艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そう言えば「雪風の場合11」でpixiv版が100話に到達しました、こっちもそろそろですね。
「…ん?」
Deep Sea Fleetが移動を始めようとした時、吹雪は地面が揺れるのを感じた。
「ねぇ、今地面揺れなかった?」
吹雪が三日月たちに問いかけると、他のメンバーも気づいたらしい。
「そう言えば、微かだけど揺れたわね」
「地震…でしょうか?」
「向こうで主力部隊が撃ち合ってるから、その時の衝撃が来てるんじゃない?現に今も断続的に揺れてるし」
暁の言うとおり、その正体不明の地面の揺れは今も断続的に感じている、しかし主力部隊が戦闘を行っているとはいえ、ここは流石に距離が離れすぎている、それに吹雪はもっと別の違和感を感じていた。
「でもこの揺れ方、もっと直接足元に来るような、それこそ地面の下から誰かが叩いてるような感じが…」
吹雪がそこまで言ったとき、“それ”は確かに吹雪の視界に入ってきた、今Deep Sea Fleetがいるアスファルトのあちらこちらに亀裂のようなモノが広がっているのを、それはまるで、氷の張った池の上に人が乗って、それが割れて池に落ちるあの光景のような…
「っ!!」
吹雪は全身の血管にドライアイスをぶち込まれたような悪寒に襲われる、もし自分の推測が正しければ、ここにいたら死ぬ。
「全員ここから離れて!」
そう叫ぶと同時に吹雪はここじゃないどこかに向かって走り出す。
「えっ!?ちょっと吹雪さん!どういうこと!?
あまりに突然の吹雪の行動に暁たちはついていけず、すぐに動けなかった。
「床が…いや、地面が抜ける!」
吹雪のその言葉で他の全員もようやく今の状況を理解して顔を青くする、未だに止まない地面の揺れ、そしてどんどん増えていくアスファルトの亀裂、これらの状況から導き出される未来は…ひとつしかない。
刹那、アスファルトの亀裂がわずかに広がったかと思うと、そこからアスファルトが…地面が崩落していく。
「「うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」」
そこからはまさに一瞬の出来事だった、穴の大きさは一気に10m程にもなり、誰よりも先に駆け出した吹雪さえも突如地面に開いた穴に飲み込まれて落ちていく。
これから奈落のそこに落ちていくのだろうか…?そう思った吹雪だったが。
「ぐごぼにょぇ!!」
突然全身を叩きつけるような衝撃に襲われ吹雪は昏倒しそうになる、どうやら落下は終わったらしい。
「痛った…」
まだチカチカする頭を左右に振って無理やり意識を呼び戻す、周りには三日月たちが同様にうーん…と唸りながら目を回していた。
「みんな大丈夫?」
「何とか…」
「マジで死ぬかと思ったわよ…」
「陸の上で轟沈とか笑えないですからね…」
打撲などは負ったようだが、どうやら全員無事のようだ。
「んで、ここどこなのよ?」
暁は妙に埃っぽいコンクリの床から起き上がると辺りを見渡す、上には今自分たちが落ちてきた大穴があり、あそこまでの距離は目測で10mといったところだろう、環状線のレールが落ちずにそのまま残っているのは何だか不思議な光景だった。
そして今Deep Sea Fleetがいるのは大きな通路のようだ、幅は目測で7~8mくらいだろうか、その通路が果てしない長さで続いている、地下鉄のトンネルを二周りほど大きくしたモノだと考えれば分かりやすいだろう。
「トンネルみたいだけど、線路がない所を見ると地下鉄ではなさそうね」
「じゃあ一体…?」
うーん…とDeep Sea Fleetは頭を悩ませていたが、吹雪が以前海原から聞いた話のことを思い出す。
「そう言えば、首都圏の地下には大雨や河川の氾濫で街が冠水しないように水を逃がすための緊急用水路があるって前に司令官が言ってたよ」
「てことは、ここはその一部かも…?」
「その可能性はあるんじゃないかな」
「確かにその線は濃厚なんじゃないかしら、ここの水路、長い間使ってないみたいだし」
そう言うと暁は埃を被ってグレーに近くなっている自分の黒タイツを見る。
「あのぉ…色々考察してる所悪いんですけど、私たちをここに招き入れたであろう
吹雪たちが大鯨の指さす方向を向くと、ベアトリスのような白髪を持つ深海棲艦が、2体の駆逐戦車を従えてこちらを凝視しているのが見えた。
「そうか、さっきの揺れはこの駆逐戦車が天井を砲撃したから…」
