艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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○艦これDSFこぼれ話2
・この小説の没設定として、「吹雪は艦娘の記憶を持ったまま深海棲艦になった存在で、かつて所属していた鎮守府に再び捕虜として戻ってくる」という設定があった、しかも吹雪はそこの提督とケッコンカッコカリしていて相思相愛だった。


大鯨の深海棲器のアイデアを書いていただいたみなさん、ありがとうございます!引き続き募集しているので、ネタが湧き上がって仕方がないという方は是非~


第72話「大鯨の場合7」

「建造失敗艦…?これってどういうことですか?」

 

 

「建造が上手くいかなかった艦娘の事を言うんだ、五体満足じゃなかったり、身体能力が著しく低かったり、様々な理由で艦娘としての活動が出来ないと判断されると“建造失敗艦”となる、普通は解体処分されるのがセオリーなんだが…」

 

 

「この大鯨は横須賀に着任している…と」

 

 

「何か裏があると考えた方が良さそうですね」

 

 

吹雪たちは顎に手を当て頭を捻る。

 

 

「横須賀に聞くってのも手だけど、台場の事情を勘ぐられると面倒なんだよなぁ…」

 

 

「なら、大鯨を建造した造船所に聞いてみるのは?」

 

 

響が一つの提案を出す。

 

 

「造船所か、確かにあそこには信用出来る人もいるし、横須賀に比べたらまだ希望は持てるな」

 

 

 

「へぇ、司令官にも“信用”なんて言葉を使える人間がいたのね」

 

 

「失礼だな暁、俺にだって信頼関係を築いてる人間のひとりやふたりいるんだぞ」

 

 

「はいはい、それでどんな人なの?」

 

 

相変わらず辛辣な暁に海原はつっこみを入れるが、暁はそれを軽く受け流して聞く。

 

 

「榊原っていう造船所の所長さんだ」

 

 

「所長とお知り合いなんですか!?」

 

 

「あぁ、といっても最初の頃はあんな性格だったから所長には嫌われてたんだけどな、でも三日月たちが轟沈してからちょくちょく造船所の慰霊碑に手を合わせてたら向こうも俺を認めてくれるようになったんだ」

 

 

「へぇ~、人脈って人の見かけによらないのね」

 

 

「お前本当容赦ないよな」

 

 

海原が再度つっこむが、そんなものどこ吹く風と暁はスルーする。

 

 

「でも、造船所は艦娘を建造している総本山みたいなとこだ、混血艦(ハーフ)の事を話して吹雪たちの安全が脅かされるともっと厄介だし、もう少し考えてみる事にするよ」

 

 

そう言うと海原は手帳に今後の方針案としてメモを取る。

 

 

「報告ありがとう、補給して各自休んでくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

吹雪たちはそのまま提督室を後にする。

 

 

「…榊原所長…か」

 

 

誰もいなくなった提督室で、海原は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

その日の夜、海原が大鯨艦娘化計画の具体案を練っていると、Deep Sea Fleetのメンバー全員が提督室に入ってきた。

 

 

「こんな時間にどうしたんだ?もう日付が変わっちまうぞ」

 

 

「司令官、お話ししたいことがあります」

 

 

そう言って海原を見る吹雪たちの真剣な眼差しに、海原はつい身構えてしまう。

 

 

「あの後Deep Sea Fleetで話し合ったんですけど、大鯨の事、榊原所長にお話しするべきだと思います」

 

 

吹雪たちの意見を聞いて海原は少し驚いた顔をする。

 

 

「…その結果お前たちが台場鎮守府(ここ)にいられなくなるような結果になっても…か?」

 

 

そう、海原が懸念しているのはそこである、造船所は艦娘を建造している場所…つまり艦娘の専門家が集まっているのだ、そんなところに混血艦(ハーフ)の事を相談しようものなら吹雪たちは造船所の実験動物(モルモット)にされてしまうだろう。

 

 

「そんな事、混血艦(ハーフ)になったときから覚悟してました、それに造船所の実験動物(モルモット)にされたとしても、司令官を恨んだりはしませんし後悔もしません」

 

 

「私たちも吹雪と同意見です、いつかこんな状況になるかもしれない、というのは常々考えてましたから」

 

 

三日月も真っ直ぐな目で海原を見る、そんな自分の部下たちを見て、海原はたくましくなったと素直に思う、しかし…

 

 

()()部下を失うかもしれない、という俺の気持ちは考えてくれないのか?

 

 

その言葉が喉まで出かかったとき、海原はすんでの所でその言葉を飲み込む。

 

 

何を自分勝手なことを考えているんだ、吹雪たちは深海棲艦になってしまった艦娘(なかま)を助けようとしてるんだぞ、そのためにあんな覚悟まで決めてるのに、こんな自分勝手な意見など言えるわけがない。

 

 

「…司令官?」

 

 

急に黙り込んで俯いてしまった海原に吹雪は心配そうに声をかける。

 

 

「あ、あぁ…すまない、お前たちの気持ちは分かった、明日にでも榊原所長に相談してみるよ」

 

 

「了解です!いいお返事が聞けるといいですね」

 

 

そう言うと吹雪たちは提督室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あいつらも相応の覚悟を持って俺に進言したんだ、吹雪たちを失いたくない…なんて独りよがりを言ってる場合じゃねぇよな、俺も覚悟を決めるときが来たって事だ!」

 

 

海原は両手で頬をパチン!と叩くと、大鯨艦娘化計画の具体案を再び練っていく。

 

 

 

 

 

 

「見てごらん●●、夕日が綺麗だよ」

 

 

そう言って彼は地平線に身を沈めようとしている太陽を指差す、別に私から言わせれば夕日など毎日見ているのだから別段珍しくもない。

 

 

「ははっ、確かに●●の言うとおりかもしれないね、でもこのご時世にこうして落ち着いて夕日を見れるなんてそうあることじゃない、この時間は貴重だよ」

 

 

確かに彼の言うとおり、こうして浜辺に座って呑気に夕日を眺めるなど滅多に出来ないことだ、特に()()()()()

 

 

「いつか、こうして毎日のんびり夕日を眺める生活が送れるといいね」

 

 

ぼんやりと海を見ながら言う彼に対して、そうですね、と私は返事をした。




最後の部分はアニメで言うCパート(エンディング後のおまけ)のようなものだと思ってください、いずれ本編と繋がる予定です。

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