艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
「さてと、今日も今日とてレッツ残党狩りと洒落込みますか、今日は何体狩れるやら」
「そうは言っても掃討作戦が順調に進んでるおかげで敵も減る一方だから、収穫を得るのはだんだん難しくなりそうね」
「おまけに数が減れば減るほど発見が難しくなる、全くやっかいなことだ」
大鳳が造船所で白魔の説明を受けていたのと同時刻、吹雪、夕月、蛍、曙は海域の哨戒へと赴いていた。こうして暇を見つけては残党を殲滅するために出撃を繰り返しているが、未だ終わりが見えてくる様子はない。
「…あ、電探に反応あり、数は4体、そろそろ会敵するよ」
吹雪の合図で全員が会話を止めて得物を構える、そしてその合図から程なくして敵艦隊が姿を現した、数は駆逐棲艦が3体とそれ程脅威ではない編成だったのだが…
「…えっ?」
「嘘…!?」
その3体全員が“面影”持ちという今までにない状況だった。
◇
「あの、聞こえますか…?」
吹雪は早速駆逐棲艦の“面影”と接触を図るが、これといった反応は返ってこなかった。“面影”の方も虚ろな目をしながらぶつぶつと何かを呟くばかりで、吹雪が話しかけ続けているのがまるで聞こえていないようだ。
「まずは台場鎮守府まで連れてこれそうか試してみましょ、それでダメなら吹雪が似顔絵を描いて提督に調べてもらえばいいわ」
そう言って曙が牽引用のワイヤーをそれぞれの駆逐棲艦に装着する、“面影”との意志疎通が困難なケースは特段珍しいものでは無かったため、こう言った場合の対応もこなれたものだ。
「さてと、あとは素直に従ってくれればいいんだけど…」
駆逐棲艦に繋げたワイヤーを自分の艤装に接続した曙はゆっくりと駆逐棲艦たちを引っ張る、駆逐棲艦たちは抵抗するような動きも見せず、素直に曙に引っ張られていく。
「これなら台場鎮守府まで何とか連れて行けそうね。ほら!見てないであんたたちも手伝って!結構重いんだから」
そう言って曙はワイヤーの残りを吹雪たちに放ると、夕月がそれを受け取って艤装に接続する、吹雪と蛍は敵艦隊と遭遇したときの事を考え周囲の警戒に専念していた。
台場鎮守府までの帰り道、駆逐棲艦の“面影”たちは変わらずぶつぶつと何かをうわごとのように終始呟いていた、最初は何と言っているか分からなかったが、耳が慣れたのかだんだんとその内容が分かるようになってきた。
『教官…神通教官…待っててください…今…そちらに向かいます…』
(神通“教官”…か)
◇
帰投後、吹雪は連れ帰った駆逐棲艦たちの似顔絵を書いた後、海原に
「…出た、この艦娘たちだな」
海原はパソコンの画面を吹雪たちに見せる。
○艦娘リスト(轟沈艦娘)
・名前:朧
・艦種:駆逐艦
・クラス:綾波型7番艦
・
・所属:大湊鎮守府
・轟沈:2050年4月20日
・名前:不知火
・艦種:駆逐艦
・クラス:陽炎型2番艦
・
・所属:大湊鎮守府
・轟沈:2050年4月20日
・名前:若葉
・艦種:駆逐艦
・クラス:初春型3番艦
・
・所属:大湊鎮守府
・轟沈:2050年4月20日
「…見たところ随分
「うん、その神通って艦娘がこの3体の教育係だったんだろうね」
「大湊鎮守府って事は瑞鶴さんのいる所よね、何か聞き出せないかしら」
「うーん、事情を話せば何とかなるかもしれないけど、轟沈に関わる話は何かとデリケートな話題になるからね、話すにしても少し慎重にアプローチした方がいいかも」
「てか提督に直接聞いてもらえばいいじゃない、もう深海棲艦や“面影”の正体は海軍全体に知られてるんでしょ?別に大手を振って行動したって問題無いと思うけど」
「…前々から思ってたけど、みんなって何気にそれぞれの鎮守府に知り合い多いよね、
吹雪たちの会話を端から眺めていた蛍が率直な感想を言う。それを聞いた海原は“今までの経験の賜物だな”とどこか懐かしむように言うのだった。
◇
『なるほど、それでうちに連絡をしてきたってことだね』
その後、海原は大湊鎮守府の荻波に電話をかけ、朧たちの件と神通についての事情を説明した。
『確かに神通はうちの鎮守府では新規着任した艦娘…特に駆逐艦の教育係を任せていたよ、色々あって朧たちが轟沈してしまったんだけど、理由の子細は本人から直接説明させるよ、
「了解、ならこっちも準備して待ってる」
そう言って海原は電話を切ると、Deep Sea Fleetを招集して今後の対応について話を進めるのだった。
次回「鬼教官神通」
アメとムチ。どちらも使い方を誤れば待つのは悲劇のみ…