コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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Phase9

 

 テロリストへ指示を出し終えてから数分が経過した頃、ルルーシュは新たに調達したサザーランドを比較的戦線から離れた屋内へ座らせていた。

 コックピット内で手にしているチェスの駒を弄びながら彼が眺めているのはレーダー、そこにはブリタニア軍のナイトメアと思われる三角形のマークが無数に点滅している。

 

(識別信号で相手の動きは筒抜け、あとはテロリスト共が俺の指示通りに動くかどうかが問題だな──)

 

 彼の脳内では、いかにして敵を撃破するかという戦略が組まれていく。どこを誘い、どこを崩し、どうやって撃破するか。ブリタニア軍が取るであろう反撃や対抗策も折り込み、最善手を打つべく数多のシュミレーションが行われていた。

 

(よし、時間だな──)

 

 テロリストへ指示を待てと言ってから10分が経過した、戦略を練る時間は終わりだ。あとは作戦を実行しながら修正していけばいいと、彼の中では結論が出ている。

 通信機の電源を入れ、向こうに居るであろうリーダーに対し声を掛ける。

 

「D―1、動かせるか? 基本は今までと変わらないはずだ」

 

『君は何者だ? 名前だけでも──』

 

 当然の疑問だな、とルルーシュは通信機片手に苦笑する。しかし正体どころか名前さえ明かす気がないルルーシュは、相手の質問をバッサリと切って捨てた。もちろん、それらしい理由を加えて。

 

「それは言えない、通信が傍受されていたらどうする? それよりQ―1が予定通りなら、23秒後に敵のサザーランドがそこに行く、おそらく2機──」

 

 ルルーシュが通信機片手に見つめるレーダーの一部分には、並走する三角マークが2つ。標的は、この2機だ。あらかじめカレンが乗るグラスゴーには敵に捕捉されるポイントへ向かうようルルーシュは指示を出していた、要約すれば囮、または撒き餌である。

 

「──壁越しに撃ちまくれ」

 

 ルルーシュが想定していたのは、壁越しの奇襲。グラスゴーを囮にした、ローリスクハイリターンな作戦だ。もしイレギュラーが発生して奇襲が失敗したとしても、そのポイントでの戦いは敵2機に対しテロリストは多数。つまりは数で勝る、被害は少ないはずだと見積もったのだ。

 

(さて、どうなるかな──)

 

 ルルーシュは、秒読みに入る。彼はこの程度の作戦が失敗するようなら大きくプランを変えなければならない、そう考えていたが故に、失敗してほしくないという思いがあった。

 だが、その心配は杞憂だったようだ。23秒が経過した頃、レーダーへ映る2つの三角形マークの上へ『LOST』という表示が上がるのを確認した。

 

(よし。フフッ、識別信号は諸刃の剣だ。それに、テロリスト共は俺の指示に従う。条件はクリアしたも同然──)

 

 テロリストは自分の指示に従うという確証が取れたことで、彼の思惑通り条件はクリアされたも同然だ。あとは自身の戦略がブリタニア軍に対し、どこまで通用するかが最大の問題だ。

 想定通りの展開に喜ぶのも束の間、ルルーシュは間髪入れず通信機へ向けて次の指示を飛ばす。

 

「P―1、P―4、P―7、100メートル右へ移動し、スラッシュハーケンを3時の方向へ──」

 

 新たに殺到してくる三角形マークへ目を向け、それを別部隊へ処理するよう指示を出す。同時に、波状攻撃を仕掛けてくる挙動を見せている部隊には別の機体を向かわせようとするが──

 

(チッ、P―5め、まだ起動していないのか──)

 

「──まだか、P―5?」

 

『──ヘンな呼び方すんな──ッ!!』

 

 辟易とした様子で溜め息を吐き出すルルーシュ、その理由はP―5の起動が遅れたせいで攻撃ポイントを修正しなければならなかったからだ。とはいえ、その程度は予想の範囲内。

 

──レーダーから敵の動きを予測し

 

