艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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小分けに投稿するとか言っておきながらどこで切ったらいいか分からず結局ロングverで投稿…

艦これアーケードで2-2までクリアしました、相変わらず駆逐艦のみの艦隊です、駆逐艦のみんなが可愛すぎて外せないんだよォ!




第34話「三日月の場合19」

まずは海原と雪風サイド、地下の緊急通信室に入ったふたりは通信の準備をする。

 

 

「そこの赤いボタンを押して、白いつまみを“00”番に合わせてくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

雪風が指示通り赤いボタンを押すと計器類のランプが一斉に点灯した、これが電源なのだろう、続いて白いつまみを00番に合わせて回す、すると通信機に取り付けられているディスプレイに“緊急事態”という赤文字が浮かび上がった。

 

 

「普通だったらどこの鎮守府に繋ぐとか設定しなきゃいけないんだが、この緊急モードの場合は全ての鎮守府に一斉に繋ぐことが出来る」

 

 

そう言うと海原はマイクを持ち手短に用件を言う。

 

 

「緊急事態!緊急事態!室蘭鎮守府の海原だ、鎮守府埠頭に敵艦隊が侵入し攻撃を受けている、構成は戦艦3、空母2、駆逐4の計9体、我が艦隊のみでの迎撃は困難と判断した、よって他の鎮守府からの応援を要請する!繰り返す…」

 

海原は急いで、かつ正確ににこちら側の情報を伝える、誰でもいい…来てくれ!

 

 

『…こちら青森駐屯基地の笹音(ささね)です!応援要請は私が受けます、すぐに駐屯している艦隊をそちらに急行させます、5分程で合流出来ると思うので何とか踏ん張ってください!』

 

 

海原の発信から20秒後、青森の駐屯基地から女性の声で返答が来た、ありがとうございます!と海原が礼を言って一度通信を切る。

 

 

「よし、夕月!応援要請が通ったぞ!5分後に合流予定だ、何とか持ちこたえてくれ!」

 

 

『了解した!何とかしてみせよう!』

 

 

海原はあらかじめ夕月に持たせておいたPitで連絡する。

 

 

「あとは応援が来るまで待機ですね」

 

雪風はそう言って近くにあった椅子に座る、こんな時によく落ち着いていられるモノだ。

 

 

「…あと俺に出来る事は何か無いもんか…」

 

 

海原はうーん…と考えを巡らせるが、びっくりするほど何も案が浮かばない。

 

 

「何もないですよ、司令官は深海棲艦と戦う能力は無いんですから、ここは私たちに任せていればいいんです」

 

 

雪風は足をぶらぶらさせながら呑気に言った。

 

 

「お前、自分の仲間が死ぬかもって時になんでそんなに呑気に構えてられるんだよ!」

 

 

「?司令官こそなんでそんなに怒っているんですか?私たちは司令官の道具です、仮に私たちが全滅しても新しく建造すればいくらでも替えが利くんですよ?なのにどうして?」

 

 

「…それは…」

 

 

雪風にそう言われ海原は言葉を詰まらせる、雪風のその質問は最近の海原の悩みそのものだった。

 

 

自分が艦娘を道具扱いしていたのは事実だ、それは今でもそう思っているしたぶんこれからも変わらない、でも…

 

 

艦娘たちの“自分は道具だ”という発言を聞くと、何故かひどく嫌な気持ちにさせられるのだ、それがどうしてなのかはいくら考えても分からなかった。

 

 

「…雪風、笑わずに聞いてくれるか?」

 

 

「ほぇ?何でしょう?」

 

 

海原は雪風に先程の悩みを打ち明ける、自分は艦娘を道具扱いしながらも、自分以外が艦娘を道具扱いすると腹が立つ、そんな矛盾した気持ちになる自分は一体何なのか…。

 

 

「なる程、司令官はそんな事を考えていたんですか」

 

 

「あぁ、自分でもわけ分かんねぇとは思ってんだけどな」

 

 

「そうなんですか、ふふっ」

 

 

