艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そう言えばニュースで海上保安庁が尖閣諸島で中国の漁船乗組員を助けたってやつを見たんですけど、真っ先に雷と電の史実を思い浮かべた自分は艦これ脳だと思います(雷と電は敵の船員を救助したという史実があるらしいですね)。
「あんな事があった直後なのにすみません…」
「気にしないでくれ、元々招待すると言ったのは俺だからね」
榊原はそう言って静かに笑う、軍法会議という名の海原糾弾会が終わった後、榊原が以前約束していたDeep Sea Fleetの身体検査の話を持ちかけたので、海原はちょうど良いと乗っかることにした。
「それじゃあ検査に入ろう、本当に検査するのが俺で良いのかい?今からでも女性職員を呼べるよ?」
榊原は検査室に入る前にもう一度確認する、検査中は服を脱いでの全裸で行うので、当初の榊原の予定では検査には女性職員の風音を使うつもりでいた、しかし吹雪たちはそれを断り榊原を希望した。
「言い方悪くて申し訳ないんですけど、造船所内で信頼できる人が榊原所長しかいないので…それに榊原所長は艦娘にそういった事はしない人だというのは初めて会ったときに分かりましたから」
「別に謝るような事じゃないよ、顔見知りかつ信用できるような人に任せたいと思うのは当然のことだ」
吹雪の態度に榊原は怒るような素振りもなく笑って流す。
「それじゃあ早速検査に移ろうか、みんな検査室に入ってね」
榊原が吹雪たちを検査室に入れ、使用中の赤色灯を点灯させる。
「海原くんには申し訳ないんだけど、検査が終わるまでここで待っていてほしい、一応企業秘密の情報も少なからずあるからね」
「大丈夫ですよ、その辺は弁えてるつもりなんで」
海原の言葉に榊原は短くお礼を言うと、検査室のドアを閉める。
「…とは言ったものの、かなり暇を持て余しそうだな…」
短時間ですぐに終わるようなモノではないというのは薄々分かっていたが、いざこうして始まると案外暇になるものである。
「ゲーム機でも持ってくれば良かったか…」
などと愚痴に近い何かをこぼし始めた時…
「…あの~」
ふと、誰かに声をかけられた気がした、海原がキョロキョロと周りを見渡すと、通路の向こうにひとりの少女が立っていた。
「君は…」
海原はその少女をじっと見る、小豆色の髪を青いシュシュで結び、白を基調に青いラインが入ったセーラー服を着ている、下半身がスカートではなくホットパンツという出で立ちから活発そうな印象を与える。
その少女は海原のもとまで歩いて近づくと…
「初めまして、横須賀鎮守府所属、青葉型重巡洋艦1番艦の『
少女…青葉はそう言って深々と頭を下げて挨拶をする、艦娘だったのか…と海原は少なからず驚きの感情を抱く、しかし海原はもっと驚くべき部分をみつけてしまった。
青葉の顔や手足には、青黒いアザや血を滲ませた傷が痛々しく広がっていたのだ。
「その傷、まさか佐瀬辺のヤツに…」
海原の言葉に青葉は何も言わずに頷き、肯定の意を示す。
(…本っ当にろくでもねぇヤツだ)
海原はそう心の中で毒づく、本当は口に出して言ってしまいたかったが、いくらクズな人間でも自分の所の提督を悪く言われては良い気はしないだろうと思い、それを思い留めた。
「批判したければして下さって構いません、おそらく海原司令官と青葉の考えていることは同じだと思いますので…」
しかしそれは要らぬ気遣いだったようで、青葉はあっさりと佐瀬辺への批判発言を認めてしまう。
「なら言わせて貰うが、佐瀬辺はどうしようもないくらいのクズだな」
「それには青葉も心の底から同意します」
海原の発言をあっさりと認めてしまうあたり、佐瀬辺の信頼と人望の無さが伺える。
「それで、青葉はどうしてこんな所に?まさか佐瀬辺にスパイを頼まれたとか?」
「ち、違います!断じてそんなことはありません!今回ここに来たのは青葉の独断です!本当です!」
青葉は慌てて両手を振ると、佐瀬辺絡みでは無いことを訴える、その目は懇願と不安でない交ぜになっており、今にも泣き出しそうであった。
「そんなに必死にならなくても君を疑ったりしないよ、青葉の独断だとすると、どんな目的が?」
海原が青葉に問いかけると、青葉はえーと、そのー、と言い辛そうに口ごもったが、やがて口を開いた。
「…今日の軍法会議で使われた写真なのですが、あれは青葉が撮ったものなんです…」
青葉は重巡洋艦の中でもトップクラスに好きなキャラです。