コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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Phase10

 

「フフッ、もう一押しで検問を崩せる──」

 

 サザーランドの中でルルーシュは、先の作戦によって陣形が崩れた敵の本陣を眺め笑う。チェスでいえば、あとは追い立て、追い詰めれるだけという頃合い。もし、これが盤上のゲームであれば、投了も有り得たかもしれない。それほどまでに、現状はルルーシュ優勢に傾いていた。

 

──しかし、これは盤上のゲームではない

 

『こちらBグループ、敵影を確認──』

 

「────ん? 増援か?」

 

 不意に通信機から聞こえたのは、テロリストの声。その声質には、どこか焦燥感が窺える。とはいえ内容は新たな敵影を確認したというもの、さして問題にはならない。そうルルーシュは考えながらも、ついつい苦笑が漏れた──

 

「実戦は違うな──状況は?」

 

『全員脱出しましたが、4機もあっという間に──』

 

「────敵の数は?」

 

『1機だよ、1機───ッ!!』

 

「────なに?」

 

 ルルーシュは通信機の向こうに居るテロリストが何を言っているのか、それを理解するのに数秒を要した。彼の記憶では、Bグループへ割いた人員は決して少なくない。十分な人員を割き、壊滅する可能性を可能な限り排除した攻勢部隊。それが壊滅しかけているのだ、ただ事ではない。

 

『新型じゃないのか? 初めて見るタイプ──う、うわあぁぁッ!!』

 

 通信の途中、突如としてテロリストの悲鳴が上がると、以降はノイズしか聞こえなくなった。しかし、会話が切れる直前、気になる単語をルルーシュは耳にしていた。聞き間違いではなければ、"新型"という言葉だ。

 

(サザーランドではないのか? しかし、所詮は新型といえども人が乗るナイトメアフレーム、反応には限界があるだろう──頭数で優勢なテロリスト共が相手ならば、十分に対応できるだろう)

 

 すぐさま近くの別グループを援護に回し、新型らしき援軍の撃破を命じた。たかだか1機の掃討、グループを差し向ければこと足りるだろうと──そう、ルルーシュは考えていた。

 しかし、どれだけ待てども撃破したという報告は上がってこない。とうとう業を煮やしたルルーシュが通信機の向こうへ吠えた。

 

「何をしているッ!? ────なに、実弾を弾く?」

 

『ああ、どうすれば──ツ──石田ッ!? うわぁッ!!』

 

 あまりにも不甲斐ないテロリスト達の醜態に、ルルーシュは苛立ちと怒りを募らせる。力を与えてやっても、このザマかと。

 

(使えないテロリスト共だな──たかが1機、物量で押せば──)

 

 もはや手段も手順もない、新型が居ると思われる場所へ戦力を集中させるよう通信機から指示を飛ばしたルルーシュ。

 

「N4、N5、足止めしろ──後続部隊が着いたら囲め」

 

──しかし、撃破はおろか

 

『こ、こんなの止められねぇ──ッ!!』

 

──足止めすら、不可能

 

「おい、どうしたッ!?」

 

──止まらない、いや、止められない

 

「バカな──何が起こっている──ッ!?」

 

『うわあぁぁぁぁッ!!』

 

「P―1、どうしたッ!! 敵は、本当に1機なのか?」

 

 通信機からの返事は、ノイズのみ。撃破されたのだろう。こちらの残存戦力を確認しようにも、テロリストが撃破されるスピードが早すぎて追い付かない。もはやルルーシュでなくても分かる、もはや自軍の戦線は崩された。

 彼の作戦は完璧に近かった、自軍の被害を最低限に抑えながらブリタニア軍を追い込んだはずだった。しかし、その結果は覆された。

 

「──────ッ!?」

 

 外からランドスピナーの駆動音が聞こえ、ルルーシュが顔を上げる。すると白いナイトメアがスラッシュハーケンでビルを駆け上がり、彼がサザーランドを座らせている屋内へと飛び込んできた。

 弾丸のようなスピードで突っ込んでくる白いナイトメアを確認したルルーシュは、忌々しげに声を張り上げながらサザーランドへ防御姿勢を取らせる。

 

「こいつか──俺の作戦を──ッ!!」

 

 ルルーシュが操縦するサザーランドが腕を交差させ、飛び込んできた白いナイトメアが放つ蹴りを受け止めた。お世辞にもナイトメアの操縦技術が高いとは言えないルルーシュだが、その奇襲による一撃を止められたのは運が良かったのだろう。