海原のそれを聞くと、雪風はどこか嬉しそうな顔をして笑う。

 

 

「笑うなって言っただろ…」

 

 

「すみません、でも、司令官のお悩みの答えはとてもシンプルなモノですよ」

 

 

「お前になら分かるのか?」

 

 

「はい、答えは簡単です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官は、本当は私たちのことを道具扱いしたくないんです」

 

 

 

「…えっ?」

 

 

海原は一瞬、雪風に何を言われているのかが分からなかった、艦娘を道具扱いしたくない?自分が?。

 

 

「私たちが“自分は道具だ”と言って司令官が腹を立てるのは、その発言が司令官の本心とは反しているからです、司令官は深海棲艦に復讐するのが目的だと最初に聞きましたが、復讐心に駆られて本当の気持ちが見えなくなってるのではないですか?」

 

 

「……」

 

 

雪風の言葉に海原は何も言えなくなっていた、最初は深海棲艦に復讐するという目的で提督になったが、さっき重巡棲艦に迫られたとき、自分はどうなった?自分の中を恐怖の二文字に支配され、復讐心などというものはあっさりと恐怖心に塗りつぶされてしまっていたではないか。

 

 

提督になったとしても、深海棲艦に“自ら”手を下す手段なんて無い、復讐するにしろ何にしろ、全て艦娘に頼らなければ自分は深海棲艦(やつら)に何も出来ない、その現実が今になってのし掛かる。

 

 

『司令官のそのお考えはいつか身を滅ぼします!復讐などというお気持ちで自分を動かさないでください!今の司令官は自らを妄執という鎖で縛っているようなものです!』

 

 

三日月が室蘭に来た初日、彼女が言っていた言葉が頭の中をグルグル回る、三日月が言いたかったのは、このことだったのだろうか。

 

 

「…なぁ、雪風」

 

 

「はい?」

 

 

「俺さ、重巡棲艦に砲を向けられて、正直めちゃくちゃ怖かった、何も出来なかった、あれだけ復讐しようと憎んでた相手なのに面と向かった瞬間恐怖しか浮かばなかった」

 

 

「…それが普通の反応ですよ、あんなモノと相対して平常心でいられるわけがありません」

 

 

「じゃあお前らは、艦娘はどうなんだよ?怖いとは思わないのか?」

 

 

「それはもちろん怖いです、殺すか殺されるかの命のやり取りをしているんですから、怖くないわけがありません、実際私もまだ深海棲艦と戦うのは怖いです」

 

 

そう言う雪風の身体は微かに震えていた、当時の海原は艦娘のその気持ちが理解できなかった、“艦娘だから”、“深海棲艦と戦える存在だから”という理由で艦娘たちが恐怖を感じる必要はないと思っていた、でも今なら分かる、深海棲艦に殺意を向けられた経験をした今ならそれを理解できる。

 

 

「ありがとな、雪風」

 

 

「…司令官?」

 

 

急にお礼を言われて雪風はキョトンとする。

 

 

「お前たちが深海棲艦から守ってくれてるおかげで今の俺がある、ようやくそれに気づかされたよ」

 

 

「お礼を言われるような事は何もしてないですよ、司令官はただ私たちを使ってくれればいいんです、私たちはそれに全力で応えてみせますから」

 

 

「…ありがとう」

 

 

海原はもう一度そう言うと雪風の白い髪を撫でる。

 

 

(さてと、守られてばかりじゃ、司令官としての立つ瀬が無いってモンだよな!)

 

 

そう決意した海原の顔は、どこか吹っ切れたような、あるいはつきものが落ちたような、そんな晴れやかなものだった。




雪風のヒロイン力も負けてない、三日月はこの後思いっきりヒロインやってもらおうかな~(ニヤニヤ)。


ちなみにアーケードでの出撃艦隊ですが…

・吹雪
・叢雲
・暁
・朝潮
・三日月
・響

の6体です、敵の攻撃を食らおうものなら一撃大破は必至のドキドキ艦隊、よくこのメンツで2-2まで来られたなぁ。


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