艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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大変お久しぶりでございます、更新が延びに延びてすみません。

軌跡シリーズ全作プレイを決行したら思いのほかゲームにハマって投稿がすっかり疎かになってしまいました(閃の軌跡Ⅲを買ったはいいがストーリー全く分からなかった為)、現在は碧と閃Ⅰを同時プレイ中。

…黒白物語も鋭意執筆中です(汗

艦これのスケートイベントの告知を見ていよいよこのゲームの本質を疑い始める。


第211話「七海の場合4」

「…暁、もう一度確認するが、今の話は本当か?」

 

 

海原の再びの問い掛けに、暁は首を縦に振って肯定する、吹雪との会話をハチに聞かれた暁はそのまま提督室へと連行され、渋谷での出来事を洗いざらい吐く結果となった、そして当然と言えば当然だが、その話を聞いた全員(ただし三日月と篝を除く)が目を剥く事になる。

 

 

「まさか深海棲艦の正体が始原棲姫に作られた人工物だったとはな…」

 

 

「おまけにその始原棲姫を生み出したのが人間…それも榊原所長だなんて…」

 

 

「俄には信じがたい話よね…」

 

 

台場メンバーは未だ半信半疑といったように口を揃えて言い合う、暁たちの口から告げられた“世界の秘密”の大きさを考えれば当然ともいえるが。

 

 

「それで、吹雪は始原棲姫と所長との密会を取り付ける約束をするために返されるんだよな?」

 

 

「えぇ、明日には帰って来れるって言ってたわ」

 

 

「そうか…分かった、ならこっちも吹雪がいつ戻ってきても行動出来るように準備しておかないとな」

 

 

そう言うと海原はDeep Sea Fleetの艦娘たちにそれぞれ指示を出す、と言ってもやることと言えば榊原にスケジュールの確認をしたり密談場所の候補を絞るくらいで、本格的に行動を始めるのは吹雪が戻ってきてからになる。

 

 

「…司令官、その…司令官が吹雪さんの事を一番心配してたのに、黙っててごめんなさい…」

 

 

自分も榊原に電話をかけようとした時、暁がしおらしい様子(激レア)で謝ってきた。

 

 

「内容が内容だったから仕方ないさ、あんな秘密知っちまったら誰だって混乱するだろうし、それこそ余所に漏れでもしたら大変な事になりかねない、少なくともお前の判断は間違ってないと思ってるよ」

 

 

「…つまり正しい選択をしたとは思ってないって事よね、やっぱり本当は怒ってるんじゃない」

 

 

「うぐっ…つくづく痛いところを突いてくるなお前は…」

 

 

暁のジトーっとした目で見られた海原は顔をひきつらせる。

 

 

「確かに何とも思ってないと言えば嘘になるさ、でもお前たちが吹雪の事を黙ってたことは一切責めるつもりは無いから、そこだけは信じてくれ」

 

 

「…分かった、ありがとね」

 

 

暁はそう言って照れたように笑う(超激レア)。

 

 

「…そう言えば暁、お前吹雪とはPitを使って会話してたみたいだが、どうやったんだ?電源を入れればGPSで端末の位置が分かるハズなんだが…」

 

 

そう言って海原は依然吹雪の端末の場所が表示されないパソコンのディスプレイを見ながら聞く。

 

 

「あぁ、それにはちょっとしたカラクリがあるのよ」

 

 

そう言って暁はPitの裏のカバーとバッテリーパックを取り外し、バッテリーパックが入っていた端末本体の中から小さなチップを抜き取った。

 

 

「…それは?」

 

 

「GPSの位置情報が記録されてるチップよ、普段はこんな感じでSIMカードと同じスロットに入ってるんだけど、これを抜くとGPSに探知されずにPitを使えるようになるの」

 

 

「そ、そうなのか!?」

 

 

暁の解説に海原は驚いたように言う、てっきり本体内部に内蔵されていると思っていたのだが、こんな簡単に着脱できるモノだとは思ってもみなかった。

 

 

「…本当だ、暁のGPS情報が表示されなくなってる」

 

 

「まっ、一種の裏技ってやつよ、暁も吹雪さんから聞いて初めて知ったんだけど」

 

 

「つか、何で吹雪がそんな事知ってるんだ?」

 

 

「暇つぶしにPitのあちこちを弄ってたら偶然見つけたみたいよ、いつか使える手かもしれないから黙ってたんですって、他の艦娘に話したら広まって対策されるかもしれないし」

 

 

「…つくづく規格外だな、あいつは」

 

 

今更ながら吹雪という艦娘を規格外さを思い知る海原であった。

 

 

 

 

 

「七海様、吹雪を用意した部屋に通しました、今日はもう休むとの事です」

 

 

「お疲れさま、無理もないでしょう、あの子にとって今日は色々あり過ぎただろうし」

 

 

その夜、七海はベアトリスと自室で話をしていた、その主な内容は深海棲艦…七海が生み出した最初の深海棲艦(ヒュース)駆逐棲艦(ポーン)がその存在を確認されてから艦娘が誕生し、今までに至るまでの簡単な経緯だ、夕食の時に吹雪が噛み砕きながら説明してくれたのだが、七海たちにはどうしても引っかかる部分があった。

 

 

 

「最初に深海棲艦が現れてから艦娘が誕生して実戦配備されるまで半年、どう考えても早すぎますよね」

 

 

ベアトリスの指摘に七海も頷く、既存の兵器の新型ならばまだ分かるが、相手は一切の情報が無い完全な未知の敵性生物だ、その生物的性質などの詳細情報、それを分析した上での対抗手段の確立…既存の軍事兵器の対策を1から作り上げるのだとすれば、深海棲艦の対抗手段として艦娘を生み出すのは文字通り完全に0から始めたはずだ、いくら人間科学力が発達しているとはいえとても半年なんて短期間で出来るとは思えない。

 

 

「多分博士はかなり早い段階で深海棲艦の正体がヒュースで、それを生み出しているのが私だって事に気付いてたんだと思う、だからヒュースのアナザータイプである艦娘を短期間で生み出せたのよ」

 

 

「なる程、ならヒュースと艦娘の性質が似ていたことも説明が付きますね」

 

 

ベアトリスは納得したように頷いたが、同時に新たな疑問が浮かぶ。

 

 

「しかしそれだと尚更分かりません、なぜ榊原様は七海様がヒュースを生み出していると知りながら対抗策である艦娘を開発したのでしょうか?」

 

 

ベアトリスは腕を組んでうーん…と唸るが、七海はそれとは対称的にそんな思い悩むような素振りも無くただ榊原と七海が写っているあの写真を見ているだけだった。

 

 

「………………」

 

 

ずっと胸の奥に引っかかっていた吹雪の言葉、そして今もなお艦娘を作り続けている榊原の行動、それは何度考えても一つの結論へと収束する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もし、本当に博士がこの状況を望んでいなくて、私のしてきたことが間違っていたなら…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、どうすればいいのだろうか…




次回「密談」

終わりへのカウントダウンが始まる…

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