「Q―1は前進、前方の建物の屋上に居る索敵兵を背後から強襲、撃破しろ」

 

──相手の思考を読み、それを制し

 

「P―2、P―3、P―5はそこで待機、30秒後に敵が前方を横切る。追いかけて背後から撃ちまくれ」

 

──勝利への道筋を導き出す

 

「R―2、アンカー発射──」

 

 いつしかサザーランドのコックピット内、コンソールには現在の戦闘状況を見立てたチェスの駒が並べられている。その壮大な戦争ゲームの盤上で一つ、また一つとルルーシュは自軍と思わしき黒の駒を進めていく。

 

「B―7、UN弾を──」

 

 情勢が傾くとまではいかないが、すでに相手の陣形がガタガタであることは素人目に見ても明らかだ。ブリタニア軍からすれば、撃破されたグループを援護しに別の部隊を動かせば、その援軍さえ"ついでに"撃破されてしまう異常事態。迫り来る見えない敵、すべてを見透かしたような奇襲と強襲、それは現地で戦うブリタニア軍にとって悪夢を見ているような感覚だろう。

 

「Nグループは、そのまま前進──」

 

 そして、ついにルルーシュは相手を大きく揺さぶる一手を放つ。グループの一つを前進させ、真っ正面から敵部隊を一つ壊滅させた。しかし、そこは主戦場の真っ只中。奇襲や強襲を主な立ち回りとし、決して位置を特定させることなく戦っていたルルーシュが見せた僅かな隙。相手からすれば、ようやく掴んだ敵の位置。

 

(さて、敵の選択肢は、5つ──)

 

 今まで周到に位置を特定させることなく立ち回ってきたルルーシュが見せた、わずかな隙。しかし、それは撒き餌に過ぎなかった。ブリタニア軍が来るであろうポイントに居たテロリスト達には、すでに地下への退避命令を出している。あとは敵がどう対応するか、どこまで被害が出るかという賭け。

 

(なんだ、最も愚かな手を打ったな──)

 

 レーダーを見つめていたルルーシュは、ブリタニア軍が大きく動いたのを確認し失笑する。陣形を崩し一網打尽を狙ったのだろう、ポイントを中心にブリタニア軍を示す三角形のマークが包囲網を狭めているのが分かる。

 

「Q―1、地図は正しいんだな?」

 

「ああ、旧市街は。しかし、現物も見ずに──」

 

「────十分」

 

 地形データからすれば、今ブリタニア軍が包囲網を作っているポイントは大きな広場となっている。ただし、その広場があるのは地上ではない──その下、目視できるはずもない地下の話だ。

 

「ミッションナンバーⅢ──準備はいいな? 30秒後に支柱を破壊しろ」

 

 そう、ルルーシュが指示を与えたのはブリタニア軍への攻撃ではない。敵が闊歩する大地は、仮初めのもの。地下へ張り巡らされた坑道の如き地下鉄へ点在する支柱を破壊すれば、ただの蓋でしかない仮初めの地面は崩れ落ちるのみ。

 

「これで、チェックだ──」

 

 チェスの駒がコンソールを叩く小気味良い音がコックピット内へ響くと、それと呼応するようにアラートが鳴りレーダーへ映っていた数十を超える三角形のマークはポイントを中心に波紋のように『LOST』を表示していく。

 

──作戦は、大成功だ

 

「フハハハハッ、やれる、やれるじゃないか──ッ!!」

 

 その結果を見たルルーシュは、込み上げてくる嬉しさを抑えることなく高笑い。作戦開始前までは懸念事項が多く、そもそも自分の戦略が通用しない可能性まであったが──蓋を開けてみればどうだ、見事なまでにブリタニア軍へ甚大な被害を与えることに成功している。

 

「やれる、やれるぞ──ブリタニアを倒すことが──ッ!!」

 

──いまだ名もなき魔王は高らかに嗤う

 

──自身が敵にとって驚異となり得るであろう結果を見て

 

──そして

 

──ここから始まる、大国への反逆を望みながら

 

 

 

~scene out~

 

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