艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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友人「お前ロリコンだよな」

僕「は!?んなわけねーだろ!」

友人「ならマンガとかアニメの好きなキャラ言ってみ?」

僕「いいぜ?」

…みたいな会話をこの前して、キャラ名挙げていったらやっぱロリコンじゃねーか!とつっこまれた、マジか…



第54話「Z3の場合4」

吹雪たちとケッコンカッコカリをした翌日、海原は秘書艦の吹雪を連れて大本営を訪れていた、どうやら先の大規模作戦関係で臨時司令官会議を行うらしい。

 

 

「どうして私たち台場鎮守府も呼ばれるんでしょうか…」

 

 

「大規模作戦にはうちも参加したからじゃないか?」

 

 

「あのクズ共が今更何をほざくのやら…」

 

 

吹雪が悪態をつきながらため息をつく。

 

 

「言っとくけど、ムカつくやつがいたからって深海棲器構えて突撃するんじゃないぞ」

 

 

以前室蘭にいたときに三日月たちが得物を持って上官を睨み付けるという事があったので、海原は一応釘を刺しておく。

 

 

「するわけ無いですよ、三日月や暁じゃないんですから」

 

 

(三日月はともかく、暁もそっち側なのか…)

 

 

今回連れてきたのが吹雪で良かった、とこっそり安堵する海原であった。

 

 

 

 

臨時司令官会議が行われる大会議室へ入ると、現在国内に存在している全ての鎮守府、駐屯基地の提督が集まっていた。

 

 

「うわ…すごい人数」

 

 

「全員集合みたいなことはFAXに書いてあったが、改めて見ると壮観だな」

 

 

そんな事を言いながらふたりは空いている席を見つけて適当に座る。

 

 

ここで吹雪は周りの席をキョロキョロ見渡す、ほとんどの提督が秘書艦を連れているが、その九割が戦艦、正規空母だった。

 

 

「(何でああも戦艦や正規空母に拘るんですかね)」

 

 

「(戦力誇示だろ、“オレはこんなすげー艦娘持ってるんだぜーいーだろー”、って事だと思うぞ)」

 

 

「(くっだらない…)」

 

 

吹雪はつまらなさそうに言って頬杖をつく、その時扉が開いて南雲元帥が入ってくる。

 

 

「今日は集まってくれて感謝する、今回君たちを召集したのは、先の大規模作戦で発見された新種の深海棲艦の事だ」

 

 

南雲がそう言うと、会議室中にざわめきが起こる。

 

 

(ベアトリスの事か…)

 

 

吹雪がその時のことを思い出す、あのベアトリスの砲撃の威力や新種の艦載機…牡丹雪にも散々苦しめられた。

 

 

「まずはこれを見てほしい」

 

 

南雲がプロジェクターを使いスクリーンに写真を投影する、そこには牡丹雪を発艦させるベアトリスの姿が映し出されていた。

 

 

「これは空母艦娘の偵察機を用いて撮影した写真だ、見ての通り、我々の知る深海棲艦には存在しない個体だ」

 

 

ベアトリスの写真を見た提督たちはざわめきを大きくする、戦艦棲艦や空母棲艦よりも人間らしい肢体、禍々しい口を開けて獲物を狙う人喰い箱(ミミック)のような艤装、今までの深海棲艦より一線を画する存在だということは明らかだった。

 

 

「この新種は艦載機を発艦させる事から空母だということが予想される、しかもその艦載機は我々の艦娘の艦載機の性能を凌駕すると思われる、おまけに配下の深海棲艦を統率するなど、我々と変わらない指揮能力があると考えていいだろう」

 

 

「深海棲艦に指揮能力!?」

 

 

「そんな事があり得るのか!?」

 

 

提督たちがあちこちで物議を醸し出す、深海棲艦に人並みの指揮能力があるなど今まで聞いたことがないのでこの事実は大きな驚きとなる。

 

 

