艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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ここ近年の気象状況を見て、春と秋が段々無くなっているような気がします、夏は残暑をいつまでも引きずっていると思いきや急に寒くなるし、冬は暖かくなったと思ったら一気に暑くなるし、日本から四季が無くなるのもそう遠い未来の話じゃないような感じがします。

艦これのスケートショーがついに開催されたようですが、中々凄いことになったみたいですね(分かりづらい


第213話「七海の場合6」

造船所でのやり取りから三日後の深夜、返事を聞きに来たベアトリスに榊原が密会に応じた事を伝えた、それを聞いたベアトリスは自分の事のように喜んで七海の拠点へ戻っていき、更にその日の昼頃に吹雪のPitに連絡が来た。

 

 

「七海から指定された日時は12月24日の午後5時、場所は台場鎮守府海岸だそうです」

 

 

その足で海原と吹雪は造船所に報告に行き、榊原に日時と場所を伝える。

 

 

「24日か、聖夜祭前夜(クリスマスイブ)を選ぶとは七海も凝った事考えるもんだな」

 

 

「ははは、たぶん七海はそんな事知らないだろうから偶然だと思うけどね、季節のイベントなんて強制記憶(インプット)してなかったし」

 

 

そう言って榊原は潮風に24日は何も予定を入れないように伝えると、自身も手帳のスケジュールに(マーク)を付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

南雲は盗聴用のイヤホンを耳から外すと、館内放送を使ってある人物を呼び出す。

 

 

「お呼びでしょうか、南雲元帥」

 

 

それから1分せずに元帥執務室の扉がノックされ、南雲が呼び出した人物…鹿沼が入ってくる。

 

 

「鹿沼、緊急の極秘作戦を決行する、日時は24日の17時、場所は台場鎮守府」

 

 

南雲の口から語られた日時に鹿沼は驚いたような顔をする。

 

 

「…それはまた随分と変わった内容ですね、どんな作戦なのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦の親玉…始原棲姫の殲滅作戦だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…というわけだから、博士との密会は今説明したとおりに事を進めてね」

 

 

「畏まりました、七海様」

 

 

七海の研究所でも同様にスケジューリングと準備が進められており、七海とベアトリスで最終調整が行われていた。

 

 

「…それと、先ほどの件ですが、やはりご決断を変えるつもりは…?」

 

 

ベアトリスは先程の密会での説明会で七海が話した“決意”の事をもう一度問う、その表情はどこか悲しそうな、憂いを帯びているようであった。

 

 

「…あなたたちには申し訳無いけど、もう決めたことだから、それが私自身の“けじめ”でもあるし、博士に対する“償い”でもあるから」

 

 

そう言って七海は覚悟の色を浮かべた目でベアトリスを見つめる、主にそこまで言われてしまってはこちらも引き止める事など出来はしない、本当にずるいお人だとベアトリスは思う。

 

 

「わかりました、七海様の決意がそこまで堅いのでしたら、最早私からは何も言いません」

 

 

「ありがとう、そして…ごめんなさい、私のワガママに付き合わせる事になってしまって…」

 

 

七海が感謝の言葉を伝えると共に謝罪の言葉を伝えると、ベアトリスはそのまま七海に跪き…

 

 

「七海様が謝る必要などありません、我々は七海様に命を貰った存在、その最期の時まで…我々一同お供させていただきます」

 

 

全幅の信頼と敬愛を込めて七海に言った。

 

 

そんなベアトリスに七海はもう一度ありがとう、とお礼を言うと、榊原の写真を手に取る。

 

 

(博士、いよいよあなたに会うことが出来ます、改めて再会できた暁には、これまでの出来事をお話ししたいです)

 

 

(でももし、私のしてきたことが間違っていたのなら、その時はご安心ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幕は、自分で下ろします。

 

 

 

 

 

それからは何事もなく静かに日々が過ぎていき、ついに約束の日、12月24日(クリスマスイブ)がやってきた。

 

 

「やあ海原くん、待たせて悪いね」

 

 

七海の待ち合わせ時刻30分前の午後4時30分、榊原が潮風を連れて台場にやってきた、すでに太陽は水平線に半分以上身を隠しており、空は見事な茜色に染まっていた。

 

 

「いえいえ、それにここは俺たちの鎮守府なので待つも何も無いですから、気にしないで下さい」

 

 

「ははっ、それもそうだったね」

 

 

榊原は冗談めいた笑いを浮かべるが、それでもどこか落ち着きのない様子であった。

 

 

「やっぱり緊張しますか?」

 

 

「そりゃあね、会うのはほぼ10年ぶりだし、おまけにその10年で何もかもが変わってしまった、だから余計に緊張するのかな」

 

 

榊原はそう言って肩を竦める。

 

 

「まぁ、何にせよ後は七海たちが来るまで待つしか無いわけですし、適当にその辺に座りながら話でもしましょうよ」

 

 

そう言って吹雪が浜辺に敷いてあるレジャーシートを指して言う、ご丁寧にアウトドア用のミニテーブルと簡単なお菓子や飲み物まで用意されていた。

 

 

「…やれやれ、君たちにはすっかりお見通しという訳だね」

 

 

それが自分の気持ちを解そうと用意してくれたモノだという事にすぐに気付いた榊原は、降参だと言わんばかりに両手を上げ、大人しくレジャーシートに腰を下ろすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…司令官、来たみたいです」

 

 

 

それから30分後の午後5時、沈みかけていた太陽も水平線から僅かに姿を覗かせる程になっており、いわゆる暁闇(ぎょうあん)と呼ばれる空模様になった頃、“彼女たち”はやってきた。

 

 

僅かに見える日の光に照らされたのはいくつもの人型の影、それがこちらに近付いてくる、

 

 

「お待たせ吹雪」

 

 

やってきたのはベアトリス含む深海棲艦の姫級…その確認されている個体全てだった。

 

 

「随分と大所帯で来たんだね、護衛ならベアトリスだけで十分だと思ったけど」

 

 

「まぁ色々あってね、それで…あなたが榊原博士ですね」

 

 

「あぁ、この度はこうして会う機会を設けてくれて感謝しているよ」

 

 

「こちらこそ、我が主の望みを受け入れてくれた事に感謝します、それでは…後はお任せします」

 

 

 

そう言ってベアトリス含む姫級全員がその場から立ち退く、そしてそこに姿を現したのは…

 

 

 

「…七海」

 

 

あの日から変わらない姿でそこに立つ黒髪の少女…七海の姿だった。

 

 

 

「…博士、ようやく…会えましたね」

 

 

榊原の姿を目にした七海は涙を浮かべながら水面を滑るように移動して榊原に近付く、あの日から一日たりとも忘れたことは無かった、どれだけ会いたいと思ったことか、そんな彼が今、こうして目の前にいる、それだけで七海は涙が止まらなかった。

 

 

「ああ、会いたかったよ、七海」

 

 

それは榊原とて同じだった、あの日から早10年、自分と彼女の関係は大きく変わってしまった、でも互いが互いを想い合って再会を望んでいたこと、今日こうして会えたことを互いに喜び合えたこと、長い年月が経っても変わらないことが確かにあった、それを知ることが出来ただけでも嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その再会は唐突に終わりを告げる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃てえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」

 

 

刹那、凄まじい衝撃と熱が海原たちを襲い、浜辺にいた全員が後方へ吹き飛ばされる。

 

 

一体何が、と榊原は衝撃と熱の発生源の方を向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぇ」

 

 

 

そこには、今まで七海たちがいた場所が火の海と化している光景が広がっていた。




次回「問いかけ」

怪物は、ただシンプルに問い掛ける。



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