 

「たかがパイロットが、よくも──ッ!!」

 

 防御したことによる衝撃で揺れるコックピット内、ルルーシュは怒りのままに叫びを上げる。だが、その怒号はビルの床が瓦解する音に掻き消された。

 

──いきなり、直下の床が崩れ落ちていく

 

 ビルの中、5階へ隠れていたルルーシュのサザーランドだったが、白いナイトメアの蹴りを受け止めた。その衝撃に耐えきれなくなったのは、サザーランドではなくビルの床だった。

 

──崩れていくビルの床

 

──その下、次に現れた床を踏み抜き

 

──さらに迫ってくる床も、容赦なく貫いていく

 

 とうとうサザーランドは、1階部分まで到達してしまった。白いナイトメアの姿は、ビルが崩れたことにより発生した土煙で確認することができない。

 

「────クソッ!!」

 

 ルルーシュは、毒づく。指揮官として戦略的な敗北ならば受け入れることができたかもしれない、しかし、彼は許せない。"駒"はあくまで"駒"、陣を成し、策を実行し、ただ作戦を遂行するだけのモノとしか考えれなかったのだ。

 チェスというゲームに置き換えれば、ポーン(兵士)でさえルールを守ればキング(王)を倒せる。キング(王)とポーン(兵士)に力関係はない、それが盤上での理でありルール。

 

──しかし、先程ルルーシュは自分で言った

 

──実戦は違う、と

 

 つまり今ルルーシュと対峙する白いナイトメアは"個という概念を超えた駒"、言い方を変えれば"一騎当千"。その戦力はルルーシュにとっての誤算、彼は千の兵に相当する存在は"理解できない(イレギュラー)"。

 

「仕方ない、ここで脱出を──ッ!!」

 

 とはいえ、もはや自分は敵に捕捉されてしまっている。ルルーシュは白いナイトメアが許せないし、理解できない、だがそれ以上に、いま捕まるわけにはいかないという現実が優先。

 脱出装置を起動させようとした、その時──

 

──上空へ、白いナイトメアが現れる

 

──四肢を器用に操り

 

──その巨体を空中でコマのように回転させ

 

──落下スピードに加え遠心力まで用いられ放たれる右脚

 

──狙いは、サザーランドの頭部

 

 咄嗟にルルーシュはサザーランドの腕を持ち上げ、頭部への蹴撃を受け止めた──が、その衝撃は初撃とは比べ物にならない威力だった。受け止めきれず、サザーランドは大きく吹き飛ばされた。

 

「────ぐッ──ッ!!」

 

 機体が倒れ込む衝撃に表情を苦悶で歪ませるルルーシュ、瞬間、視界に入ったディスプレイが映していたのは白いナイトメアが右腕を上げる光景。

 やられる、そう思った瞬間──

 

──横合いから、薄赤のグラスゴーが突っ込んできた

 

『おい、借りは返すぞ──ッ!!』

 

(Q―1か、よくやった──ッ!!)

 

 飛び出してきたのは、カレンのグラスゴー。不意討ち気味に放ったはずの右ストレートは難なく白いナイトメアに止められてしまう、が──

 

──グラスゴーの肩口からスラッシュハーケンが射出された

 

 二段構えの奇襲、しかも至近距離。

 これならば、とカレンは必殺を確信した。

 

──しかし、それすらも受け止める白いナイトメア

 

「────なッ!?」

 

 受け止めるだけではなく、そのまま右腕とスラッシュハーケンは握り潰されてしまう。その反動はグラスゴーのコックピット内へ火花を散らせ、もはや行動不能であることは明白だ。同時に人命救助システムにより、強制的に脱出装置が作動する。

 

(何なの、あいつ──ッ!!)

 

 離れていく戦線、カレンは化け物じみた戦いを見せる白いナイトメアへ悪態を吐くと共に──謎の声の主、ルルーシュの安否を気遣っていた。

 

──その頃、ルルーシュが乗るサザーランドは

 

──すでに白いナイトメアとグラスゴーの戦域から離れていた

 

「学ばないとな、実戦の要は人間か──」

 

 白いナイトメアとは大きく距離を離した、再び捕捉されることはないだろう。サザーランドを走らせながら、ルルーシュは思う。自身の考え、理念を超える力を見せた1機のナイトメアから教わったことを。そして、味わった屈辱を糧とすることを。

 

『よう、無事だったか──?』

 

