艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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今更ですけど、甲標的って「魚雷」ではなく「その他」のカテゴリフォルダに入ってるんですね、魚雷のフォルダ何回見渡しても無かったので軽く焦りました。

装備と言えば、特定の艦娘が持ってる装備を別の艦娘に直接付ける、受け渡しみたいな方法が欲しいと思う今日のこの頃、いちいち外して別の艦娘に付けるのが面倒なんですよね…


第89話「雪風の場合8」

突然の吹雪の変化にDeep Sea Fleetの全員が言葉を失っていた、目の前の吹雪が突然深海棲艦のようになってしまい、戦闘中だということも忘れて吹雪に見入ってしまう。

 

 

「っ!」

 

 

吹雪はそんな僚艦の視線を無視し、敵艦隊へとフルスロットルで突っ込む。

 

 

「あ…!吹雪さん!」

 

 

三日月が吹雪を呼び止めるが吹雪は聞く耳を持たない、両手に手甲拳(ナックル)を装着すると、先ほど自分の腕を喰った駆逐棲艦に肉薄する。

 

 

「ーっ!」

 

 

吹雪が拳を振りかぶり、駆逐棲艦に右ストレートをお見舞い、その一撃は駆逐棲艦の装甲を紙の如くぶち破り、一発撃沈にさせる。

 

 

続いて吹雪が向かったのはいまだ健在の重巡棲艦3体、いずれの重巡棲艦もこちらに主砲を向けているが、それが火を噴くより前に吹雪がナギナタで腕を切り落とす。

 

 

肢体を失って苦しそうに悶絶している重巡棲艦に吹雪は欠片の同情心も見せず、容赦なく腕を、足を、尻尾を、首を切断していく。

 

 

「沈め、量産型風情が」

 

 

目にも止まらぬ早業のナギナタさばきで重巡棲艦を全て倒した吹雪は、残った戦艦棲艦2体に突っ込む。

 

 

悪鬼羅刹の如く重巡棲艦を屠った吹雪に若干の恐怖を覚えた戦艦棲艦は、近付かれる前に吹雪を倒そうと主砲から砲弾を撃つ。

 

 

「…つまらない」

 

 

しかし吹雪は持ち前の砲弾切りのスキルでそれらを全て叩き落とす、それを見た戦艦棲艦は顔を驚愕の感情で染めるが、吹雪は敵に驚かせる暇さえも与えなかった。

 

 

戦艦棲艦に肉薄した吹雪は手甲拳(ナックル)で戦艦棲艦の顎にアッパーを食らわせる、その衝撃で顎の関節が砕け、戦艦棲艦は口を閉じる事が出来なくなる。

 

 

その開いた口に吹雪は魚雷を無理やりねじ込む、ねじ込んだ衝撃で前歯が砕けようと、魚雷の太さに耐えられず喉の内側が裂けようとお構いなしに魚雷をねじ込む、その時の戦艦棲艦は“苦しい”という表現さえ生易しいと思えるほどの苦悶の表情を浮かべていた。

 

 

ここまでに掛かった時間は正味10秒、戦艦棲艦を殺すという目的の前準備を果たした吹雪はなんの逡巡も無しに魚雷を爆発させる、身体の内側から破裂した戦艦棲艦は水を入れすぎた水風船のように弾け飛び、その中身を撒き散らしながら沈んでいく。

 

 

その勢いのままに吹雪は旗艦(リーダー)の戦艦棲艦に肉薄、僚艦のむごい死に方をすぐそばで見た戦艦棲艦は吹雪に怯えるように半歩後ろに下がる。

 

 

しかしそれで吹雪が攻撃を躊躇うわけがなく、一切の情け容赦無く戦艦棲艦を手甲拳(ナックル)で殴りつけていく、しかも今の吹雪は戦艦棲艦の主砲射程距離外まで接近しているので敵の反撃を受けることがない、敵の立場からすれば厄介なことこの上ない相手である。

 

 

