コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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Phase11

 

「──これ以上の戦闘は許可しないッ!!」

 

 シンジュクゲットー全域へ向けて停戦宣言を行ったクロヴィス。玉座のような椅子へ腰掛ける彼を見て、ルルーシュはカイトへ目配せする。

 それを受けたカイトは頷き返し、ゆっくりとコンソールへ指を這わせ"力"を開放する。するとサザーランドの時と同様に、彼の脳内へ膨大なデータが進入してくる。艦の基本性能から主砲を始めとする全武装、さらには使用方法など多岐に渡る。

 そんなデータ郡から彼が求めている情報、それは艦内を撮影する監視設備と、艦を動かす動力制御装置についてだ。

 ルルーシュからの指示は、2つ。

 一つ目は、クロヴィスと自分達が居る場所に監視設備があるかどうか。そして二つ目は、艦の動力を完全に停止させることができるか、というもの。

 

(ったく、簡単に言ってくれちゃって──)

 

 頭の中へ進入してくるデータに溺れ、頭痛と吐き気に苛まれながらもカイトは目標となる情報を発見。その情報を頼りに、彼がコンソールを叩くと──

 

「────よし」

 

 ディスプレイには『shutdown』という文字が表示され、数秒もすればルルーシュ達が居る部屋の灯りは消え暗闇の帳が降りた。

 

「この部屋に監視設備はない、ただ会話はブラックボックスに保存されちまう可能性があるからブラックボックスと指令室のネットワークを切った上で、メイン動力とバックアップ、どっちも落とした。これで指令室は完全密室、艦はただの鉄の箱だ」

 

 コンソールから離れルルーシュの傍らに立つカイト、その表情は頭痛と吐き気によるものか、少し苦悶に歪んでいた。横目にカイトの様子を眺めたルルーシュは、それが"力"の代償によるものだと知覚したが触れようとはしない。なぜなら今は、目の前に"敵"が居るのだから。

 

「────もういいのか?」

 

 玉座らしき椅子に座る第三皇子、クロヴィス。その視線は、銃口を自身へ向けるルルーシュへと注がれていた。そう、先ほどの停戦宣言はルルーシュが彼へ向けた銃による脅迫によって流されたのだ。

 

「ええ、上出来です──」

 

「次は何だ? 歌でも歌うか? それともチェスのお相手でも?」

 

 銃を向けられているというのに、クロヴィスは怯えた様子などなく軽口まで叩くほど落ち着いていた。しかし、自身へ一歩だけ近付いたルルーシュの言葉を聞き、眉尻を上げる。

 

「────懐かしいですね」

 

「─────?」

 

 ルルーシュはヘルメットを脱ぎ捨て、放り投げる。床へヘルメットがぶつかりカラカラと乾いた音が響くなか、さらに一歩、ルルーシュは歩を進めた。

 

「覚えていませんか、二人でチェスをやったことを。いつも、僕の勝ちでしけど──」

 

「──何?」

 

 徐々にではあるが、クロヴィスの顔から余裕が消えていくのが分かる。皇族たる素養か、本人の胆力によるものか、それは定かではないが──つい先ほどまでは見れなかった感情が、表層へと押し出されていく。

 

「──アリエスの離宮で」

 

「──ッ──貴様? 誰だッ?」

 

 もはや、クロヴィスは感情を隠しきれていない。何かを知っているような口振り、そしてアリエスの離宮という単語を知る者、暗闇によって顔の見えない賊に対し明確な敵意と殺意が突き付けられる。

 しかし──

 

「──お久し振りです、兄さん」

 

「──────ッ!!」

 

 その言葉と共に、かすかに漏れる光が賊の顔を照らす。闇から抜け出てくるかに見えた賊の顔は、ルルーシュのもの。相手がルルーシュであることに気付いたクロヴィスは目を見開き、まるで信じられぬモノを見たも言わんばかりに身を乗り出した。

 

「今は亡きマリアンヌ后妃が嫡子、第十七皇位継承者、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアです」

 

 ルルーシュが、その場へ恭しく膝を着いた。しかしクロヴィスは、いまだに驚愕と恐怖に体を支配されているらしい。玉座からは立ち上がったものの、もはや銃を向けられていないというのに微動だにしない──否、できなかったと言うべきだろうか。

 

(ああ、やっぱり、か──)

 

 ルルーシュの傍らに控えるカイトは、ブリタニア軍人へ"力"を行使した時にルルーシュから聞いたブリタニア姓のことを思い出す。その時から彼は、ルルーシュが皇族関係者ではないかという疑問を抱いたが──予想は、斜め上を行っていた。

