艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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マックス編終了です。

さて、次回はどんな艦娘が出るでしょうか…


第65話「Z3の場合15」

マックスを連れて台場鎮守府へ帰投した吹雪たち、島風は帰投早々に高速修復材を使用してドック入りさせた、その甲斐もあり現在は意識を取り戻して元気に復活している。

 

 

「マックスにもこれがあるって事は、混血艦(ハーフ)か…」

 

 

摩耶がマックスを見て呟く、今回艦娘化させたマックスにも深海痕があった、場所は左足全体。

 

 

「そうですね、というか深海帰りの艦娘はだいたい混血艦(ハーフ)です」

 

 

「まぁ、お前らを見たら予想はつくけどな」

 

 

「これが混血艦(ハーフ)…マックスはどうなっちゃうのかしら…」

 

すでに吹雪たちを見ている摩耶はマックスの深海痕を見ても特段驚きはしなかったが、金剛は不安げな顔をしてマックスを見つめている。

 

それから約10分程でマックスが目を覚ました、やはり深海棲艦になっていた時のことは覚えておらず、島風をボコボコにしたことも覚えていなかった。

 

 

「マックス、あなたを置いていって本当にごめんなさい…」

 

 

起きてすぐに島風は改めてマックスに謝罪する、自分がつまらない意地を張ってマックスを置いていったせいで轟沈してしまつた、当然謝って許される事ではない。

 

 

「そんな…謝らないでください、それに先輩が私を疎んでいたことは知っていましたから」

 

 

「っ!!」

 

 

マックスにそう言われ、島風は固まってしまう、その事はマックス本人に一切伝えていないし、正直墓場まで持って行くつもりでいた。

 

 

「でも、それと同時に先輩が周囲からの期待に押しつぶされそうになって苦しんでいることも知っていました、そのために必死に努力していることも、周りから認め続けてもらおうとしていることも、そして、私が先輩にとって邪魔な存在になってきていることも…」

 

 

自身の内情をマックスに見透かされている事を告げられ、島風はブレザーの裾をぎゅっと握り締める、謝らなくていいと口では言ってるが、内心は嘲笑しているのだろうか…そんな風に考えてしまう。

 

 

「だから私はもっと努力しようと思ったんです、先輩と肩を並べられるくらいに強くなって、先輩の隣で戦えるようになって、私もみんなから期待されれば、先輩に寄せられる期待を少しでも私に向けることが出来れば、先輩の心の負担を減らせるんじゃないかって…」

 

 

「…えっ…?」

 

 

島風は目を剥いた、確かにマックスが必死に努力していることは島風も知っていた、しかしそれは、全部島風(わたし)の為だった…?。

 

 

「先輩は私にとっての目標だから、苦しむ先輩を見てるのは辛かった、だから先輩の力になりたかったんです、でも…全て裏目に出ていたんですね」

 

 

「…うぅっ…ひぐっ…」

 

 

気づけば島風は嗚咽を漏らしながら泣いていた、目の前にいる後輩がそこまで自分の事を想って行動してくれていた、しかし自分がそれに対してマックスにした仕打ちは…考えただけで罪悪感に呑まれそうになる。

 

 

「ごめん…ごめんなざい…」

 

 

「いいんですよ、全ては私が先輩の力になりたいっていう自己満足でやったんですから、でも、先輩は私にとって最高の先輩です、あなたの後輩であることを私は誇りに思います、この気持ちに嘘はありません」

 

 

限界だった、今まで堪えてきた感情が一気に爆発した、島風はマックスに飛びかかるようにして抱きつき、狂ったように泣き出した。

 

 

「マッグズうぅ!マッグズうぅううぅっ!!!!!!!」

 

 

そんな島風の髪を、マックスは何も言わずに撫でていた。

 

 

 

 

「…ごめんね、取り乱しちゃって」

 

 

その5分後、落ち着いた島風は少し恥ずかしそうに言う。

 

 

「いえ、先輩の可愛い所が見れてメシウマでした」

 

 

「ううううぅぅ!」

 

 

茶化すように言うマックスに島風はますます赤面する。

 

 

「それはそれとして、あなたたちが私を助けるために協力してくれたんですよね、どうもありがとうございます」

 

 

悶々としている島風をスルーしてマックスは海原に礼を言って頭を下げる。

 

 

「いやいや、俺たちはちょっと手を貸しただけさ、一番頑張ってくれたのは島風だ、お前を助けたいって一心で色々やってくれたぜ、改めてお礼言っとけ」

 

 

「それもそうですね、ありがとうございます、先輩」

 

 

「別に私は何も…」

 

 

