艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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台場メンバー全く出てこないです。

てかベースキャンプでこんな事になってるのに吹雪たちはのんきに海原の話聞いてたんですね、何て危機感のない連中だ…。


第47話「三日月の場合32」

 

そして現在、室蘭鎮守府司令官の長嶋幸太はベースキャンプの中央広場に設置されている司令部テントの中であるものを待っていた。

 

 

「失礼します提督、第1捜索艦隊帰投しました」

 

 

するとテントの入り口が開き1体の艦娘が入ってくる、栗色のロングヘアに深緑色の制服を着ている艦娘、球磨型重雷装巡洋艦4番艦の大井だ、長嶋が待っていたのは大井の報告である。

 

「結果はどうだった?」

 

 

長嶋が聞くと、大井が申し訳無さそうに目を伏せる、それを見て結果が芳しくなかったというのは大方予想できた。

 

 

「海域をくまなく探したのですが、吹雪さん、暁さんの2体を発見することは出来ませんでした」

 

 

 

「そうか…」

 

 

長嶋は唇を噛む、第1、第2連合艦隊が帰投してすぐに瑞鶴が泣きながら吹雪たちの捜索を懇願してきた、なので自身の室蘭鎮守府から艦娘を召集して捜索艦隊を出しているのだが、もう3度は艦隊をローテーションさせているのに未だ見つかる気配が無い、

 

 

「分かった、大井たち第1捜索艦隊は補給して休んでろ、北上たち第2捜索艦隊に出動するように伝えてくれ」

 

 

「はい…申し訳ありません、私たちが至らないばかりに…」

 

 

大井は悔しそうな表情で長嶋に頭を下げる、大井は長嶋が現室蘭鎮守府に着任したときに最初に配属された艦娘で、それ以降は彼の秘書官として二人三脚で鎮守府を運営してきた、今では鎮守府の中で最も長嶋から信頼されている艦娘である。

 

 

大井自身も長嶋には信頼と好意を寄せており、それは鎮守府の艦娘の中で一番だと自負している、そんな長嶋の期待に応えられないのが悔しくてたまらなかった。

 

 

「別にお前が謝る事じゃない、こういった捜索任務には良くあることだ、お前は何を気負わずにさっさと補給してこい」

 

 

「はい、ありがとうございます…」

 

 

長嶋にはああ言ってもらえたが、テントを出る大井の表情はどこか浮かないものであった。

 

テントを出た大井はPitをポケットから取り出すと第2捜索艦隊へ連絡を入れる。

 

 

『はいはーい、どしたの大井っち?』

 

 

電話口でどこか気の抜けた声を出すのは球磨型重雷装巡洋艦3番艦の北上、大井の次に室蘭にやってきた艦娘であり、付き合いが長いからか何かと馬が合う。

 

 

「第2捜索艦隊出動です、急いで準備してください」

 

『えぇー、また?正直キツいわー』

 

 

「ダメですよ北上さん、事態は一刻を争うんですから、行方不明の吹雪さんと暁さんを早く見つけないと命に関わるかもしれないって提督も言ってましたし」

 

 

『それは分かってるよー、本当に提督の事になると躍起になるよね、お熱いね~』

 

 

「なっ…!?何を言うんですか北上さん!?」

 

 

『あはは、冗談冗談、じゃあすぐに準備するね、でも否定しないって事は十分脈ありって事だよね~』

 

 

「北上さん!」

 

 

大井が文句を言う前に北上はさっさと通話を切ってしまった。

 

 

「まったくもう…北上さんももう少し真面目に仕事を…」

 

 

頬を赤らめてぶつくさと文句を言いながら補給に行こうとする。

 

 

「あれは…」

 

 

すると、その途中で瑞鶴がしょぼくれた顔をして広場の隅っこに座っているのが見えた、聞けば瑞鶴は吹雪を助けようとしたが叶わなかったらしい。

 

 

(やっぱり気にしてるのかしら…)

 

 

そう思った大井は瑞鶴のもとへ歩き出す。

 

 

「瑞鶴さん」

 

 

「…大井さん」

 

 

大井に気付いた瑞鶴はゆっくりと顔を上げる、大井は優しく笑いながら瑞鶴の隣へ腰を下ろす。

 

 

「心配ですか?あの子たちのこと」

 

 

「そりゃもちろん…だって瑞鶴があの時ちゃんと吹雪の手を引けてれば…」

 

 

「瑞鶴さん、過去はどれだけ悔やんでも変えられません、だけど未来は…これからなら変えることが出来ます、吹雪さんと暁さんは私たちが必ず見つけ出しますから、瑞鶴さんはどーんと腰を据えて待っていてください」

 

 

大井はドン!と胸を叩いて言う、今の言葉は昔大井が大きな失敗をしてしまった時に長嶋からかけてもらった言葉だ、我ながらこっぱずかしい受け売りだとは思うが、あの時の自分はこの言葉に救われたのだ。

 

 

「…ありがとうございます、本当は私も率先して探しに行きたいんですけど…」

 

 

「お気持ちは嬉しいんですけど、戦艦や正規空母の方々は消費する燃料が多くてローテに向いてないんです、すみません…」

 

 

「お、大井さんが謝る事じゃないですよ!そんな事は瑞鶴だって重々承知ですから!」

 

 

瑞鶴が慌てて首を振って言う、その様子が可笑しくて大井はつい笑ってしまった、それにつられて瑞鶴も笑う。

 

 

「ありがとうございます、少し元気が出てきました」

 

 

「いえ、私は何もしてませんよ」

 

 

そう言って大井は笑うと、瑞鶴と別れて補給テントへと向かう。

 

 

(でも、出会ってまだ数日しか経ってないのにあそこまで心配してもらえるなんて、あの子たちも幸せ者ね)

 

 

写真でしか見たことのない駆逐艦の少女の顔を思い浮かべて補給テントへと向かう大井の足取りは、心なしか少し軽かった。




そう言えば大井って事前登録の特典で貰うことが出来たみたいですね、ゲットした順(newソート)で並べると初期艦より前にくるんだとか。

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