 関係者どころではない、まさか偶然居合わせただけの学生、ルルーシュの正体がブリタニアの皇子であるなど誰が予想できるというのか。

 

「ルルーシュ、お前は──ッ!?」

 

「──死んだはず、ですか?」

 

 そんなカイトの内情など知る由もなく、クロヴィスとルルーシュは相対し言葉を交わす。さきほどまでの平静さはカケラもなく、震えながら声を絞り出すだけのクロヴィスへ、ルルーシュは語気を強め言い放った。

 

「戻って参りました殿下、すべてを変える為に──」

 

 黒笑と共に立ち上がったルルーシュがクロヴィスへ近付き、再び銃口を突き付る。そこまでされて、ようやくクロヴィスも我に返ったらしい。糸が切れた人形のように脱力すると、玉座へ腰掛ける──と、いうより玉座へ尻から倒れ込んだ、というほうが正しいかもしれない。

 

「嬉しいよルルーシュ、日本進領の時に死んだと聞いていたから。いやぁ、良かった生きていて。どうだい、私と本国に──」

 

「また外交の道具とする気か? お前は、何ゆえ俺達が政治の道具となったか忘れたようだな」

 

「──ッ──ッ!!」

 

「そう、母さんが殺されたからだ──母の身分は騎士候だったが、出は庶民だ。他の皇女達にとっては、さぞや目障りな存在だったんだろうな。しかし、だからといってテロリストの仕業に見せかけてまで、母さんを殺したなッ!!」

 

 激高するルルーシュ、それに呼応し思わず銃を握る手に力が入ってしまう。引き金に指が掛けられており、いつ弾丸が発車されてもおかしくない状態。そんな状態ゆえか、ルルーシュの言葉が原因なのかは分からないが──突如として、クロヴィスは声を張り上げた。

 

「私じゃないッ!! 私じゃないぞッ!!」

 

 もはや先ほどまでの物静かな、余裕など微塵も感じられない。必死に自分が殺していないと主張したいらしいが、ハタから見ていれば逆に怪しいと言われても仕方ない動揺っぷりだ。

 

「では、知っていることを話せ。俺の前だ、誰にも嘘は吐けない──"誰だ、殺したのは?"」

 

 だが、そんな相手など歯牙にも掛けず、ルルーシュは淡々と言い放つ。与えられし王の力を使い、クロヴィスの瞳へ赤の光を灯す。

 

「──ッ──第二皇子シュナイゼルと、第四皇女コーネリア、彼等が知っている」

 

 "力"によってクロヴィスの口からから発せられた名前に、ルルーシュは少し驚いた様子で眉を上げる。彼は犯人がクロヴィスではないだろうという予感はあったが、まさか第二皇子と第四皇女が関わっているとは思わなかったのだ。 

 

「あいつ等が首謀者か?」

 

 さらに質問を投げ掛ける、が、クロヴィスは無反応。それは、クロヴィスが知らないからこその無言だろう。犯人ではなく、それ以上の情報も持っていない。それを察したルルーシュは、溜め息を吐き出捨てた。

 

(そこまでは知らない、か)

 

「──ヒッ──ほ、本当に私じゃないッ!! やってないッ!! やらせてもいないッ!!」

 

 "力"による強制力が無くなると、再びクロヴィスは顔を歪ませ必死に無罪を主張し始めた。彼は記憶がないだろうが、すでにルルーシュは答えを得ている。故に脅迫という行為そのものが、すでに必要ない。

 

「分かったよ──」

 

──銃を下ろすルルーシュ

 

──どこか安堵の表情を浮かべたクロヴィス

 

──だが

 

「────しかし──」

 

 三度、ルルーシュが手にする銃がクロヴィスへと向けられた。すると一度は安堵の表情を浮かべたクロヴィスは狼狽え、徐々に近付いてくる銃口とルルーシュの顔を見比べた。

 

「は、腹違いとはいえ、実の兄だぞ──ッ!?」

 

 何もできず、クロヴィスは自身の眉間へ押し付けられる銃口の冷たさに戦慄する。対して銃口を突き付ける側のルルーシュの顔からは、すでに笑みは消えていた。ただ凍えるような冷たい瞳が、どこか遠くを見ているようだった。

 

──その瞳に映るのは

 

──楽園と見紛う場所で

 

──幼い"兄"と"弟"がチェスに興じる光景

 

──過ぎ去った、過去の幻影

 

「綺麗事で、世界は変えられないから──」

 

──その一切を忘却するという決意と

 

──かすかな罪悪感と共に

 

──その引き金が、引かれた

 

 

 

~scene out ~

 

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