艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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西方海域第4ステージ「アンズ環礁秘匿泊地攻撃」のボスとして登場する港湾水鬼が強すぎて泣けてきます、鬼って姫より弱い部類なんだけどなぁ…

現在建造で香取を2体ゲットしているんですが、鹿島がくる気配がありません、練習巡洋艦ってレシピあるのだろうか…


第74話「大鯨の場合9」

海原は榊原が来るまでの間に来客の準備を整えていた、その途中で吹雪たちが帰ってきたのだが…

 

 

「…SASUKEでもやってきたのか?」

 

 

「それで済むならまだ天国だよ…」

 

 

涼しい顔をしてお茶を飲む台場組に対し、舞浜組はぐったりした様子でソファに倒れ込んでいた、気力、体力ともに全て使い切っており、死屍累々(ししるいるい)とした光景が広がっている。

 

 

「サバイバル出撃とかあんなの無理に決まってるじゃない!下手すりゃ死ぬわ!」

 

 

「大丈夫よ、防死鎖(デスチェーン)付けてるんだから沈んでも助かるし」

 

 

「そういう問題じゃねぇ!」

 

 

朝潮が相当不満な様子で吹雪に詰め寄る、サバイバル出撃とは台場組がやっている訓練の一つだ、大破状態で出撃して戦闘を行い、“あ、やべ、もう沈むわ”的な生と死の境目を実体験で感じるというかなり綱渡りな訓練である。

 

 

ちなみに防死鎖(デスチェーン)というのは深海棲器で作られた鎖の事で、大破していない艦娘が大破した艦娘に繋げて轟沈を防ぐために使う、なので基本的にサバイバル出撃は大破艦娘と非大破艦娘のペアで行われる。

 

 

「それで、見えた?生死の瀬戸際は」

 

 

「見えてたまるか!」

 

 

朝潮はゼーゼーと肩で息をしながら吹雪につっこみを入れる、こんだけ喋れりゃ十分元気だな…と朝潮の剣幕をスルーしてのんきに考える。

 

 

 

 

 

それから一時間後、榊原が台場鎮守府へとやってきた、傍らには1体の艦娘を従えている。

 

 

「秘書艦ですか?」

 

 

「あぁ、最近忙しくなってきたからね、周りからも秘書艦を就けろって言われていたし」

 

 

榊原はそう言うと、秘書艦に挨拶をするように促す。

 

「はじめまして、陽炎型駆逐艦20番艦の『潮風(しおかぜ)』です」

 

 

そう言って潮風はお辞儀をする、群青色の髪にスカイブルーの瞳を持ち、白いセーラー服にホットパンツとかなり奇抜な格好をしている。

 

 

「おう、台場鎮守府司令官の海原だ」

 

 

 

海原も気さくな調子で挨拶を返すと、吹雪に榊原と潮風を提督室に案内させる。

 

 

「榊原所長、今更言うのもナンですが、今朝は挑発するような電話をしてしまいすみませんでした」

 

 

歩きながら海原は榊原に謝罪する、いくら交渉の席に彼を着かせようとしていたとはいえ、あれはやり過ぎだったか…?と海原の中でそんな思いがあった。

 

 

「別に海原くんが気にする事じゃないよ、それに君が言ったとおりお互い様だからね」

 

 

榊原は笑いながら言う。

 

 

海原たちは提督室に着くと、榊原と潮風に麦茶に振る舞う。

 

 

「さてと、まずはどちらのどこから話し始めるべきか…」

 

 

麦茶を一口飲んだ榊原が先に口を開く、これからお互いの秘密をカミングアウトするのだ、慎重を期さねばならない。

 

 

「なら俺から話します、その方が本題に入っていきやすいでしょう」

 

 

「助かるよ」

 

 

海原が話したのは台場鎮守府の大まかな現状だ、吹雪と最初に出会ってから今に至るまで、多少かいつまんだ部分もあったがほぼ全ての事を話した。

 

 

「…なるほど、つまり轟沈した艦娘が深海棲艦になり、再び艦娘に戻る…と、そしてその艦娘は深海棲艦との混血艦(ハーフ)になっている」

 

 

「そうなりますね、台場鎮守府の艦娘は全員深海棲艦でしたから」

 

 

「ふむ、それは中々興味深い話だね、艦娘が深海棲艦になるという事だけでも驚きなのに、さらに混血艦(ハーフ)として再び艦娘に戻るなんて…」

 

 

榊原は心底驚いたように言う、艦娘の権威である彼にも艦娘化は初耳だという。

 

 

混血艦(ハーフ)と言っていたけど、台場の艦娘たちは身体の調子は大丈夫なのか?」

 

 

「それに関しては“現状”問題ありません、深海痕が残るなどの後遺症のようなモノはありますけど、今のところは…」

 

 

「そうか、なら良いんだ、でも少し身体の様子がおかしくなったらいつでも言ってほしい、極秘で身体検査を行えるように取り計らうよ」

 