「以上の事実を踏まえ、我々はこの新種を次のように名付ける」

 

 

南雲はプロジェクターを操作してスライドを次へ進める。

 

 

 

 

空母棲姫(くうぼせいき)

 

 

 

 

「…姫?艦ではないのですか?」

 

 

佐世保の提督が南雲に質問する。

 

 

 

「その理由はこうだ、他を圧倒する強固な力を持ち、己の統率力を用いて配下を指揮する、まるで女王蟻や女王蜂のようだとは思わんか?」

 

 

南雲の言葉に全員が押し黙る、確かに今までの話を統合すればベアトリスへの女王という比喩も頷けるものだ。

 

 

「よってこの新種には畏敬の念を込め『姫』という新たな艦種に制定し、名前は空母棲姫とする」

 

 

南雲はそう言うと、プロジェクターを操作しもう一枚写真を映す。

 

 

「続けてこちらは色丹島内部で戦っていた連合艦隊が撮影した写真だ」

 

 

その写真に写っていたのは空母棲姫に引けをとらないほどの化け物だった、頭から鬼のような二本の角を生やし、漆黒のワンピースを身に纏った深海棲艦、そして顔のない口だけの石像(ゴーレム)のような艤装を従えている。

 

 

「この新種も言葉を話すことができ、圧倒的な戦力と統率力で配下の深海棲艦を動かす新種だ、艦載機は持たず砲撃のみで攻撃してきた事から戦艦の可能性が高い、この個体も『姫』と認定し、このように名付ける」

 

 

 

 

戦艦棲姫(せんかんせいき)

 

 

 

 

「この空母棲姫と戦艦棲姫はこれまでの深海棲艦の上位にいる存在だと思われ、今後具体的な策を練る必要があると考える」

 

 

これを聞いた提督たちは揃いも揃って頭を抱える事になった、ただでさえ既存の戦艦棲艦や空母棲艦でも手を焼くのに、さらに上位の存在が現れるとなればこれまで以上の苦戦を強いられるのは必至だ。

 

 

「この『姫』の情報は後日電子書庫(データベース)にも配信するので、各自よく確認しておいてほしい、今日はこれで解散とする」

 

 

南雲のその言葉を合図に提督たちが会議室を後にしていくが、その足取りは皆重いものだった。

 

 

「しっかし、姫とはまた厄介なモンが出てきたな」

 

 

「今後の艦隊決戦に一石を投じるような話題でしたね」

 

 

海原と吹雪も台場に帰ろうと大本営の廊下を歩いていると…

 

 

「よぉ~海原」

 

 

どこかで聞いたことのあるクソムカつく声が聞こえた。

 

 

「…わざわざ俺に何の用だ」

 

 

振り向くとそこには横須賀鎮守府の司令官、佐瀬辺吉法(させべ よしのり)がエラそうに立っていた、傍らには秘書艦である大和型戦艦1番艦の大和を従えている。

 

 

 

ここで海原は吹雪の方をちらりと見る、吹雪は微かに震えていた、横須賀鎮守府は吹雪が所属していた鎮守府だ、しかし佐瀬辺の捨て艦戦法により轟沈してしまい、吹雪は台場鎮守府へとやってきた、つまりこいつは吹雪のトラウマそのものと言ってもいい。

 

 

 

「お前にお呼びがかかるなんて思ってもいなかったからな、せっかくの機会だし声でもかけてやろうと思ったんだよ」

 

 

「…そりゃどうも、じゃあ声をかけられたんだから満足だよな、俺は帰る」

 

 

海原は佐瀬辺への不快感を隠そうともせずに言う、これ以上こいつの前にいると吹雪を苦しめる事になる、そんな事をするわけにはいかないので海原はさっさとこの場から立ち去ろうとする。

 

 

「そう言わずに付き合えよ、特に吹雪(おまえ)には用があるんだよ」

 

 

