艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

230 / 231
ファイアーエムブレム風花雪月をプレイし始めたのですが、難易度がカジュアル(失った仲間は次回戦闘で復活)までしかないので、フェニックス(戦闘不能になっても次ターンで復活)でゾンビ戦法やってた自分は詰むかもしれません。そういえばあのゲームって使えるキャラ全滅したらどうなるのでしょうね。


ex.02「神通隊の場合2」

 

 

「こんにちは、大鳳ただいま参りました」

 

 

「いらっしゃい、待ってたよ」

 

 

大鳳が開発課の第一工廠へ向かうと、七海型護衛艦2番艦のベアトリス…もとい暁海が出迎えてくれた。新しく開発した艦載機装備の実戦テスターを頼みたいという暁海からの依頼を受け、この日大鳳は造船所を訪れていた。

 

 

「悪いね、急に呼び出して」

 

 

「気にしないでください、新装備のテスターをさせてもらえるなんて機会、滅多にありませんから」

 

 

急な依頼にも関わらず来てくれた大鳳に申し訳なさそうに言う暁海だが、大鳳はそれを笑って否定した。暁海たちが七海型護衛艦として艦隊に加わって以降、彼女たちは造船所の開発課と呼ばれている部署で働いている、ここでは各鎮守府から送られてきた開発要請のデータをもとに、艦娘の装備品を作っている。

 

 

かつて深海棲艦時代にヒュースの装備や艤装を独自に開発していた技術力を買われての配属だったが、現在では開発課の主力チームの一員として活躍している。

 

 

 

 

 

「それにしても、どうして私をテスターに選んだんですか?暁海さんは深海棲艦時代に艦載機系装備を扱っていましたし、こう言ってはナンですが私なんかを頼らなくてもご自身でどうにかなったのでは?」

 

 

大鳳が不思議そうに問いかけると、暁海は“あー…”と言って頭をかく、どうやら彼女がそういった疑問を持つのは予想していたらしい。それもそうだ、実際暁海はかつて空母棲姫(ベアトリス)として牡丹雪を自在に操っていたため、大鳳の指摘通り艦載機系の装備の扱いには十二分に心得がある、それに加えて今の造船所にはかつて影夜叉を操っていた飛行場姫(エリザベート)…夜海がいるのだ。

 

 

そんな艦載機の扱いに長けた元姫級がいるにも関わらず、未だに“旧式”の震電改を使っている自分にお呼びが掛かったことを大鳳が疑問に思うのも当然だろう。

 

 

「正直言えば私もそれで済ませたかったんだけど、私や夜海の艤装は七海様が主だって開発していたから、榊原所長が主導で開発していた艦娘用の艤装とは作りや扱い方に少なくない違いがあるのよ、元のベースは同じだけど、それぞれお互いにブラッシュアップしていたしね。だから純粋な艦娘の艤装でのデータも欲しかったのよ、それに大鳳は空母艦娘の中で一番の古株で艦載機の扱いも一番上手いってみんな言ってるわよ」

 

 

「そんな大袈裟な…私なんて他の空母艦娘と変わりませんよ、特別な努力をしたわけでもありませんし、ただ少し昔から居座っているだけです。深海棲艦でいたときのブランクを引けば尚更」

 

 

大鳳はそう言って謙遜するが、その経験年数の差が艦娘としてのあらゆるノウハウに決定的な差を生み出しているのも事実である。現に深海棲艦時代のブランクがあるとはいえ、大鳳の能力は今現在でも他の空母艦娘と比べて頭一つ抜けている強さを持つ。

 

 

「それに私が強くなれたのは当時私を指揮していた西村提督の手腕のお陰でもありますし、やっぱりあの人は凄かったです…」

 

 

今はもう居ない故人を思いながら、大鳳は儚げな笑顔で言う。

 

 

「何だか父を思う娘みたいね」

 

 

その様子を見た暁海がそんな事を呟いた。

 

 

 

「…そう…ですね、確かにあの人は上司というよりお父さんといった雰囲気の人でした、娘さんを亡くしていると奥様から聞いたことがありましたが、ひょっとしたらどこかで面影を感じていたのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そりゃそうよ、だって本当に娘なんだもの、前世の方でだけどね)

 

 

当時を懐かしむ大鳳を見て、暁海は心の中でそっと呟いた。大鳳は知る由も無いことだが、彼女の前世での名前は“西村香織”、つまり西村恭吾と織恵の実の娘だ。

 

 

(あなたは何も覚えていないと思うけど、あなたが提督と慕っていた人は間違いなくあなたの父親で、あなたが奥様と呼んでいた人も、間違いなくあなたの母親なのよ)

 

 

お互いに気付かないまま親子で鎮守府を運営していたという事実を、暁海はそっと胸にしまい込む。

 

 

 

 

 

「それでこれが…」

 

 

「えぇ、これからあなたに試験運用してもらう新型艦載機…『白魔』よ」

 

 

工作台に置かれた艦載機…白魔を大鳳はまじまじと見る。見た目は暁海が使っている牡丹雪に似ているが、形が球体状から流線形になっている。

 

 

「牡丹雪の基本性能に艦娘の艦載機の内部機構やらを色々組み合わせてブラッシュアップしたの、理論上はあなたの使っている震電改と同等かそれ以上の性能を出せるわ、それでいてコストは烈風改とほぼ同じ!」

 

 

暁海は自慢げに白魔の特徴を語っているが、大鳳の一番知りたいことはそこではなかった。

 

 

「では、この白魔の短所や弱点は何ですか?」

 

 

「えっ、弱点…?いきなりそこ聞く?普通は長所とかメリットとか聞きそうなもんだけど…」

 

 

「当然です、装備には必ず得手不得手があります、欠点が無い物なんて存在しません、装備を扱う上で何より大切なのはその装備の欠点を知ることです、この装備は何が不得手なのか、その不得手を補うためには自分がどんな技術を研けばいいのか、どんな装備と組み合わせればより長所を伸ばし短所を補えるか、もちろん長所を把握するのも大切ですが、それ以上に短所を把握してそれに合った戦術を立てる事も大切なんですよ」

 

 

大鳳はそう言って装備運用の何たるかの持論を暁海に語って聞かせる、それを聞いた暁海は大鳳が最強空母だと言われる理由が分かったような気がして、“納得”といった表情をしている。

 

 

「…なるほどね、そりゃ最強空母だって言われるわけだわ、それでこの白魔の欠点だけど、機体の運動性能に独特の癖があることと、従来の艦載機に比べて対空砲の攻撃に弱いことかな」

 

 

「ふむふむ…分かりました、装甲空母大鳳、改めて白魔の試験運用の依頼をお受けいたします」

 

 

「ありがとう、それじゃあよろしくね」

 

 

大鳳は白魔の機体を受け取ると、軽い挨拶をして開発課を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それとほぼ同時刻、台場鎮守府海域沖合では3体の深海棲艦がゆっくりと航行していた。体躯から推測するに駆逐艦のようである、その航路はふらふらと蛇行気味で、明確な意思を持って移動しているようではなかったが、時折こんな事を呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神通さん…今…そっちに……行きます』

 

 

 




次回「神通教官」

ちなみに白魔とは、災害を引き起こすほどの大雪を悪魔に例えた言葉です、空母棲姫が大量に繰り出す艦載機のひとつひとつを雪の結晶とするのなら…というイメージでつけました。

それと作中での開発は指定量の資源を支払えば装備品と交換してもらえる(確定入手)という設定です、烈風改ならボーキサイト10万、今ではもう交換できませんが、震電改なら29万5000がレートです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。