艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

22 / 231
今回は敵潜水艦との戦闘回ですが、潜水艦に関しては独自設定で書いている所があるので実際のゲームの仕様とは異なる部分があると思います、あらかじめご了承ください。


第22話「三日月の場合7」

「いやー、みなさんスゴかったです!さすがは大型艦、攻撃力も規格外ですね!」

 

 

「いや、瑞鶴たちよりあんたたちの方がよっぽど規格外なんだけど、駆逐艦だけで重巡と軽巡と駆逐倒すとかどんだけよ…」

 

 

「そもそも白兵戦なんてイレギュラーな戦法でそんな戦果上げるなんて快挙だぞ」

 

 

戦闘終了後、戦艦棲艦2体をすんなり倒してしまったローマたちに賞賛を送る吹雪だが、瑞鶴と摩耶にあっさり一蹴されてしまった。

 

 

その後も航海中に駆逐棲艦や軽巡棲艦などの小物が襲って来たが、全て吹雪と暁が白兵戦で倒してしまったので大型艦組はほとんど出番がなかった。

 

 

 

 

色丹島はオホーツク海に位置する千島列島を構成する島の一つだ。

 

 

かつては日本とロシアで領有権の主張を繰り返していたそうだが、深海棲艦の大空襲に逢ってからは無人島になっており事実上の無法地帯と化している。

 

 

そんな色丹島でかつて存在していた集落の跡地にひとりの少女が立っていた、年は十代半ばといったところか、艶やかな黒髪を腰の辺りまで伸ばしており、グレーのワンピースを着ている。

 

 

「失礼します」

 

 

すると、少女のもとへひとりの女性が近付いてくる、白雪のような長い白髪をサイドテールにしており、その肌も髪と同じくらいに白かった。

 

 

「どうしたの?ベアトリス」

 

 

暗殺兵級(アサシン)からの報告なのですが、どうやら艦娘の大部隊がこちらへ襲撃をかけるようです」

 

 

ベアトリスと呼ばれた白髪の女性が持っていた報告書の内容を少女に伝える。

 

 

「…艦娘どもが色丹島(このしま)に?」

 

 

ベアトリスからの報告を聞いた少女は眉根を寄せて怪訝な顔をする。

 

 

「はい、20体ほどの連合艦隊で攻め入るようです」

 

 

「そうなのね……分かったわ、迎撃部隊を編成するから他の子たちを召集して」

 

 

「了解しました」

 

 

ベアトリスは一礼すると集落跡地を後にする。

 

 

「襲撃…ね、()()()たちの力がどれだけのものか、見せてもらおうじゃない」

 

 

少女は不適な笑みを浮かべ、眼前に広がる水平線を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

一方その頃、第4艦隊は後少しでベースキャンプへ辿り着くという所で大ピンチに陥っていた。

 

 

「敵艦発見!数は2体!艦種…潜水棲艦!?」

 

 

そう、敵の潜水艦が現れたのだ。

 

 

「…摩耶、副砲は?」

 

 

「残念だが持ってねぇ」

 

 

摩耶は悔しそうに肩を竦める。

 

 

「あなた達は?何か対潜装備は…」

 

 

「何も無いです」

 

 

「暁も持ってないから主砲で戦うことになるわね」

 

 

3人の答えを聞いてすっかり判断に悩むローマ、水上艦相手なら主戦力として活躍できる戦艦だが、潜水艦が相手だとその力関係が逆転する。

 

 

早い話が戦艦や重巡洋艦は潜水艦に攻撃が出来ないのだ。

 

 

その理由は主にふたつある、ひとつは対潜装備は戦艦の艤装には規格が違うためそもそも載せることが出来ない。

 

 

 

もうひとつは“主砲の口径”だ、駆逐艦や軽巡洋艦は対潜装備を搭載していない場合は主砲を水中に打ち込んで対戦攻撃を行う、しかし戦艦のような大口径の主砲を水中に向かって撃ち込むと表面張力に負けてしまい水面で爆散してしまうのだ、艦娘が使う砲弾には炸薬が仕込まれており、それを爆発させやすくするために砲弾が脆く作られているのが原因だ。

