艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
あと軽巡棲鬼は見るけど姫は見たこと無いです、こっちはどっかにいそうなんですけどねぇ…
大鯨にとって最もつらい出来事が起こったのは、彼女が横須賀に着任してから5ヶ月が経った頃だった。
「大鯨、今何て言った?」
大鯨の報告に耳を疑った佐瀬辺は再び説明を求める。
「…妊娠…しました…」
大鯨はお腹をさすりながら絞り出すような声で言う、大鯨着任から1ヶ月が経った頃から佐瀬辺の暴力は性的なモノになっていた、その結果大鯨は佐瀬辺との子供を身ごもってしまった。
ここで補足しておくと、人間の身体を
そこで造船所は妥協案として生殖機能の活動を極限まで抑えることにした、排卵などは行われるが生理が起こる規模のモノでもないし、万が一性行為などがあっても妊娠する確率は極めて低いだろうと判断された。
しかし、目の前の大鯨はそのミリ単位の確率に当たってしまったらしい。
「…今どれくらいだ?」
「…多分、3ヶ月弱だと思います」
「…そうか」
佐瀬辺はそう言って頷くと、おもむろに立ち上がって大鯨に近づいて掴みかかる。
「へっ!?提督!?」
「じっとしてろ」
佐瀬辺は大鯨の身体を抱えて机の上に座らせると、穿いていたタイツを破って強引に下着を脱がす。
「きゃああぁぁ!!!!やめてください!!!!!!」
「黙ってろ、気が散る」
佐瀬辺は大鯨の顔を殴りつける、次に大鯨の両足を開かせて、それぞれの足を紐で結んで固定する、女性として最もクリティカルな部分が丸見えになる開脚の姿勢にされた。
「ーーーーーっ!?」
羞恥心で顔を真っ赤にした大鯨は口をパクパクさせているが、そこから言葉が出ることは無かった。
「失礼します提督」
その時、提督室のドアがノックされて大和が入ってくる。
「な、何してるんですか提督!?」
入って早々に衝撃的な光景を見た大和は目を剥いて驚愕する。
「こいつが妊娠しちまったみたいだからな、然るべき処置をするんだよ」
「に…!?」
そう言って佐瀬辺は戸棚から小さめの瓶を取り出す。
「…それは?」
「硫酸だ、これを大鯨の
「っ!?」
それを聞きいた大鯨は全身から血の気が引くのを感じた、硫酸は皮膚を火傷させる程の強酸だ、それを
「や…やめてください提督!どうかそれだけは!」
「しょうがねぇよな~、孕んじまったお前が悪いんだ、自業自得ってやつだよ」
佐瀬辺は瓶の蓋を開けて大鯨に近づく。
「大和、お前は何も見なかった事にしてここから立ち去れ、他言無用だ」
「え……でも……」
「早くしろ、お前も俺に孕まされたいか?何なら今ここでヤってもいいんだぜ?」
大和は何も言えずに俯いていた、大鯨を助けなくては、心の中ではその思いで一杯なのに、それに身体が応えてくれない、足を一歩踏みだそうとする度に身体がガタガタと震え、嫌な汗がダラダラと流れ落ちる。
「助けて…ください…大和さん…!」
「っ!!」
突然大鯨に助けを求められ、大和は一瞬飛び上がる。
「お願い…します……助けて…!」
涙を流して身体を震わせる大鯨が大和に懇願する、でもここで事を起こせば、自分はまた地獄の日々に…
「…ごめん…なさい…」
大和は足の震えになんとか耐えると、回れ右をしてドアの方へ向かう。
「う、嘘…!?やだ、やだよ!大和さん行かないで!行かないでお願い!助けて!助けて!お願いだから!」
大和は大鯨の悲鳴にも似た声に耐えられなくなり、その場から逃げるようにして提督室を出て行く。
「行かないでえええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!」
(ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!)