「でもどうして私たちが上にいるって分かったんでしょうか…?」
それぞれが目の前の駆逐棲艦について色々言い合っている中、三日月がその深海棲艦を見るやいなや、信じられないモノを見たといった様子で身体を震わせる。
「雪風…?」
その深海棲艦には、かつて室蘭鎮守府で共に過ごした仲間、駆逐艦雪風の“面影”があったのだ。
◇
「雪風って、司令官が室蘭にいたときの艦娘の?」
「はい、あの“面影”…間違いありません」
そう言って三日月は目の前の“面影”を見る、腿のあたりまで届く長い白髪に鮮血のような赤い目、そしていつも気に入って着ていた黒い薄手のダウンジャケットに紺色のフレアスカート、間違いなく雪風だ。
「こりゃラッキーだよ、うまくいけば雪風を艦娘に戻せるかもしれないよ?」
「おまけに同じ室蘭鎮守府にいた三日月がいるならなおのこと話しやすいし」
「そうですね、やってみます」
思わぬ所で雪風との再会を果たした三日月は、脇にいる駆逐戦車を刺激しないように恐る恐る近づく。
『…シれいかン…ウナばらシレいカン…』
「なんか、司令官の名前を言ってますね」
「雪風は司令官の事好きでしたから」
大鯨の疑問に三日月はそう言って答えつつ、少しずつ雪風に近付いていく。
「…雪風?」
『…エ?』
雪風に声をかけると、雪風はそれに反応するようにこちらを見る。
「雪風、私…三日月だよ、私のこと、分かる?」
『ミかづ…キ?』
雪風が三日月の名前を口にした瞬間、それは起こった。
『ヴぁ…イギャ…アギュアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!』
突然雪風が両手で頭を抱え、何かに苦しむように悶えはじめる。
「ゆ、雪風!?どうしたの!?」
見かねた三日月は雪風に駆け寄ろうとするが…
『来ルなあぁ!!!!』
雪風の感情に呼応するかのように左右の駆逐戦車が同時に三日月目掛けて砲撃を放つ。
「ぐああああぁぁぁ!!!!!!」
コンクリ片と粉塵を撒き散らしながら三日月は後方に勢いよく吹き飛んでいく、落下の時の打撲のダメージが残っているのか、全身に相当な痛みが走る。
「話し合いが出来るような状態じゃなさそうだね」
「仕方無いわね、とりあえずあの駆逐戦車を片付けてから雪風とのトークタイムといきましょう、雪風は傷つけないようにしないと」
時間をかければ会話が可能かもしれないが、それは随伴艦の駆逐戦車が許さないだろう、まずはそれを排除する事が先決だ。
「駆逐戦車は私たちが片付けます!三日月は引き続き雪風との会話を!」
「わ、分かりました!」
まずは吹雪たちが駆逐戦車に向かって突撃する、なるべく強力な一撃を加えて駆逐戦車を後方に後ずさりさせ、雪風と三日月から出来る限り離した。
ひとり残って雪風と対峙した三日月は深海棲艦としての雪風を見る、髪が白いのは艦娘時代から変わっていないが、その肌は全身が白くなっており、ベアトリスのそれを思わせる。
そして雪風の両腕にはいくつものひっかき傷が残っており、それが白い肌に赤いラインとして伸びて異常なほど栄えている、相当強い力で引っかいたのか、傷口は肉が抉れとる程深かった。
『グギギギギャ…!ヤめロ…!ヤメろ!
ちなみに今の雪風は頭の中の何かを振り払うように必死に壁に頭を打ち付けていた、割れた額から噴き出すように血が流れ落ちているが、お構いなしに頭をすごい力で壁にぶつけている。
「…雪風」
『黙レ!そノ口を閉ジろ!ソレ以上
雪風は怒りに満ちた顔で三日月の方を向く、その顔や前髪は流血でほとんどが赤く染まっていた、目にも大量の血液が流れ込んでいるが、見えているのだろうか…?。
「雪風、一緒に帰ろう?」
『だあアアァぁまあアアアアアァァぁれええェェェぇ!!!!!!!!!!』
雪風は怒りに身を任せて顔や頭を掻き毟る、顔には新たなひっかき傷がその赤いラインを伸ばし、白い髪は血に染まった手で掻かれて所々が赤くなっていく。
『殺す!殺す殺ス殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ス殺す殺す殺ス殺す殺す殺す殺す殺ス殺す殺ス殺す!』
雪風は艤装を展開させると殺意を剥き出しにして三日月に向かっていく。
雪風、今度こそ、あなたを救ってみせる!
その確固たる決意を胸に秘め、三日月は雪風と刃を交える。
次回「雪風VS三日月」
雪風編書いてると、これって艦これ小説だよな?と思うようなシーンがちょいちょいあります。