 

 

その反面小口径の駆逐艦や軽巡洋艦の主砲の弾であれば水面に接する面積が少ないのである程度なら表面張力の影響を受けずに水中の潜水棲艦にもダメージを与えられる、しかし水中に向けて撃っているので弾速は格段に落ちるし、あまり深いところにいる敵には当てることが出来ない。

 

 

 

 

 

「さーて…どうしましょうかねぇ…」

 

 

 

つまるところ、第4艦隊はピンチなのだ。

 

 

 

「っ!!潜水棲艦、来ます!」

 

 

潜水棲艦が水中に潜ると、物凄いスピードでこちらへ向かってくる。

 

 

「このぉ!」

 

 

摩耶が主砲を撃つが、やはり水面に触れると同時に爆散してしまう、水面に接する面積が大きいため表面張力が大きく働くのだ。

 

 

「なら私が…!」

 

 

 

吹雪が深海棲器を主砲に持ち替えて潜水棲艦に向けて撃ちまくる、一応弾は水中に届いているがダメージは小破未満(カスダメ)だ。

 

 

「敵艦魚雷発射!回避行動をとれ!」

 

 

潜水棲艦が魚雷を撃ち出した、潜水艦の攻撃方法は魚雷しかないので比較的対策はしやすいのだが、水中で発射するのでタイミングが読みづらい。

 

 

ローマ、加賀、瑞鶴、吹雪はジャンプで魚雷をかわすことに成功したが、摩耶と暁がよけきれずにダメージを負った。

 

 

「くそっ…!あいつらやっかいだぜ…」

 

 

摩耶が悔しそうに潜水棲艦を睨み付ける、自分は攻撃出来ないだけあってなおさら悔しそうだ。

 

「…絶対にぶち殺す」

 

 

ヒットアンドアウェイで攻撃してくる潜水棲艦に相当イラついたのか、暁は感情も何も全て消し去った目で敵を見据え、手に持った主砲を撃つ。

 

 

弾は片方の潜水棲艦に命中するが、やはり決定打になるようなダメージは与えられていない。

 

 

「どっかその辺に爆雷とか落ちてないかなぁ…」

 

「いや落ちてるわけないでしょ…」

 

 

 

(…爆雷…か)

 

 

 

瑞鶴と加賀の呑気な会話を聞き、吹雪はあることを思いつく。

 

「ローマさん、艤装の砲弾はまだ残ってますか?」

 

 

「え?残ってるけど…」

 

 

「それ、一発出してもらってもいいですか?潜水棲艦に対抗する作戦を思い付きました」

 

 

吹雪はそう言うと考え付いた作戦を手短に伝える。

 

 

「…なるほど、分かったわ」

 

 

ローマは小さく頷くと、自身の艤装から装填済みの砲弾をひとつ取り出して吹雪に渡す。

 

 

「それっ!」

 

 

吹雪は主砲を撃って潜水棲艦をおびき寄せるためのアピール射撃を行う、案の定潜水棲艦はそれに反応して2体ともこちらに向かってくる。

 

 

(成否のカギはタイミング…!よく引き付けないと…!)

 

 

吹雪は猛スピードで近付いてくる潜水棲艦を見据え、投下のタイミングをはかる。

 

 

「……今だ!」

 

 

吹雪は持っている砲弾を水面に投下すると、素早く後ろに下がって魚雷と主砲を目一杯撃って砲弾を刺激する。

 

 

次の瞬間、戦艦の砲弾が水中で爆発し、凄まじい衝撃と水柱が上がる。

 

 

「うわっ!」

 

 

その衝撃は凄まじいもので、水上にいる吹雪も少しよろけてしまった。

 

 

水柱は数秒ほどで収まり、それ以降潜水棲艦が攻撃してくる様子もない。

 

 

「…電探(レーダー)に敵艦反応無し、潜水棲艦の撃沈を確認」

 

 

こうして、少しイレギュラーな方法ではあったが、潜水棲艦の撃退に成功した。




春イベ始まりましたね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。