艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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艦娘が陸上でも活動出来るんだから深海棲艦だって陸に上がれないことはないと思う。




第33話「三日月の場合18」

何とか外へ出た海原はキョロキョロと辺りを見回すが敵艦や艦載機の気配はない。

 

 

「よし、まずは緊急通信室へ行こう、他の鎮守府に応援を頼めば突破口が見えるはずだ」

 

 

緊急通信室とは鎮守府の地下に作られた通信設備を置いた部屋のことである、実はこのような深海棲艦による鎮守府の襲撃は今回が初めてではない、3年前にも横須賀鎮守府で敵艦隊の鎮守府襲撃があった、その教訓を生かして考案されたのがこの緊急通信室だ。

 

他の鎮守府支部に救援や応援を要求するための無線機などはもちろん、深海棲艦からの攻撃を凌ぐ地下シェルターとしての役割も持っているのだ。

 

 

 

海原はすぐさま通信室へ向かおうと走り出したが、突然自分の真横で爆発が起きた。

 

 

「うぐうぉ!」

 

 

その衝撃で海原は2mほど吹き飛ばされ、肘と膝を軽く擦りむいた。

 

 

「いってて…何が…」

 

 

そう言いながら起きあがると、つい先程まで埠頭で停泊しながら鎮守府本館を砲撃していた重巡棲艦が目の前に立っていた、所々損傷しているのを見ると三日月がダメージを与えたのだろう。

 

 

「なっ…!?」

 

 

(いつの間にここまで来たんだ!?いや、それよりも深海棲艦は陸上でも行動出来たのか!)

 

 

重巡棲艦は海原に主砲の砲口を向けて砲弾を装填する、逃げろと脳が警報を鳴らしまくっているのに身体が動いてくれない、海原は地面にへたった状態から動けなくなってた。

 

 

…怖い。

 

 

 

深海棲艦に砲を向けられて改めて思う、怖い、怖い、怖い、とても怖い。

 

 

あれほど憎んでいた深海棲艦が目の前にいるのに、怒りや憎しみといった感情は一切浮かんでこなかった、そこにあるのは底なしの恐怖のみ。

 

 

「や…やめろ…!やめてくれ!」

 

 

海原は後ろにずり下がりながら何とか逃げようとするが、重巡棲艦の右手が海原の頭をがっちりと掴む。

 

 

「た、助けてくれえええええぇぇ!!!!!」

 

 

海原が死を覚悟したその時、突然重巡棲艦の頭部が爆発した。

 

 

「な、何が…?」

 

 

重巡棲艦はそのまま後ろに倒れた、恐らく“轟沈”したのだろう。

 

 

「司令官!ご無事ですか!?」

 

 

すると艤装を装着した雪風たちがやってきた、今のは雪風が重巡棲艦を砲撃したのだろう。

 

 

「雪風!帰ってきたか!」

 

 

 

「はい、先程戻りました、それより司令官、この状況は…!?」

 

 

雪風は目の前に転がっている首なしの重巡棲艦を見ながら聞く。

 

 

「敵襲だ、鎮守府埠頭に敵艦隊が入ってきてやがる、構成は戦艦棲艦3体、空母棲艦2体、駆逐棲艦4体に今倒した重巡棲艦1体の計10体」

 

 

「なっ…!!10体!?」

 

 

「到底私たちで相手できる数ではない…!」

 

 

雪風と夕月が目を剥く、やっと最近軽巡棲艦を相手取れるようになってきたという室蘭艦隊の練度(レベル)ではオーバースペック過ぎる艦隊だ。

 

 

「…そうだ!お前ら、三日月の応援に回ってやってくれ!残りの9体を三日月だけで相手してるんだ!」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

「三日月だけで!?」

 

 

雪風たちは驚愕の表情を浮かべる、そんな戦力相手に駆逐艦の三日月が1体だけで相手取るなど自殺行為に等しい。

 

 

「俺は今から無線で周りの鎮守府に応援を要請する!だからそれまでの間でいい!何とか持ちこたえてくれないか!?」

 

 

海原は雪風の肩を掴んで頼み込む、普段の海原なら絶対にあり得ない光景だけに全員が目を丸くしていた。

 

 

「分かりました、では…」

 

 

「待ってくれ、雪風は司令官殿の護衛として司令官殿のそばにいた方がいいと思うぞ」

 

 

「何言ってんだ夕月!んなことしたら戦力が…!」

 

 

「敵艦を屠るのも大事だが、司令官殿を守るのも()()である私たちの大事な役割なのだ!おまけに敵艦隊には空母棲艦がいる、艦載機で攻められたら司令官殿だけでは対処出来ないのだぞ!」

 

 

夕月に強く言われて海原は言葉に詰まる、夕月の言うことは正しい、もし今のようにまた敵艦がおそってこようものなら今度こそ海原は死ぬだろう、であれば誰かしら艦娘を護衛として付けるのが賢い選択と言える。

 

 

「…分かった、頼めるか?雪風」

 

 

「了解しました!雪風、司令官の護衛に付きます」

 

 

「では私たちは三日月の援護に回ろう」

 

 

「そうだね、応援要請頼んだよ、提督!」

 

 

「こっちは任せておいて!」

 

こうして海原と雪風、夕月と夏潮と秋月はそれぞれの役割を果たすために走り出した。

 




二次創作とはいえこの小説の設定ってゲームの世界観無視しすぎてるような…(今更だが)。

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