艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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レベル98~レベル99に必要な経験値、多すぎないっすか?演習20回くらいしないと上がらない…

大体演習1回で1万2000(旗艦ボーナス含む)だから…20万以上!?とんでもねぇー!


第37話「三日月の場合22」

妙高たち支援艦隊が帰投した後、室蘭鎮守府のメンツはグラウンドで野営(キャンプ)の準備をしていた、本館は全壊しているわけではないので使える部屋を探せば良いのだが、所々崩れていてダメージを受けている建物に入るのは念のため避けた方がいいという海原の考えで野営(キャンプ)となった。

 

「さーてと、日も暮れかけてるし、ちゃっちゃと終わらせようぜ」

 

 

「それはいいですけど司令官、こんな大きなテントセットどこにあったんですか?」

 

 

三日月がテントの骨組みを組み立てながら言う、海原たちが準備しているテントは大人5人が川の字で寝れるのではというほどの大きさがある。

 

 

「通信室の奥に仕舞い込んであったんだよ、籠城目的にも使えるようにしたのか、非常食やら寝袋やらもあったぞ」

 

 

「本当にシェルターみたいだな…」

 

 

「なおさらなんでその中に地引き網があったのかが不思議だよ…」

 

 

そんな会話をしつつ10分程でテントは完成し、三日月たちが中へと入る。

 

 

「おぉ!結構広い!」

 

 

「これがテントというものか…」

 

「アウトドア感出るねー!」

 

 

初めてのテント体験にはしゃぐ三日月たち、それを見て海原は妙に微笑ましい気分になる。

 

 

 

 

 

 

「…非常食って乾パンくらいしかイメージなかったが、こりゃすげぇな」

 

 

通信室から持ってきた非常食を開封して海原は驚く、基本的な乾パンや缶詰めはもちろん、水でアツアツのご飯が食べられるアルファ化米まである。

 

 

「とりあえず五目飯を主食に缶詰めをつつくか、魚の味噌煮とかあったし」

 

 

「えー!せっかくだから肉食べましょうよー!」

 

 

「数少ないんだから我慢しろ、これから生きていけなくなるぞ」

 

 

「いや司令官、別にサバイバルとかじゃないんですから…」

 

 

…その後も海原が作ったドラム缶風呂を堪能したり、グラウンドに雑魚寝して星空を見たり、普段やらないような事をして艦娘たちは大はじゃぎだった。

 

 

 

 

 

「…ふぅ、今日はとんだ日になったな」

 

 

時刻は午後11時半、三日月たちが寝静まった後、海原はテントの外で折りたたみ椅子を出して座っていた、映画館の座席よろしくなドリンクホルダーがついているあのタイプだ。

 

 

「明日からは鎮守府の修繕に執務室の再生…やることが一気に山積みだ」

 

 

海原はコーラを飲みながら明日以降の予定を考える、今日の襲撃はすでに大本営に報告しているので明日には修理が入る、今まで暇だった鎮守府が忙しくなりそうだ。

 

 

「…司令官?」

 

 

ふと自分を呼ぶ声がしたので後ろを向くと、寝間着代わりのジャージを来た三日月が立っていた。

 

 

「三日月か、眠れないのか?」

 

 

「司令官こそ、こんな時間にどうされたんですか?」

 

 

「…ちょっと考え事」

 

 

「…隣、よろしいですか?」

 

 

「あぁ」

 

 

海原の様子を見て何かを察した三日月は新しく椅子を出して海原の隣に座る。

 

 

「コーラ飲むか?」

 

 

「いただきます」

 

 

三日月はコーラの入ったコップを受け取ると一口飲み、けほっと可愛らしいげっぷをする。

 

 

「…今日は本当にありがとな、お前らがいなかったら、俺は多分死んでた」

 

 

「どうされたんですか司令官?先ほどから随分と丸くなられたようですが…」

 

 

海原に突然お礼を言われて三日月は驚いた顔をして問う。

 

 

「やっぱり気づいてたか」

 

 

「秘書官ですから」

 

 

三日月は“ふふん♪”と得意げに鼻を鳴らす、その様子が可愛いと思ってしまったのは気のせいではないハズだと海原は思う。

 

 

「何か心境の変化があったのですか?よろしければこの三日月にお聞かせください」

 

 

三日月にそう言われて最初は断ろうかと思ったが、三日月のまっすぐな目を見てしまうとなぜだか逆らえなくなってしまう。

 

