艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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今回は少し短めです、次回が長くなりそうなのでここで少し調整。

色々驚くかもしれませんがやはりスルーで。


第30話「三日月の場合15」

「俺の命令を無視するとはどういうつもりだ!」

 

 

三日月たちが帰投して提督室に戻ると、開口一番に怒号が飛んでくる、もしかしたら気まぐれで許してくれるんじゃないかと思ったりもしたが、無駄な期待だった。

 

 

「…ああしなければ自分を含む仲間の命が危険になると判断したので、無視させていただきました」

 

 

「こいつ…!」

 

 

海原は三日月の顔を思い切り殴りつけた、殴られた三日月はよろよろと後ずさり転びそうになったが、雪風と秋月が支えてくれたのでそれは免れた。

 

 

「何が仲間だ!道具にそんな馴れ合いの感情は必要ねえ!お前らはただ俺の命令を聞けばいいんだ!」

 

 

「…司令官、僭越(せんえつ)ながら言わせていただきます、今回の事は司令官のためでもあるんですよ?」

 

 

「あん?」

 

 

三日月の発言の意図が分からず海原は首を傾げる。

 

 

「艦娘の轟沈は海軍の“損失”に繋がります、そうなれば司令官にも何かしらのペナルティがかせられて司令官の株が下がってしまいまう可能性だってあるんです」

 

 

「ハッ!そんなの関係ないね、俺の目的を果たせるなら周りからどう思われようが知ったことか」

 

 

 

「果たしてそうでしょうか?他の上官殿の反感を買えば今の司令官の地位を追われる事にだってなりうるんですよ?、そうなれば司令官の目的である復讐も果たせなくなります」

 

 

「うっ…!」

 

 

三日月から正論を言われ何も言えなくなる海原、昔から口論の勝率は高くなかったが、まさかこんな駆逐艦の少女に負けるとは思ってもみなかった。

 

 

「司令官が私たちを道具として扱うのならばそれはそれで構いません、ですがその艦娘(どうぐ)を使うのなら私が言ったようなことも十分考慮して下さい、この鎮守府はもう、貴方だけのものではないんです」

 

 

「………」

 

 

海原は何も言えずに拳を握りながら俯いていた、三日月を殴り飛ばして黙らせようとも考えたが出来なかった、なぜかは自分でも分からなかったが、それをやってしまうと自分の中で大切な何かが失われてしまうような…そんな感じがしたのだ。

 

 

「…もういい、修理ドック行って休んでろ」

 

 

海原がそう言うと、三日月は軽く一礼して雪風たちを連れてドックへ向かう。

 

 

「…何してんだ、俺」

 

 

 

 

 

 

「司令官、練度測定器(レベルスキャナー)の測定結果です」

 

 

「ん」

 

 

海原は三日月から結果診断書を受け取る。

 

 

○駆逐艦「三日月」

練度(レベル):9

 

○駆逐艦「雪風」

練度(レベル):8

 

○駆逐艦「秋月」

練度(レベル):6

 

 

 

 

「…1ヶ月半でこれか」

 

 

海原は難しそうな顔をして唸る、海原が提督になって1ヶ月半が経とうとしていた、相変わらず海原は三日月たちを道具扱いしているが、あの一件以降はムチャな戦闘や進撃の指示は出さなくなった、何かしらの心境の変化があったのかもしれないが聞いても教えてくれなかった。

 

 

「仕方ありません、週に一度か二度の出撃ではこのくらいが限度です」

 

 

「だよなぁ、練度向上(レベルアップ)基礎能力(ステータス)増加を狙ってたが、これじゃいつまでたってもらちがあかねぇ」

 

 

そう言うと海原は現在の備蓄資材の量を確認する、これぐらいならいけるか…と考えると三日月にある指示を出した。

 

 

「三日月、戦力増強のために艦娘を2体建造する、軽巡洋艦を迎え入れるぞ」

 

 

 

 

その3日後、建造した艦娘が室蘭鎮守府に届けられる日がやってきた。

 

 

 

「軽巡…良くて重巡が来てくれればいいが…」

 

 

 

「どうでしょう、ウチは戦果が乏しいせいで支給される資材も微々たるものなので、それでも出せる限界の資材数を入力したんですが…」

 

 

三日月はうーん…と腕を組んで考える、資材の量的には軽巡洋艦が建造される確率が高いのだが、なにぶん艦娘の建造は素材のヒトのスペックにも多少左右されるため駆逐艦が建造される可能性もある。

 

 

三日月と海原がそうこう話していると、ドアを軽くノックする音が聞こえた。

 

 

「入れ」

 

 

海原がそう返すとドアが開き、今回建造した艦娘が入ってくる。

 

 

「…睦月型12番艦の駆逐艦夕月です、よろしくお願いいたします、司令殿」

 

 

1体目は睦月型駆逐艦12番艦の『夕月(ゆうづき)』、膝まである長い髪は金髪と黒髪が入り交じったような変わった髪色をしている、服装は濃紺色の和装に緋色の袴と神巫(カンナギ)のような印象を与える。

 

 

「陽炎型駆逐艦6番艦の夏潮です!敵艦隊との戦闘ならぜひワタシを使ってください!」

 

 

2体目は陽炎型駆逐艦6番艦の『夏潮(なつしお)』、スカイブルーのセミショートにグレーのデニムジャケットを着た活発そうな印象の艦娘だ。

 

 

「この室蘭鎮守府の提督をしている海原充だ、お前たちはこれから俺の復讐のための道具として頑張ってもらう」

 

 

「…司令…殿?」

 

 

「へ?提督?」

 

 

「俺はこれで失礼する、あとは任せたぞ三日月」

 

海原は自分の挨拶を済ませるとさっさと提督室を出て行ってしまった。

 

 

「…まぁ、こんなとこだけどよろしく」

 

 

また1から室蘭鎮守府(ここ)の説明をしないとな…と心の中でため息をつく三日月だった。




次回予告

着々と道具を増やしていく海原、しかしそんなある日、彼の心の有り様を変えてしまう大事件が発生する…!?

※作者の都合により予告なく変更する可能性がございます。


一度やってみてかった次回予告。

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