大和は心の中で念仏のようにごめんなさいと唱えながら、全てから逃げるようにして廊下を走り出す、狂っているとしかいいようのないあの空間から、そして我が身可愛さに大鯨を見捨てて逃げ出した罪から逃げるように…
「ぎゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その直後、大和の鼓膜を引き裂かんばかりの大鯨の悲鳴が提督室から響き渡る。
その声から逃げたくて、その現実から逃げたくて、大和は走るスピードを上げていく。
「ゲボェ…!オボエェェェ…!」
その足でトイレに駆け込んだ大和は胃の中身を盛大にぶちまけた、胃の中が空になってもなお吐き気が治まる事は無かった。
「ごめんなさい…!私が…私のせいで…!」
その時、大和は自分の心が壊れる音を聞いた気がした。
その後、大鯨はドックに放り込まれ身体の隅々まで元通りになった、腹の中の胎児がどうなったかは言うまでもない。
◇
それからも佐瀬辺の肉体的、性的な暴力は続いた、日に日に大鯨は心をすり減らし続け、ついに限界を迎えた。
時間は丑三つ時、横須賀鎮守府の埠頭に大鯨は立っていた、手に持っているカゴの中には工廠から持ち出した魚雷が大量に入っている。
艤装を装着した大鯨は海の上に浮かび、そのまま少し進んでいく、思えば初めて艤装を装着して海上に浮かんだが、思いのほか上手くいった。
大鯨はカゴから一本のプラスチックボトルを取り出して蓋を開けると、何のためらいもなく中身を頭から被る、大鯨が被ったのはメタノールをゲル状にしたもの…いわゆる着火材だ、主にアウトドアで炭に火をつけるための補助剤として使われており、これは特に発火性の強いものだ。
「…あとはこれを使えば…」
全身着火材まみれになった大鯨が次に取り出したのは魚雷だ、これを零距離で何本も爆発させれば直撃した艦娘はどうなるかなど想像しなくても分かる。
大鯨は
「大鯨ちゃん!」
魚雷を使おうとしたまさにその時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「…何ですか?大和さん」
振り向くと、そこには息を切らせた大和が桟橋に立っていた、深夜の見回りをしている途中に外へ出て行く大鯨を見つけて全速力で追ってきたのだ。
大鯨と目を合わせた大和はビクッと身体を震わせる、その目は完全に濁りきっており、絶望以外の何物も感じられなかった。
「大鯨ちゃん、あなた何をするつもりなの!?」
「…見れば分かるでしょう?死ぬんですよ」
「ダメよ!そんなの絶対にダメ!」
大和は何としてでも大鯨の
「大和さんにそれを言う資格があるんですか?我が身可愛さに私を見捨てたあなたに」
「っ!」
その声は冷たいナイフのように鋭く大和の身に突き刺ささる。
「今まで私に味方するような態度をとってましたけど、結局は大和さんも他のみんなと同じ、薄情者です」
「それは…!」
「この偽善者」
決定的な言葉を突きつけられ、大和は完全に固まってしまった。
「…さようなら」
「ダメえええええぇぇぇぇ!!!!!!」
大和が艤装を装着して海上に飛び出すが、全てが遅かった。
直後、起爆した魚雷が一斉に弾け飛び、凄まじい炎と爆風が大鯨の立っていた所に発生する。
「大鯨ちゃん!大鯨ちゃん!」
複数の魚雷の誘爆効果と着火材の燃焼効果で炎の勢いは強くなり、なかなか大鯨のいた場所に近付けなかった。
しかし、ここで炎が収まるのを待っていては大鯨は助からない、大和は意を決して炎の中に飛び込む、艤装の効果があると言えどもその皮膚には火傷が広がっていく。
「……いた!」
ようやく収まりつつある炎の中を探して十数秒、大和の手が大鯨の手に当たるのを確認する、大和はそれを掴むと思い切り引き上げた。
「大鯨ちゃん!」
しかし、その手は恐ろしいほどに軽く、ひどくあっさりと海中から姿を現した。
「…え…」
大和は確かに大鯨を引き上げた、彼女の
「嫌ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
喉が潰れんばかりの大和の絶叫が、深夜の海に轟いた。
その翌日、潜水艦娘による捜索が行われたが、大鯨は発見できず、
Android6.0へのアップグレード通知が来たんですけどやるべきか否かで迷ってます。