 その時、ルルーシュが操るサザーランドへ近付いてくる別のサザーランドが1機。マイクとスピーカーを通して聞こえた声は、聞き覚えのある声だった。

 

「カイトか──」

 

『ああ、とんでもないな、アイツ──」

 

 カイトが言うアイツとは、間違いなく白いナイトメアだろう。とんでもない、と表現するカイトにルルーシュの返事はない。だが、その意見には大いに同意していた。味方の部隊を薙ぎ倒していく様は、まさに一騎当千。それを目の当たりにした今となっては。

 

「カイト、このまま本陣へ向かう。頭を押さえるぞ」

 

 だが、それはそれ、である。ルルーシュはナイトメアの戦いには負けたが、勝負に敗北する気はない。あの新型に当初の作戦を潰された今となっては、あらかじめ想定していた別のプランを実行するしかなかった。

 

『たった2機でか? そりゃ無茶ってもんじゃ──』

 

「違うな、間違っているぞカイト。2機ではない、2人でだ」

 

 その言葉の意味は、"力"を使い本陣へ侵入するというもの。そう、別のプランとは"力"を用いた生身の本陣進入。当初は布陣が敷かれ、進入は難しいと判断したが故に破棄した作戦だ。

 しかし、あの白いナイトメアが現れるまでの戦闘で、ブリタニア軍の本陣や周囲はガタガタだ。逆に、今ならば生身といえども容易に進入できるはずとルルーシュは考えていた。

 

『──ああ、なるほどね──』

 

 その意図を察知したカイトは、『了解』と快諾。

 あとは本陣の近くでサザーランドから降り、兵から衣服を奪えば進入できる。ルルーシュの計画は、滞りなく修正された──かに見えた。

 

──しかし、安心するのは、まだ早かったらしい

 

 不意にコンソールから、アラートが響く。背後を確認すると、盛大に土煙を巻き上げながら白いナイトメアが追走してくるのが見えた。

 

「クソッ、何なんだアイツは──ッ──カイト、俺と同じ箇所を撃ちまくれ──ッ!!」

 

 ルルーシュは舌打ち混じりに操縦幹を切り、サザーランドの半身を振り向かせアサルトライフルの弾をバラ撒く。それに習い、並走するカイトのサザーランドもルルーシュが狙う場所へ向けて銃撃を加える。

 それは白いナイトメアを狙ったものではない、進行方向へ立つビルを狙っていた。直撃させるよりビルを崩すことで足止めを狙い、あわよくば撃破できるだろうと踏んでのこと。

 

──崩れ落ちてくるビルの瓦礫

 

──白いナイトメアは、その直下

 

──しかし当たる直前、白いナイトメアが跳躍した

 

 雨の如く降り落ちてくる瓦礫、大きなものから小さいものまで。その全てを、白いナイトメアは隙間を縫うようにして回避していく。時には大きく跳び、落ちてきた瓦礫を足場として。

 

──その動きは、まるで獣のようだった

 

「なんだ、あの化け物は──ッ!!」

 

 人間技ではない、ルルーシュが言う通りだ、その動きはあまりにも化け物じみていた。反応速度も、判断も、人間のそれではない。とはいえ、このままでは逃げ切れない。カイトを囮にして逃げることを考え始めたルルーシュだが──

 

(────ん?)

 

──いきなり、白いナイトメアが大きく跳躍した

 

 ルルーシュとカイトはサザーランドをバック走行させながら迎え撃とうとしていたが、突如として追走を止めた白いナイトメアを怪訝そうに見つめる。すると、崩れ落ちてくる瓦礫に混じって、女性が落ちてくるのが見えた。

 

『──え、マジかよ──?』

 

「戦闘中に人助けとはな──」

 

 白いナイトメアはルルーシュ達の追走より、人命救助を優先させた。これは嬉しい誤算だ、このままでは2人共あの白いナイトメアへ撃破されるか捕縛されていただろう。この隙は、大きい。

 

「フッ、戦術的勝利などいくらでもくれてやる、しかし最後に勝つのは俺だ。カイト、機体から脱出した後に合流しよう」

 

『ああ、分かった──』

 

 脱出装置を作動させる寸前に見えたのは、白いナイトメアの背中。圧倒的な戦闘力によって作戦を潰し、テロリスト達を圧倒した敵に対し怒りと敬意を抱きながら──ルルーシュは、脱出装置を作動させた。

 

 

 

~scene out~

 

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