艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そういえばブラウザー版の艦これには駆逐や軽巡でしかダメージを与えられない「PT小鬼群」という敵が登場するみたいですけど、もしキス島撤退作戦に登場しようもんなら絶好の狩り場になりそうですね。
◇
「…とまぁ、前半部分はこんな感じだな」
海原の話を聞いていた吹雪たちは水を打ったように静まり返っていた。
「何て言うか、司令官って昔はクズだったのね」
その沈黙を破ったのは暁だった、開口一番に
『今から思えば返す言葉も無いな』
『し、司令官はクズなどではありません!確かにあの時は少しやさぐれてた時期もありましたけど、司令官は本当は優しくて思いやりのある人間なんです!』
「うわぁ…目の前の天使が眩しくて直視できない…」
尚も海原の弁明をする三日月を見て吹雪は目を細める、心が荒んでしまった自分には眩しく見えてしまう。
「でも、だったらなおのこと三日月たちが轟沈した理由が分からなくなったわ、司令官がクソクズから人並みに戻ったのならあんたが轟沈するような理由は無くなるわけだし」
『それは今から話す事を聞けば分かるさ』
そう言って海原は話の後半を語り出した。
◇
鎮守府襲撃の翌日、建物の修理を担当する業者が室蘭に出入りするようになった、そして海原も予想していたことだが、大本営のトップである元帥…南雲が室蘭に様子を見に来ていた。
「まさか着任早々面倒事を起こすとはな、さすが
南雲はイラついた感情を隠そうともせず海原に嫌みを言う、大方多額の建築費を費やして建てたばかりの鎮守府を一月かそこらで壊されたことが気に食わないのだろう。
「元帥殿にお褒めの言葉を頂けるとは、この海原、誠に光栄でございます」
しかし海原はそんな南雲の嫌みにも動じず、同じく嫌みで返す。
「チッ、ちょっと士官学校でいい成績をとったからって図に乗りやがって…」
南雲は忌々しげに吐き捨てると、海原の隣へ視線を移す。
「ところで、貴様の鎮守府では艦娘の
海原の視線の先には、それぞれカッターナイフやらハサミやらの刃物を持って南雲を睨みつけている三日月たちの姿があった。
「…これ以上司令官を侮辱するようであれば、たとえ元帥殿であろうと容赦はいたしません」
三日月は毅然とした態度で南雲に言った、夕月たちも同じ意見なのか、鋭い視線で南雲を睨む。
「…随分と病的に信頼されているようだな、どんなふうに
南雲は三日月たちの態度にある種の気持ち悪さを感じつつ、修繕業者の所へと歩いていく。
「…流石に上官相手に得物を向けるのはいただけないと思うぞ」
海原がやや緊張した面もちで三日月に言う、もしかしたら本当に飛びかかるのでは、と肝を冷やした。
「うぅ…申し訳ありません、司令官を侮辱されてつい殺意が…」
「“つい”で殺意を湧かせるな」
「私としてはここで
「うん、雪風はその物騒な発言を今すぐ止めようか」
こいつら将来的にヤンデレになったりしないよな?と今から不安になる海原だった。
鎮守府の修繕中も当然敵はやってくるので出撃任務は変わらずあった、しかし以前と比べて勝率は劇的に上がった、復讐の感情のみに捕らわれなくなった海原の心にも余裕が出て来て冷静な指揮が取れるようになり、かつて士官学校で“神童”と呼ばれるほどの類い希な艦隊指揮能力を思う存分発揮できるようになった。
「司令官!また
帰投後、三日月たちが弾んだ声で提督室に入ってくる。
「そうか、流石は室蘭艦隊
「い、いえ!これも司令官の作戦指揮のおかげです!私は何も…」
海原の言葉に三日月は恥ずかしそうに言った。
「おっ、早速見せ付けてくれるね~」
「三日月がうらやましいな」
「ぐむむ…正妻には敵いません…」
「雪風、いろいろおかしいよ…」
後ろでは夕月たちが羨望の、あるいは嫉妬の目でその様子を見ていた。
◇
「…えっ?
室蘭鎮守府に大規模作戦への召集命令がかかったのは6月の末日の事だった。
『あぁ、沖ノ鳥島近海に出没している深海棲艦の主力艦隊を撃滅する作戦を開始する、室蘭の艦隊も参加してもらうぞ』
電話相手の鹿沼が淡々と要件を述べる、しかし海原は素直に首を縦に振ろうとは思わなかった。
「自慢ではないですが、我が艦隊は最も
そう、三日月を筆頭とする室蘭艦隊は大規模作戦に参加するには
『自惚れるな、大規模作戦と言っても主戦力鎮守府の艦隊が取りこぼした駆逐棲艦などの残党兵を狩るのが室蘭の役目だ、いきなり敵主力艦隊なんかと戦わせられるか』
鹿沼は窘めるように言うが、それでも不安は尽きない。
『言っておくが作戦決行は明日だ、迎えもすでに手配して向かわせている、拒否権は無いと思え、あと海原も一緒に来るように』
「…なぜ俺も同行を?」
『なに、
(…ようは見せ物にしたいって事か)
召集されるのは不満だが、三日月たちの様子を近くで見れるのであればプラスになるかな、と自分を納得させる。
「…分かりました、同行に同意します」
『お前が同意しようがしまいが来ることにはなるんだけどな、迎えは半日後くらいに行くから支度しとけ』
そう言って鹿沼は電話を切った。
「…とりあえずあいつらに伝えておくか」
そう言って海原は館内放送で三日月たちを呼び出した。
◇
「大規模作戦…ですか?」
海原の説明を聞いて三日月は首を傾げる。
「どういうわけか室蘭にもお呼びがかかった、数時間もすれば迎えが来るらしい」
それを聞いた三日月たちはそれぞれ不安そうな表情を浮かべる。
「私たちでは露払いすら覚束ないというのに、上官殿は何を考えているのだろうか…」
「
夕月と秋月がそれぞれ愚痴をこぼす。
「まぁ、俺の艦隊指揮を上官に見せつけたいって言ってたし、見せモンにでもしたいんじゃないか?」
それを聞くと、三日月たちの目からハイライトが消えていくのがありありと分かった。
「…上官殿にそこまで言われては、司令官の素晴らしさを身をもって教えて差し上げるのが部下の役目…ですよね?」
「そうだな、ここは大規模作戦に是非とも参加しなければ…」
「向こうに行くのが楽しみになってきちゃった」
「ねぇ、人って首ハネたらどんな顔した生首が出来るんだろうね」
「試してみよっか~」
三日月、夕月、秋月、雪風、夏潮がそれぞれ抑揚の無い声で譫言のように呟いていた。
(…なんか行かせちゃいけないような気がしてきた)
海原は今から心配になってきた。
◇
その数時間後、室蘭一行を迎えに来た輸送機がグラウンドに到着する。
「海原司令官ですね、お迎えにあがりました」
「ご苦労様です」
輸送機のパイロットと海原は互いに敬礼をすると、輸送機に乗り込んでいく。
「飛行機って乗るの初めてだよ」
「緊張しちゃうな~」
秋月と夏潮が座席の上ではしゃぐのを見て海原が揺らすなよ~、と注意を入れる。
そんな6人を乗せた輸送機は室蘭鎮守府から離陸した。
…このフライトが三日月たちにとって地獄への片道切符になるとは、この時誰も予想していなかった。
ちなみにアーケード版で戦ってみたい敵は…
・PT小鬼群
・集積地棲姫
・ナガラ級mist
…こんな感じですかね、ブラウザー版やってみてええぇぇ!