艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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いつから敵艦が6体以上の艦隊を組めないと錯覚していた?

というわけでベアトリスと連合艦隊の会敵(エンカウント)回。


第24話「三日月の場合9」

翌日早朝、知床半島の埠頭に特別連合艦隊が集結し、来る決戦の時を待っていた。

 

 

「それではこれより、色丹島敵集積地強襲作戦を開始する」

 

 

長嶋の合図により作戦開始がアナウンスされる、ここから先は轟沈も覚悟しなければいけないような死闘が待ち受けているだろう、ここにいるどの艦娘もそれを覚悟しているのか引き締まった顔をしている。

 

 

「はぁ…結局いい作戦は思いつかず…」

 

 

「こんな凸凹チームワークで敵に勝てるのかしら…」

 

 

その中で第4艦隊の面々はすでに轟沈しそうな表情を浮かべていた、結局あの後色々なことを話し合ったが、第3艦隊と第4艦隊ではウマが合わなすぎてまともに話し合いが進まず何も作戦が決まらなかった。

 

 

「こうなったら出たとこ勝負で行くしかないっしょ!」

 

 

「そんなので勝てれば苦労しないわよ…」

 

 

瑞鶴のすこぶるポジティブな発想に加賀が釘を刺す、しかしこうでもしなければ正気を保っていられないのも事実だった、無計画(ノープラン)の出撃というのはそれほど危険なことなのだ。

 

 

「それでは、全艦隊出撃!」

 

 

長嶋の号令とともに第1艦隊と第2艦隊の第1連合艦隊と、第3艦隊と第4艦隊の第2連合艦隊が決戦の舞台へと繰り出す。

 

 

 

 

「はぁ…本当にどうなっちゃうんだろ」

 

 

「誰かが轟沈する結果にならなきゃいいけど…」

 

 

色丹島へ向かう道中、吹雪と暁はこれからのことで不安をもらす。

 

 

「大丈夫よ!幸運の空母と言われてる瑞鶴がいるんだから!イザとなったら守ってみせるわ!」

 

 

「台場組に関しては守る必要があるかどうか微妙な所だけどな…」

 

 

摩耶が苦笑しながら言う、これは“弱すぎて守る価値すらない”という意味ではなく、“強すぎるから守らなくても戦えるんじゃね?”という意味である。

 

 

「何でも良いけど、私たちの邪魔だけはしないでよね」

 

 

「弱っちい駆逐艦はなるべく隅っこに引っ込んでてね」

 

 

蒼龍と飛龍は相変わらず吹雪たちを見下すような発言で第4艦隊からのヘイトを集める。

 

 

「吹雪、暁、こうなったら開戦直後に白兵戦で敵旗艦(リーダー)をぶっ潰してやりなさい」

 

 

「いやいや、それはさすがに無茶ですよ」

 

 

ローマが苛つきながら第3艦隊に対抗心を燃やす、何だかんだ言ってローマや摩耶も一緒の戦場にいることで台場組の事を認め始めている、これはいい傾向だと瑞鶴たちは思っている。

 

 

「蒼龍、そろそろ偵察機を飛ばした方がいいんじゃない?」

 

 

「そうね、鈴谷も準備しておいて」

 

 

「了解~」

 

 

蒼龍、飛龍、鈴谷はそれぞれ偵察機を飛ばす、これは索敵用の艦載機で空から敵艦隊がいないかどうかを探す役割を果たす、警察官がヘリコプターを使って逃走中の犯人を追跡するアレを想像してもらえば分かりやすいだろう。

 

 

「火力主義のあなたたちが偵察機積んでるなんて意外ね」

 

 

「てっきり艦攻や艦爆ばかり積んでるのかと思ったわ」

 

 

「そんなわけ無いでしょ、空母はいわば艦隊の“目”よ」

 

 

「それくらい理解してるわ」

 

 

加賀と瑞鶴の言葉に蒼龍たちはムッとしながら反論する、向こうの提督もそれくらいは理解しているようだ。

 

