 

「それだけならまだいいさ、泊地棲姫本体も小口径の主砲1基と小型の盾を持っている、攻守共に隙がないぞ」

 

 

鹿沼のさらなる追い討ちに海原は頭を抱えたくなる、今までの空母棲姫や戦艦棲姫、飛行場姫などの姫級も十分海軍の艦娘たちを苦しめてきたが、この泊地棲姫の脅威はそれらに匹敵、あるいは上回るものかもしれない、そう考えただけでこちらに勝機があるかどうかが怪しくなってくる。

 

 

「…こいつのヤバさは分かったが、そもそもこいつらはどっから湧いてきたんだ?渋谷の地下には秋葉の時の進入経路になった地下水路は通ってないはずだぞ?」

 

 

一通りの説明を聞いた海原が一番疑問に思っていることを聞く、海原の言うとおり渋谷には地下水路は通っていない、一応掠ってはいるのだが、それを使っても直接渋谷へは来れないはずだ。

 

 

「…地下鉄のトンネルを使ってここまで来たんだ、水路の壁を掘って…な、おかげで今の渋谷駅は深海棲艦の巣窟だ」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

鹿沼の言葉に海原は目を剥いた、地下鉄のトンネルを使ったというのはまだ分かる、しかし深海棲艦が壁を掘ってそこまでたどり着くというのはにわかに信じがたい事であった、それが本当なら深海棲艦たちは初めから地下の構造を理解しているということになる。

 

 

(深海棲艦…本当に何者なんだあいつらは…?)

 

 

深海棲艦に対する悩みは尽きないが、まずは駅を深海棲艦に占拠されているこの現状をなんとかしなくてはならない。

 

 

「で、俺たちは何をすればいいんだ?」

 

 

「メンバーを戦闘班と支援班のふたつに分けてくれ、戦闘班はこのまま泊地中核へ出撃、支援班はシェルターの救援活動を手伝ってもらう、中は避難中に怪我をした民間人が大勢いるんだ、正直集まってもらった救急隊や医師だけでは足りない」

 

 

「了解、チーム分けが出来たらそっちに向かわせる」

 

 

海原がそう言うと鹿沼は拠点の本部にいる南雲元帥の所へ小走りで向かっていく。

 

 

「さてと、それじゃさっさとチーム決めするか」

 

 

 

「正直鹿沼や元帥の指揮下に入るのはしゃくですが…」

 

 

「民間人を守るのが私たちの役目だから、ここは従うしかないね」

 

 

一部のDSFのメンバーは不満げであったが、班分けは滞りなくスムーズに進んだ、話し合いの結果、戦闘班は吹雪、暁、三日月、篝、大鳳、曙、蛍、支援班はハチ、マックス、大鯨、明石、雪風となった。

 

 

「よし、それじゃあ各班行動開始!」

 

 

「「了解!」」

 

 

海原が号令を出すと、戦闘班、支援班に分かれたDSFの艦娘たちがそれぞれの持ち場へと向かっていく。

 

 

「…さてと、俺も行くとするか」

 

 

艦娘たちの姿を見送ると、海原も拠点へと足を運んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘班の吹雪たちは敵泊地の中核となっている新宿駅南口へと向かったが、そこはすでに戦場と化していた、アスファルトはあちこちが砲撃の衝撃でクレーターを作っており、駅の内外や周辺の建物は瓦礫の山になっている、駅の入り口付近では大和や武蔵などの横須賀鎮守府を中心とした面々がすでに駆逐戦車と戦闘を行ってた。

 

 

「大和さん!武蔵さん!」

 

 

「おぉ!お前たちか、助かった!」

 

 

武蔵が苦しそうな顔をして吹雪たちの到着に安堵する、どうやら相当苦戦しているようだ。

 

 

「あなたたちも来てくれたんですね、助かりました、()()()()()()では私たち戦艦は力を出し切れないので…」

 

 

大和も駆逐戦車を忌々しげに睨みながら言う、戦艦の大口径主砲は威力は高いが、こういった陸上での砲撃戦では真価を発揮できない、こういった市街地などでの高威力の砲撃は瓦礫や砂塵などをより多く生むからだ。

 

 

「おや、ちょっと見回りに出ていた間にまた新手が来ていたのか、数で押したところで私に勝てるわけがなかろうに」

 

 

すると、駅の中から瓦礫を掻き分けるようにして泊地棲姫が現れた、増援の吹雪たちを目にしても泊地棲姫は恐れる様子もなく、悠然と構えている。

 

 

「…あなたが部隊の親玉ね?」

 

 

「いかにも、我が名はユリアナ、この移動要塞ユミルの乗り手にして此度の作戦部隊の将を務める、そしてこれからお前たちを葬り去る者だ」

 

 

泊地棲姫(ユリアナ)は吹雪の質問に丁寧に答えると、自ら名前を名乗って腰を折る、その余裕さは自分が負けるなどと毛頭思っていない故だろうか。

 

 

『吹雪、あいつ見た目の物腰は柔らかいけど、かなりの強敵だよ気を付けて』

 

 

同じ深海棲艦として通ずる何かをユリアナから感じたのか、リーザがいつになく真剣に吹雪に警告する。

 

 

「分かってる、負けるわけにはいかないよ」

 

 

吹雪はナギナタを取り出すと、それをユリアナに突きつけ、こう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならこちらも宣言します、私は…いえ、私たちはこれからあなたを打ち倒し、渋谷を奪還します、葬り去られるのはあなたの方です」

 

 

その吹雪の言葉に大和たちは“よく言った”と言わんばかりに口の端を吊り上げると、ユリアナに主砲を向ける。

 

 

一方ユリアナは吹雪の宣言を聞いて少し驚いたような顔をしたが、すぐに挑戦的な笑顔を作り…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白い、ではその力…私に見せてみろ!」

 

 

周囲の駆逐戦車に戦闘開始の指示を出し、ユミルの全主砲を吹雪たちに向けた。

 

 

 

 

 




次回「命の取捨」

全てを救い上げるなんて出来はしない。

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