コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~ 作:あーさぁ
ゼロに連れられて辿り着いたのは、大小様々なガラクタが山のように積まれた産廃収集現場。夕暮れ時に到着するや否や、ゼロはカイト達3人へ二つの指示を出した。
『明日までに、これと同じモノを作れ。外側だけ、そう見えればいい──』
彼が指差す足元には、2枚の写真。それに写っていたモノは、この場に居合わせるカイト、カレン、扇の三人に見覚えがあった。
片方は大仰な白の装飾が施された豪勢な車。それは今は亡きクロヴィスが用いていた専用車、移動だけでなく野外演説などにも使用されたモノ。
そして、もう片方の写真。それに写っているのは球体をカットし、その半球体のいたる所から突起が出た機械の塊。それは数日前、カイト達が奪取した毒ガス装置に似ていた。
クロヴィス専用車の用途は不明だが、毒ガス装置の方はどのように用いるのか、その時点でカイトはルルーシュの思惑を察することができた。
毒ガス装置を奪取したカイトが軍用ヘリに追われた時、いきなり命中させなかったということは、"ブリタニア軍は毒ガス装置を警戒していた"と取れる。そして、シンジュクゲットーの一件は毒ガス散布によるものだと報道された。
その過程から導き出された推測、それは"ブリタニア軍は装置の中身を知らない"ということ。毒ガス装置だと思っていた機械の塊の中には毒ガスなど入っていなかった、この事実を彼等は知らない。
その事実を知っており、かつ生き長らえているのはルルーシュ、スザク、カイトの三人のみ。レジスタンスメンバーであるカレンも、扇も、その場には居なかったが故に知る由もない。
たとえ偽物だったとしても機械の塊を見せれば、ブリタニア軍は毒ガスだと警戒するはず。加えて移送予定日やコースも報道済みのため、その場には中身どころか機械の塊が毒ガス装置だと分からない見物客が大勢いることが予想される。
つまり機械の塊を毒ガスだと誤認するブリタニア軍に対し、集まった見物客を丸ごと人質にするつもりなのだろう。見物客に自分が人質となっている、と自覚させないまま。
これによって、ブリタニア軍は攻撃を躊躇うだろう。駆け引きを行うのであれば、相手の風上に立てる。しかし、カイトが考え至ったのはそこまで。
どうやって逃げるのか、どうやってスザクを取り返すのか、カイトはルルーシュが考案している作戦の詳細までは察することができなかった。
(でもまぁ、いきなり撃たれなきゃ何とかなるだろ──)
ともあれ、カイトはルルーシュの"力"を知っている。だからこそ他者から見れば荒唐無稽、無謀とも取れる作戦を信用できる。あとは、手を動かせばいい。
だからこそ、彼はスクラップとなった車や家電などを始めとし、端末らしき小さなガラクタが無秩序に打ち捨てられている山々の中で首を捻る。
「んー、こんなもんかなぁ?」
カイトが見上げているのは機械の塊、毒ガス装置っぽく見せただけのハリボテ。中身は消火器を始めとした噴霧装置で構成されており、あとは密かに下方へ空けておいた穴から着色したガスを注入すれば完成である。
「ほう、よく出来ているな──」
そんな彼の元へ現れたのはゼロ、奇抜な仮面にマントという浮世離れした格好のまま、しかし手にはビニール袋が握られているという。なんともシュールな姿だ。
「ほら、差し入れだ──」
「あれ、もうこんな時間だったか──」
気付けば時刻は深夜、すでに日付は変わっていた。手渡されたビニール袋にはペットボトル飲料やサンドイッチなどの簡易的な食料が入っており、中身を覗き込んだカイトは含み笑いを浮かべてしまう。
「ん? どうした?」
「あ、いや、そんな格好してビニール袋ってのもシュールだったけど、コンビニでも行って来たのかなぁ、なんて考えたら、つい──」
「──ッ──違ッ、これは買わせたものであって俺、私が買って来たものではない──ッ!!」
明らかに動揺しているゼロを尻目にカイトはビニール袋からペットボトル飲料を取り出すと、さっさと開封して喉を潤す。
仮面の奥で仏頂面のルルーシュは、そんなカイトを横目に彼が作ったハリボテを見上げた。まだ指示を出してから数時間ほどだというのに、ほぼ出来上がっていると言ってもいい仕上がりだ。
「いやに早いな、動作は大丈夫なんだろうな?」
「ああ、先に煙を出せるかテストした後にハリボテを張ってったから問題ないと思う。最終的にカレンと扇さんが作ってる車にコレを載せて確認するし大丈夫だって」
「そうか──」
「それより、聞きたいことがあるんだけど──」
「ん? なんだ?」
スザクを奪還する計画の詳細について、ゼロという存在の必要性、今後のこと、色々と聞きたいことはある。しかし今カイトが聞きたいことは、それではない。
「お前さ、その格好は──あれだ、趣味悪いぞ?」
「────なッ!?」
歯切れ悪く告げるカイト、その言葉に絶句した様子のゼロ。カイトが放った痛恨の一言に対し拳を握り「ぐぬぬ」と唸っていたゼロが、いきなり背中を向けた。
「ゼロとは記号だ。大国へ反逆する者達の指標、偶像ともいえる存在。個人ではなく、意思が具現化したもの。で、あればこそ──この仮面と服装は、合理的で相応しいと言えるのでは?」
「いや、合理的とか相応しいとかじゃなくて、その格好はいかがなものかと言いたいだけで──」
「────────────この頭でっかちめ」
必死に自分の格好について言及してくるカイトへ、ゼロは忌々しげに歯噛みする。彼自身は大仰でミステリアス、それでいて目的に対して合理的でインパクトのある格好だと自負していた。もちろん、"見た目は二の次"と自分に言い聞かせて。
なのに、無神経にもカイトは「そんなの着るとかセンス大丈夫?」と言ってくる。そのツッコミにルルーシュは、心の底から弁明したかった。
何故なら"力"を使い仮面と衣装を他人に用意させたことと、スザク奪還のために"ゼロ"の登場を前倒ししたこと、これらの要因で仕上がりを確認した後の修正を行う時間が足りなかったのである。
結果、ルルーシュ自身もゼロの衣装を着込むのは甚だ不本意だったのだが、使わざるを得ない状況となってしまったのだ。
「お前に指摘される筋合いはない──」
「──あっ(察し) あー、うん、悪い。誰がどんな格好しようが、それは個人の自由だよな、うん」
何を勘違いしたか、何やら生暖かい目でゼロを見つめハッとするカイト。いったい何を察したのだろうか?
ほぼ確実に、誤解していることだろう。ゼロ、つまりはルルーシュの服のセンスについて。
(何だ、その生暖かい目はッ!? ええいッ、憐れむような視線はやめろッ!!)
と、そんなやり取りを続けていたが、ふと遠くからカイトを呼ぶ声が聞こえてきた。おそらく、カレンと扇だろう。それを聞きつけたゼロは、その声から遠ざかるように踵を返しガラクタの山の中へと消えていく。
「では、また来る。それまでには終わらせておけよ?」
「ん、了解だ」
カイトは内心では「逃げたな」と思いつつも、深く追求しないことにした。それを察したゼロ、ルルーシュは仮面の奥で舌を打つ。
──
────
──────
余談だが、ゼロが去った後。サンドイッチやペットボトル飲料を受け取ったカレンと扇もカイト同様、"あの格好"にビニール袋というシュールな図を想像し噴き出してしまったそうな。
~scene out~