「あらあら、本当はうれしいくせに恥ずかしがっちゃって」

 

 

「こ、金剛さん!」

 

 

そんな呉の仲間たちを見て、マックスは楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

その翌日、摩耶たちが呉鎮守府に帰る日がやってきた。

 

 

「じゃあなお前ら、元気にやれよ」

 

 

「はい、またお会いしましょう」

 

 

「今度は腹の贅肉引っ込めてきなさいよ」

 

 

「あとついでに二の腕のたるみも改善した方がいいと思いますよ」

 

 

「お前らは言葉の暴力というモノを学べ」

 

 

暁と三日月の暴言でハートブレイクな摩耶ががっくりと肩を落とす。

 

 

「それと、マックスも元気でな」

 

 

「また会おうね!」

 

 

「また会いに行くからね」

 

 

摩耶と島風と金剛がそれぞれ言う、呉組との話し合いの結果、マックスは台場鎮守府へ着任することになった、本人もそれを了承し、今日から正式に台場の一員である。

 

 

「はい、先輩も金剛さんも摩耶さんもお元気で」

 

 

マックスは少し名残惜しそうにしながらも、笑顔で金剛たちを見送る。

 

 

 

 

「改めまして自己紹介を、Z1型駆逐艦3番艦のマックス・シュルツです、これからよろしくお願いします」

 

 

提督室で挨拶を交わすマックスと吹雪たち、これで台場艦隊の艦娘は5体になった。

 

 

「うちの艦隊もだいぶ頭数が揃ってきたじゃないか」

 

 

目の前に並ぶ5体の艦娘を見て海原は嬉しそうに言う、吹雪しかいなかった最初期と比べれば大きな違いである。

 

 

そして毎度お馴染みの深海棲器選びだが、今回マックスが選んだのは3つ。

 

 

1つ目は“ワイヤー”、深海棲器製の5mほどのロープだ、それを鞭のように巻いて腰に下げるタイプのモノになっていて、必要な際はそれを伸ばして使用する、当然攻撃力は持っていない。

 

 

2つ目は“湾曲剣(シミター)”、三日月状に緩く湾曲した刀剣の深海棲器だ、刀身もそれほど長いものではないので小柄なマックスでも扱いやすい。

 

 

3つ目は“戦鎚(ウォーハンマー)”、文字通り大きなハンマーだ、打撃面にはミートハンマーのように細かい凹凸がついており、反対側は鋭く尖ったスパイクのようになっている。

 

 

「ワイヤーなんて何に使うの?」

 

 

「こういった武器だからこそ出来ることがあるんです、攻撃だけが武器ではないんですよ」

 

 

吹雪が聞くと、マックスはそう言って不適な笑みを浮かべる、何かしら考えがあるらしい。

 

 

「…そう言えば司令官、鎮守府の艦隊は独自で艦隊名を付けてるって摩耶さんが言ってたんですけど、本当なんですか?」

 

 

マックスの深海棲器を選び終えると、思い出したように三日月が海原に聞く。

 

 

「そう言えばつけてる鎮守府もあるな、本当だぞ、しかも造船所に届け出れば戦果報告にそれが載るらしい」

 

 

「なら、台場艦隊も艦隊名を付けられるんですか?」

 

 

「あぁ、付けられるぞ」

 

 

「なら何か考えようよ!」

 

 

ここで暁が食いついてくる、どうやら暁は中二要素に弱いらしい、特に反対意見も無かったので5体はそれぞれ案を出し合う。

 

 

(こういう光景も、何だか室蘭にいた頃を思い出すなぁ…)

 

 

あの時の事を思い出しながら、そう海原は思った。

 

 

「出来ました!」

 

 

5分後、アイデアがまとまったらしく、吹雪が代表で艦隊名が書かれた紙を海原に渡す。

 

 

「どれどれ…」

 

 

 

 

 

 

『Deep Sea Fleet』

 

 

 

 

「…ディープ・シー・フリート?」

 

 

「“深海艦隊”という意味です、深海帰りの混血艦の艦娘で構成された艦隊なのでそう名付けました、どうですか…?」

 

 

期待半分、不安半分で吹雪たちは海原の様子を伺う、艦隊名を見た海原はニッと笑うと…

 

 

 

「面白ぇじゃねぇか、採用だ!Deep Sea Fleet、これが今日から我が台場艦隊の艦隊名だ!」

 

 

海原がそう言うと、吹雪たちは嬉しそうにはしゃぐ。

 

 

台場鎮守府第一艦隊“Deep Sea Fleet”…ここに爆誕。




そう言えば瑞鳳をゲットしました。

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