 

「ローマ、砲撃戦の時なんだけど、陣形はどうすればいいかしら」

 

 

「そうね…空母は敵に接近されると不味いから、戦艦や重巡を前に出した単縦陣か復縦陣がいいんじゃない?」

 

 

空母組が憎まれ口を叩き合っている最中、ローマと霧島は戦闘中の陣形について話し合っていた、陣形は割と戦局を左右するモノなので慎重に決めなければならない。

 

 

「っ!!偵察機より敵艦隊発見の報告あり!その数…9体!」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「9体!?」

 

 

色丹島まで目と鼻の先といったところで蒼龍の偵察機が敵艦隊を発見した、おそらく島の守備部隊なのだろうが、蒼龍の報告を聞いた艦隊の面々は何かの間違いだろ、と否定したくなった。

 

 

「…嘘」

 

 

「おいおいこりゃ…」

 

 

しかし程なくして現れた敵艦隊を見て、それが紛れもない事実だと言うことが分かった。

 

 

 

 

(ふふふ…驚いてる驚いてる)

 

 

ベアトリスはのこのことやってきた艦娘を見て余裕の笑みを浮かべていた、敵の艦娘は12体、こちらは王兵級(キング)が5体に女王兵級(クイーン)が3体…そしてベアトリス自身を含めた全9体、数で言えば艦娘側が有利だが…

 

 

 

(いくら数的有利を利用したところで、戦力で言えばこちらの方が断然有利なのよ)

 

 

ベアトリスは自信たっぷりの表情で心の中で呟く。

 

 

 

 

「何…?あの深海棲艦…」

 

 

「見たこともない姿をしてるわ…」

 

 

第2連合艦隊の面々は敵の艦隊を見て愕然としていた、編成としては…

 

 

○戦艦棲艦×5

 

○空母棲艦×3

 

と、それほど珍しくもない編成だ、しかし問題はその奥にいる旗艦(リーダー)と思われる深海棲艦にある。

 

 

骸骨のような白い肌に長いサイドテールの白髪、そこに黒いセーラー服のようなモノを着ている。

 

 

そして一番特徴的なのはその艤装、一言で言うなら『火砲を装備した人喰い箱(ミミック)』といったところだろうか、船体のあちこちからひしゃげた砲身が生えており、その正面には艦娘たちを喰らいつくさんとばかりに大きな口が付いていて、今か今かと手ぐすね引いて待っていた。

 

 

そしてその人喰い箱(ミミック)の上に腰掛けている白髪の深海棲艦の姿はまるで玉座に座る女王のようであった。

 

 

「あんな敵見たことある?」

 

 

「あるわけ無いでしょ!何よアレ!」

 

 

第2連合艦隊の艦娘であの人喰い箱(ミミック)の深海棲艦を見たことのある艦娘はいなかった、大本営から公開されている敵艦の資料にも無い深海棲艦なのでおそらくは初めて発見される新種の個体だろう。

 

 

「これはマズいわよ!新種の深海棲艦なんて想定外よ!」

 

 

「一度撤退した方がいいんじゃ…」

 

 

瑞鶴とローマは第3艦隊に撤退を提案するが…

 

 

「何言ってるのよ!ここで撤退したら作戦は失敗よ!退けるワケないじゃない!」

 

 

「ここは是が非でも旗艦を落とすべきよ!」

 

 

「敵の戦力も未知数なのに無謀過ぎるわ!」

 

 

戦う前から仲間割れの危機に瀕する第2連合艦隊、しかし…

 

 

「盛り上がってるところ悪いんですけど、撤退は無理そうですよ…?」

 

 

吹雪の言葉に全員が後ろを振り向く。

 

 

「なっ…!!」

 

 

「これは…」

 

 

そこには、50体もの駆逐棲艦が逃げ道を塞ぐようにしてバリケードを作る光景が広がっていた。




ちなみにベアトリスは実際にゲーム中に登場する深海棲艦を元に書いています、誰だか分かった人はイベント常連者だと思います。

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