そんな状況で吹雪は戦艦棲艦を殴る、殴る、ひたすらに殴る、前歯が砕け、鼻が折れ、額が割れ、目が潰れる、もはや戦艦棲艦は戦闘が出来る状態ではないが、それでも吹雪は攻撃を止めない。

 

 

「呆気ないわね」

 

 

最後に吹雪がナギナタで戦艦棲艦の首を落とし、敵旗艦(リーダー)を撃沈させる。

 

 

 

たった1体で重巡棲艦3体に戦艦棲艦2体を落とすという異常な結果を、三日月たちは唖然としながら見ていた。

 

 

 

 

もうどれくらいの間戦い続けただろうか、虚像天体(プラネタリウム)に浮かぶ星の光に照らされながら吹雪はもう一人の吹雪に向かってナギナタを振りかざす。

 

 

もう一人の吹雪…裏吹雪は吹雪と全く同じ武器を持って吹雪と相対する、吹雪も裏吹雪も戦闘力は均衡しており、本当に自分自身と戦っているようであった。

 

 

でも、目の前の裏吹雪には何が何でも勝たなくてはいけない、記憶が無くても魂がそれを訴えかける。

 

 

吹雪はナギナタを裏吹雪の腹に向かって横一線に振るが、裏吹雪はそれを紙一重でかわし、裏吹雪がそれの反撃として突きを繰り出す。

 

 

裏吹雪の突き攻撃が吹雪の鳩尾に命中、吹雪は肺の中の空気を全て吐き出し仰向けに倒れる。

 

 

吹雪はすぐさま立ち上がろうと両腕に力を入れるが、それよりも早く裏吹雪が太刀をこちらに向けて振り下ろしていた。

 

 

吹雪は慌ててナギナタを胸の前で構えて防御の態勢を取る、が…

 

 

裏吹雪の攻撃動作は吹雪に命中する一歩手前という所で突然止まった、ビデオを一時停止するかのごとく突然。

 

 

攻撃を止めた裏吹雪は虚像天体(プラネタリウム)の星空を見上げると、何かに納得した様子で口の端を吊り上げて笑い…

 

 

『今日はここまで…ね』

 

 

そう言って、空間に溶けるように消えていった。

 

 

一体何が…と思った吹雪は身体を起こそうとしたが、突然吹雪の意識が遠ざかっていく、電源コードをいきなり抜かれたパソコンのような感覚だった。

 

 

遠ざかる意識の中、吹雪の耳はどこからともなく聞こえてくる声を捉えていた。

 

 

『また会いに行くわね』

 

 

それを最後に、吹雪は意識を手放した。

 

 

 

 

「…うぅ?」

 

 

意識が戻った吹雪が最初に見た光景は見慣れた天井だった、どうやら自分は自室のベッドで寝ていたらしい。

 

 

「…私、確か…」

 

 

吹雪はまだ少しぼーっとする頭で記憶を辿る、たしか出撃中に駆逐棲艦に腕を食われて…

 

 

「…そうだ!腕!」

 

 

吹雪は慌てて自身の右腕を見るが、そこには食われる前と同様ちゃんと腕がついていた。

 

「夢…じゃないよね、流石に」

 

 

吹雪は右腕を撫でながらボソッと呟く、腕を食われる前に出撃していたのは確かだし、それも含めて全て夢…などとは考えられない。

 

 

「あの後みんなが鎮守府まで運んでくれたんだろうけど、その間に何があったんだろう…?」

 

 

吹雪は海馬の奥底から記憶を掘り起こそうとするが、腕を食われて気を失った後のことは何一つ覚えていなかった、唯一覚えている事と言えば…

 

 

「…またあそこだった」

 

 

裏吹雪と戦っていた記憶のみだった。

 

 

「また会いに行くって言ってたけど、本当に何者なんだろう…」

 

 

吹雪は眉間にしわを寄せて腕を組むが、何一つ答えなど出なかった。

 

 

「…そろそろ司令官に相談したほうがいいかもね」

 

 

そう言うと吹雪はベッドから降り、提督室に向かうために自室を出た。




ウォースパイトの英語がめちゃくちゃ流暢で驚きました。

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