艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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艦娘の火力ステータスの反映は150までで、それ以降は切り捨てられる「火力キャップ」という仕様があるみたいですね。

つまり艦娘の火力は150がMAXという事になるわけですが 、それで戦艦棲姫の装甲とか抜けるモンなんですかね…?


第87話「雪風の場合6」

『97%…!?これじゃあ混血艦(ハーフ)というよりほぼ深海棲艦じゃないですか!』

 

 

レポートを見た海原の目は驚愕で見開かれていた、いったい何故吹雪だけこんなにも汚染率が高いというのだろうか…?。

 

『うん、それはもちろん俺も気になった、でも深海棲艦だったときの記憶は艦娘には無いって言うし、吹雪は一番最初に台場に配属された艦娘みたいだから僚艦もみんな吹雪の事を知らない、だから君に聞きたい、吹雪は最初どんな様子だった?』

 

 

『最初…?』

 

 

榊原に言われ海原は記憶の糸を辿る、しかしここで海原は気付いた、吹雪に関してもっとも早く気付くべき所に。

 

 

吹雪が深海棲艦だった時を、海原は一度も見ていない。

 

 

海原と吹雪が最初に出会ったのは鎮守府敷地内の浜辺だ、吹雪はそこで倒れており、それを助けたのが全ての始まりだったと言って良い。

 

 

でも、吹雪はその時から艦娘だった、それ以降も深海棲艦になるような事もなく、ずっと艦娘の姿のままで今日まで過ごしてきた。

 

 

(吹雪も混血艦(ハーフ)だって言うなら、あいつはいつ深海棲艦から艦娘に戻ったんだ…?いや、まさか吹雪は、混血艦(ハーフ)にすらなっていない…?)

 

 

ここで海原はひとつの可能性を思いつく、まず…

 

 

①艦娘が轟沈する

 

②何らかの原因で深海棲艦となる

 

混血艦(ハーフ)として再び艦娘に戻る

 

 

吹雪たちのような混血艦(ハーフ)が生まれる手順が上の三段階だとしよう、これに倣うとDeep Sea Fleetは③に該当するはずだ。

 

 

だが、もしも吹雪が②の状態で止まっているのであればどうだろう?何かの理由で艦娘としての姿を残した状態で深海棲艦となっているのであれば、深海棲艦としての吹雪を見ていない事やこの浸食率にも合点がいく。

 

 

流石に極論過ぎると海原も思っているのだが、海原にはそれなりに心当たりがあった。

 

 

その最たる例として吹雪には深海痕が無い事が上げられる、ハチや暁、最近のメンツで言えば大鯨も、Deep Sea Fleetの全員が混血艦(ハーフ)であることが窺える深海痕がある、しかし吹雪には深海痕のようなアザなどは一切無い、それは吹雪本人や全裸枕殴りをやった三日月などが証言している。

 

 

深海棲艦時代の証明が不可能なことや深海痕が無いこと、そしてこの異常に高い汚染率、これらの材料が揃ってしまうと、どうしても先ほどの極論が頭に浮かんでしまう。

 

 

『…吹雪は、俺と初めて会ったときから艦娘の姿をしていました、深海棲艦時代の記憶も深海痕も持たない状態で…』

 

 

 

『…そうか、なら考えたくない可能性だが…』

 

 

それを聞くと、榊原は顔をしかめて唸るように考え込む、おそらく彼も海原と同じ結論にたどり着いたのだろう、しかしそれは何よりも考えたくない結論であり、何よりも現実に起きてほしくない可能性…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪は、艦娘の皮を被った深海棲艦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実際憶測の域を出てないけど、妙に現実味があるから怖いんだよな…」

 

 

 

その日の夜、海原は提督室の椅子に腰掛けながら昼間の榊原との会話を思い出す、吹雪たちの身体のことを知れたのは良いことだ、ひとまずは安全と言うことが分かったし、定期的に検査をしてくれるのであれば有事の際に対応しやすい。

 

 

しかし、それと同時に怖くもあった、吹雪がこのまま深海棲艦になってしまうのではないか、以前そんな日が来るのを覚悟しなければいけないと感じたことがあったが、何だかそれがぐっと近くなったような気がする。

 

 

『吹雪本人にはこの事を伝えていない、俺よりも海原くんの方が彼女を混乱させる事が無いだろうからね』

 

 

「確かにそうかもしれませんけど、そう易々と伝えられるモンじゃないですって…」

 

 

昼間の榊原の言葉を思い出して、海原はため息をつく。

 

 

 

 

 

その建物を一言で言い表すなら“崩れかけの研究施設”と言ったところだろうか、大きさは一般的な学校の校舎の半分ほど、鉄筋コンクリートで作られたその建造物は遠目から見れば頑丈そうに見えるが、実際に中に入ってみると所々コンクリートの崩落が目立ち、鉄筋が露出している箇所も少なくない。

 

 

「大きめの地震とか来たらぽっくり崩れそうよね、あの方は何だってこんな建物を本拠地にしているのかしら、まぁ雨風は凌げるから問題は無いけど…」

 

 

そうボヤきやがらベアトリスは分厚い書類の束を両手に抱えて廊下を歩く、色丹島の仮説拠点を離れてからはここの本拠地に戻ってきている。

 

「ベアトリス、ちょっといいかしら?」

 

 

名前を呼ばれたベアトリスが声のする方を向くと、グレーのワンピースを来た黒髪の少女が立っていた。

 

 

「どうされました?」

 

 

歩兵級(ポーン)の新型の開発に成功したってシャーロットたちが言っていたから、その詳細を聞かせてもらおうと思って」

 

 

「それでしたら……こちらが資料になります」

 

 

ベアトリスは紙の束の中から器用に目的のモノだけを抜き出して少女に渡し、少女はありがとうと言ってその資料に目を通す。

 

 

「ふむふむ…全体的に攻撃力と防御力の強化、主兵装のグレードアップが主なのね」

 

 

「はい、歩兵級(ポーン)は攻めも受けも貧弱というのが最大の欠陥でしたから、これを期にパワーアップを図ろうかと」

 

 

「なるほどね、ところでベアトリス、歩兵級(ポーン)の機体のここに付けられているこれは…?」

 

 

そう言うと少女は歩兵級(ポーン)の下腹部に新たに取り付けられているパーツを指差して疑問を口にする。

 

 

歩兵級(ポーン)は歩いてこその歩兵級(ポーン)ですから、その真骨頂というわけです」

 

 

ベアトリスの説明を聞いた少女は少し驚いたような顔をしたが、やがて“なるほどね”と納得したような表情になり、資料をベアトリスに返す。

 

 

「実戦投入はいつになるの?」

 

 

「近日中には量産を進めて放つ予定ですよ、地下水路を使って進軍させ、秋葉原のホコ天に放つのを予定しています」

 

 

「分かったわ、思う存分やりなさい」

 

 

少女が無邪気な笑顔で親指を上向きに立てると、ベアトリスはアイアイサー!とおちゃらけたリアクションを取って廊下の向こうに消えていく。

 

 

「…ベアトリスの新型なら、人類掃滅計画にも進展が期待できるわね」

 

 

 

あどけなさの残る可愛らしい見た目には到底似合わない内容を呟きながら、少女は口の端をつり上げて嗤う。

 

 

 

「人間は皆殺しにしなければならない、それがあの人の願いなら…ね」

 

 

 




Android版の本格実装が開始されたみたいですけど、Android端末からのアカウント登録がまだ出来ないので足踏み状態が続いております。

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