 

「…実は今日の襲撃の時、重巡棲艦に殺されそうになったんだ」

 

 

「えっ!?」

 

 

海原の言葉に三日月は思わず声を上げて驚いてしまい、慌てて口を手で押さえる。

 

 

「正直言って怖かったよ、深海棲艦に復讐するとかでかい口叩いてたのに、いざ仇を目の前にしたら恐怖で何も出来なかった、夕月たちが戻ってくれてなかったら今頃死んでただろうな」

 

 

 

「申し訳ありません、私が敵艦の動きをもっとよく見ていれば…」

 

 

「お前は悪くねぇよ、むしろ抜かれたのが重巡棲艦だけで済ませられたんだから快挙だ」

 

 

海原はそう言って三日月の艶やかな黒髪を撫でる、んっ…とくすぐったそうにするが、どこか気持ちよさそうに撫でられている。

 

 

「それでさ、その時気づいたんだよ、提督になって艦娘の指揮権を手に入れても、俺が“直接”深海棲艦に手を下す事は出来ない、艦娘におんぶにだっこで頼らなきゃ俺は何も出来ない、ようやくそれに気付かされたんだ」

 

 

「………………」

 

 

三日月は何も言わずに海原の話を聞いていた、その表情はどこか落ち着いた、初めから海原の言うことか分かっていたかのような反応だった。

 

 

「あの時お前が言った“身を滅ぼす”って言葉の意味、今なら分かるよ」

 

 

「…そうですか、それなら痛い思いをして言ったかいがありました」

 

 

「なんだそれ、嫌味か?」

 

 

「さぁ、どうでしょう?」

 

 

相変わらず三日月はひらりとかわしてしまい、思わず海原は苦笑してしまう。

 

 

「三日月、何を今更って思うかもしれんが、聞いてくれるか?」

 

 

海原の問いかけに、三日月は何も言わずに頷いた。

 

 

「俺は深海棲艦への復讐を止めるつもりはない、でも、もうそれだけで自分やお前たちを動かしたりはしない、お前たちが今まで俺を深海棲艦から守ってくれていたように、俺もお前たちを深海棲艦から守れるような司令官になろうと思う、誰一人欠けることなく帰ってこれるように、そして深海棲艦からの“轟沈”という弾からお前たちを守れるように」

 

 

「司令官…」

 

 

「だから三日月、これからは道具としてじゃなく、俺の部下として、鎮守府の仲間として、よろしく頼む」

 

 

海原はそう言うと椅子から立ち上がり、三日月に深々と頭を下げる、それを見た三日月は驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になり…

 

 

「こちらこそよろしくお願いいたします、この三日月、司令官にいつまでも付き従う所存です」

 

 

海原にビシッと敬礼をする。

 

 

「それと、そう言う事はみんなにも言ってあげた方がいいと思いますよ?」

 

 

そう言うと三日月はテントの方へと視線を向ける。

 

 

「?」

 

 

三日月に釣られて海原もテントの方を向くと、夕月たちがテントの入り口から顔を覗かせてこちらを見ていた。

 

 

「なっ…!?お前らいつから…!」

 

 

「司令官殿が三日月にコーラを渡した辺りからです」

 

 

「ほぼ全部聞かれてんじゃねぇかよ!」

 

 

「いやぁ、提督もとうとう心を入れ替えてくれたね~、うれしい限りだよ」

 

 

「待て秋月、それはどういう意味だ!?」

 

 

「これはいいモノを見せてもらいました、お熱いですね~」

 

 

「夏潮!変な曲解してんじゃねぇ!」

 

「あ、あのっ!私も三日月みたいに司令官と懇ろ(ねんご)な関係になりたいです!」

 

 

「よーし雪風!お前は一番最初に誤解を解く必要がありそうだな!」

 

 

それぞれのコメントに翻弄される海原、それを見ていた三日月はとても楽しそうにクスクスと笑っていた。

 

 

「…まぁいいや、お前らもこれからは部下として、仲間としてよろしく頼む」

 

 

それを聞いた夕月たちは互いに顔を見合わせると、全員キリッとした表情になり…

 

 

 

「「「こちらこそ、よろしくお願いいたします!提督!」」」

 

 

寸分違わぬ敬礼を返した。

 

 

 

 

それを見た海原は、提督になってから一番の笑顔を浮かべた。

 




海原過去編前半終了。

そして運命はあの絶望の日へと向かっていく…

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