佐瀬辺が自分に用?吹雪は佐瀬辺の発言の意図が理解できなかった。

 

 

「吹雪、横須賀に戻る気は無いか?」

 

 

 

「……は?」

 

 

今度こそ吹雪は訳が分からなくなる。

 

 

「台場鎮守府なんて世間から見捨てられた牢獄で一生を終えるより、主戦力鎮守府の最筆頭である横須賀で活躍した方がお前の為でもある」

 

 

「…その主戦力鎮守府の捨て艦戦法で私が轟沈したという事実をもうお忘れですか?仮に戻ったところでまた非人道的な方法で苦しめられるのがオチです」

 

 

吹雪は冷めたし視線で佐瀬辺を睨み付ける、自分の私利私欲で轟沈させたくせに戻ってこい?こいつの脳は腐敗を通り越してゴミになっているのではないかと吹雪は思った。

 

 

「それはお前の働き次第だ、俺に貢献するような働きを見せれば活躍の機会を与える、今までと何も変わらんだろう?」

 

 

佐瀬辺の言葉を聞き、はぁ…とため息をつく、この人は何も変わっていない、私利私欲のために艦娘を使い倒し、都合が悪くなれば捨てる、あの時から何一つ変わっていなかった。

 

 

「あなたはどこまでも腐りきった人間ですね、クソ過ぎて逆に尊敬できますよ」

 

 

吹雪がそう言うと、佐瀬辺がこめかみをひくつかせる、どうやら今の言葉は効いたらしい。

 

 

「お前、ずいぶん生意気な口を聞くようになったなぁ、駆逐艦の分際で…!」

 

 

 

佐瀬辺は吹雪の顎をつかんでクイッと持ち上げる、しかし吹雪はそれに臆することなく佐瀬辺を睨みつけていた。

 

 

 

「ケッ、生意気な目しやが…あいでででででで!!!!!!!」

 

 

「あんまりその汚らしい手で俺の秘書艦を触るのは止めてもらいたいもんだな」

 

 

見かねた海原が佐瀬辺の手を掴んで捻る。

 

 

「や、大和!止めさせろ!」

 

 

「ですがここで艤装を出しては…!」

 

 

「口答えするな!お前の友人のように輪姦されたいのか!」

 

 

佐瀬辺にそう怒鳴られると、大和は嫌々艤装を展開させ、海原に砲を向ける。

 

 

「今すぐその手を離してください」

 

 

大和は声を震わせながら海原に言った、その目からは“ごめんなさい”という感情が読み取れる。

 

 

(余程普段から脅迫を受けてるみたいだな…)

 

 

大和を不憫に思った海原は佐瀬辺の手を離す、それを見て大和は安堵するが、すぐにそれは絶望へと変わる。

 

 

 

「…今すぐ砲を下ろせ」

 

 

吹雪がナイフの深海棲器を大和の喉元へ突きつけたのだ。

 

 

大和はその吹雪の顔を見て恐ろしいと感じた、相手は駆逐艦、戦艦の自分にと比べても基礎能力(ステータス)はこちらが遥かに上だ、しかし吹雪の殺意に満ち溢れた眼孔で睨まれて、こいつには勝てない、下手をすれば殺されるとすら思ってしまう。

 

 

「……」

 

 

 

そんな吹雪の気迫に負け、大和は艤装を解除する。

 

 

「用は済んだか?それじゃあ俺はこれで失礼する」

 

 

海原はそれだけ言うと吹雪を連れてさっさと帰って行った、佐瀬辺と大和はその後ろ姿をただ見ている事しかできなかった。

 

 

「さっきのはやりすぎだぞ、大和だって本心でやってる訳じゃないんだ」

 

 

 

「うぅ…スミマセン、でも司令官が危ない目にあっててつい…」

 

 

(こいつもあっち側予備軍だな…)

 

 

そんな事を考えながら海原は駅へと向かっていく。




吹雪もやるときはやる。

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