 

「なら、早速そのお言葉に甘えてもよろしいでしょうか…?」

 

 

海原と榊原の会話に入ってきたのは吹雪だった。

 

 

「身体検査を受けたい…ということかな?」

 

「はい、正直に言って今私たちの身体はどうなっているのかが分かりません、混血艦(ハーフ)になって身体のどこがどう変化しているのか、せめて今の状態が安全なのか危険なのか、それが分かれば今後の深海棲艦艦娘化や私たち自身の秘密を知るのに役立つと思うんです」

 

 

 

それを聞いた榊原は他の艦娘を見たが、みんな吹雪と同意見のようだった、そして榊原は次に海原を見る。

 

 

 

「所長が身体検査をしてくれるのであれば俺からもお願いしたいです、吹雪の言うとおり、俺も混血艦(ハーフ)になった彼女たちを知らなさすぎる」

 

 

「…分かった、身体検査は俺が責任を持ってやらせてもらうよ、詳しい日時が決まり次第造船所に招待する」

 

 

「助かります」

 

 

海原は榊原に礼をする。

 

 

「となると、海原くんが聞きたい大鯨の事と言うのは…」

 

「はい、台場艦隊が深海棲艦化した大鯨と会敵し、艦娘に戻すための方法を模索していたので、今回榊原所長に…」

 

 

「なるほど、そう言うことなら俺も全ての事を打ち明けよう、海原くんも危険を承知で打ち明けてくれたんだ、俺もそれに倣わないとな」

 

 

榊原はそう言うと、一呼吸の間を置いて話し始めた。

 

 

「まず結論から言えば、大鯨は電子書庫(データベース)の記述通り建造失敗艦だった、足腰と左腕の力が弱かったんだ、弱いと言っても歩けないほどでもなかったし、左腕もよほど重くない限りはモノを持つことも出来る、要は日常生活を送れる程度の体力はあったんだ」

 

 

「でも、艦娘として戦場に立てるだけの力は無かった」

 

海原がその続きを引き継ぐと、榊原は静かに頷いた。

 

 

「普通に暮らせたとしても戦えなければ意味がない、その結果大鯨は解体処分する事になったんだけど、横須賀のやつが大鯨を雑用係として引き取りたいって言ってきたみたいなんだ、解体するのはかわいそうだって」

 

 

「横須賀が?んなもん嘘に決まってますよ、せいぜいおもちゃにするのがオチです」

 

 

「俺も同意見だ、それに横須賀の暴挙を知っているうちの職員なら誰も首を縦に振らないだろう、()()()()()()な」

 

 

「…どういう事ですか?」

 

 

榊原の意図が分からず海原は首を傾げる。

 

 

「うちの職員事情を知っているあいつは自分を知らない新入りの女の子に話を持ちかけたんだ、不本意に解体されてしまう艦娘を救いたい…ってホラを吹いてね」

 

 

「そりゃあまた、横須賀も頭を使いましたね、利用された女の子が可哀想だ」

 

 

「轟沈の知らせを聞いたときはとてもショックを受けていたよ、しばらく自分を責め続けていたあの姿は今でも忘れられない」

 

 

 

とても悲しそうに語る榊原の話を聞いて、海原は横須賀に対しての怒りをふつふつと沸き上がらせる、ゲスな人間だと思っていたが、ここまで来ると逆に清々しさすら感じる。

 

「ん?ということは、所長は大鯨の引き渡しに関わっていなかったという事ですか?」

 

 

「あぁ、その女の子の報告で初めて知ったよ、そしてその後にすぐ轟沈してしまったから、横須賀でどんな扱いを受けていたかは俺にも分からないんだ」

 

 

「…そうだったんですね」

 

 

一通りの話を聞いた海原は胸の前で腕を組む、大鯨が横須賀で非人道的な扱いを受けていたのは確定でいいだろう、ならば“面影”と会話が出来れば、助けられる望みはある。

 

 

「時に海原くん、ひとつ確認があるんだが…」

 

 

「何ですか?」

 

 

「君の話によると、艦娘化はその艦娘の未練や思い残し、何か精神的なわだかまりを落とす事で起きる現象みたいだね?」

 

 

「少なくともその可能性は高いです、台場艦隊も心の憑き物が落ちたときに艦娘化しましたから」

 

 

「ふむ…そうか…」

 

 

そう言うと榊原はPitの電子書庫(データベース)を起動させ、ディスプレイをスワイプで操作していく。

 

 

「となると、大鯨の心のわだかまりを落とすのは、少し苦労するかもしれない」

 

 

そう言って榊原は電子書庫(データベース)の大鯨のページを開き、そのもうひとつの機密情報(マスクデータ)を表示させる。

 

 

○轟沈理由:自沈(じさつ)




アーケードのアップデートで陽炎型の陽炎、不知火、黒潮が追加されるみたいですね、不知火はお気に入りの艦娘の1体なので是非ゲットしたいです。

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