艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
ポケットモンスターシリーズの新作「let's goイーブイ」が地味に楽しみです、こういう愛でる系には少なからず惹かれます。
スマブラSPで何のキャラ使うか悩み所。
「…………………」
七海は榊原の目をじっと見つめながら答えを待っていた、本当のことを言えば先の問い掛けには“NO”と答えて欲しかったが、不思議と七海の中ではその可能性は低いと思っていた。
時間にしてみれば1分位しか経っていなかったのだろうが、それが彼女にとっては1時間にも感じた、短くも長い沈黙の後、榊原はついに口を開いた。
「あぁそうだ、七海、お前のしたことは…間違っていた」
「………………………」
その言葉を七海が本当の意味で理解したのは、それから数十秒が経ってからだった、それは七海が最も聞きたくなかった言葉であり、榊原から最も言われたくなかった言葉である。
「確かに俺が七海を作ったのは戦争で戦う兵士として使うためだったし、一騎当千を目的として調教したのも俺だ、でもそれは任務として敵地に出向いたときに限った事でこの世界全ての人間を敵に回すことは望んでない、ましてや守るべき味方である日本人を敵に回すなんて、俺が一番望んでいないことだ」
榊原の口からは変わらず彼の“本音”が綴られていく、本来なら耳を塞ぎたくなるような内容であるはずなのに、心のどこかで納得している自分も確かにいた、やはり自分は榊原の本心を、彼の思いを…
「博士…もう…」
もう十分だ、そう言おうとしたが、それよりも早く榊原が口を開いた。
「でも、悪いのはお前じゃない」
「…えっ?」
「確かにお前のしたことは俺が望んだ結果にはならなかった、でも悪いのはお前じゃない、全部俺が悪いんだ」
榊原はそう言うと、頭の中で言葉を選ぶように話し始めた。
「ちゃんとした敵味方の区別も、常識や道徳も、殺しに対する正しい善悪感情も何も教えずに、俺たちの都合のいい事だけをお前に吹き込んだ、その結果お前は俺のために間違った道を突き進んでしまった」
「本当なら気の一つでも聞かせて“NO”と言ってやるべきなんだろうけど、お前の真剣さに応えて、俺も包み隠さず全てをお前に打ち明ける、全ては生みの親である俺の責任だ、本当にすまない」
そう言って榊原は七海に頭を下げた、今までの悔やんでも悔やみきれない想いや七海への罪悪感、その全てを伝える。
「…博士、どうかお顔を上げてください」
七海に言われて榊原は七海の顔を見る、その表情はとても満足げで、晴れやかであった、まるで今までの付き物や未練が全て無くなったかのように…
「全てを話していただきありがとうございます、おかげで決心がつきました」
「へ…?七海…?」
一体何を、と問いかけようとしたが、七海は榊原の手に何かを握らせると、踵を返してそのままベアトリス達と沖へと駆けていった。
「七海…!?」
予想外の行動に榊原や吹雪たちは思わず追いかけようとしたが…
「わわっ…!?」
「これは…!」
突如海中から大量の駆逐棲艦が現れ、その行く手を塞いだ。
そして七海たちはある程度の距離を進むと、ベアトリス達と一緒に横一列に並ぶ。
「…ごめんなさい、こんな事につき合わせてしまって」
「何を言っているんですか、七海様がお決めになったことです、なら我々はそれに従うまでですよ」
ベアトリス達のその言葉に七海は“ありがとう”と小さくつぶやくと、着ていた上着を全員一斉に脱ぎ捨てる。
「っ…!?七海、それは…!!」
七海たちの身体には大量のガスボンベや火薬、各種可燃物や爆発物が身に付けられていた、その姿を見た全員がこれから七海たちが何をしようとしているかを嫌でも察してしまった。
「七海!止めろ!頼む!止めてくれぇ!」
榊原は海に飛び込んで七海のもとへ駆けていこうとしたが、駆逐棲艦に主砲を向けられ、その足を止められてしまった。
「私はこれまで博士のためを思って活動してきました、ですがそれが博士の望んだ結果とならなかったのなら、最早や私に生きる意味はありません」
「何を言っているんだ!そんな事はない!」
「いいえ!むしろ私の生み出したヒュースで博士が守ろうとした多くの人が死に、犠牲になったことは事実です!その責任は取らなければならないんです!」
七海はそう言うと懐から手のひらサイズの端末を取り出す、おそらく起爆装置に相当するものだろう。
「七海!止めて!」
吹雪が行く手を阻む駆逐棲艦を深海棲器で吹き飛ばしながら七海の方へと向かっていく、こんな所で榊原と七海が分かれてしまうのは絶対にだめだ、榊原はまだ七海に本心の“続き”を聞かせられていない、せめてそれまでは…!。
「…ありがとう吹雪、貴方のおかげで博士に会って、話をすることが出来た、感謝してもし足りないくらいよ」
七海が儚げな笑顔でそう言うと、起爆装置の端末を掲げ、こう宣言した。
「聞け!艦娘に人間よ!我々ヒューマノイド・ソルジャーは、これまでの責任を取り、この世界から退場する!」
「この戦い…貴方達の勝ちだ!」
そう高らかに宣言した後、七海は端末のボタンを押した。
刹那、凄まじい爆発が起き、七海達が経っていた場所が火の海になる。
「七海いいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」
◇
(あぁ、これでいい、これで博士に向けて負債を返せる)
暗い水底に沈み行く中、七海はそんな事をぼんやりと考えていた、自分が沈む事に対しては恐怖は感じないし、この世界に対する未練もない、自分の身勝手に巻き込んでしまったベアトリス達には申し訳ないと思っているが、それ以前にこんな計画に乗ってくれたことに感謝している。
(あ…でも最後に博士や吹雪たちと一緒に話したり遊んだりしたかったなぁ…)
(何の未練も無いと思ったけど…)
(ちょっとだけ、残っちゃったなぁ…)
2050年12月24日 午後5時45分。
10年近く続いた人類と艦娘、それに対する深海棲艦との戦争は、敵の“自決”という形で幕を閉じた。
次回「
今回は空白を多用してみました、読みづらかったらすみません。
エピローグとしてますがまだ少し続きます。