コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~ 作:あーさぁ
あと先に言っちゃうと、この作品は玉城に一切の慈悲を与えません。盛大なタイトル詐欺です(苦笑)
主要メンバーは基本的に救済を前提としてハッピーエンドを目指しますが、コイツにだけは最初から最後まで救済はありません。する気もありません。
あしからず、ご了承下さい。
「まさか、本当に助け出すなんて──」
「なんなんだ、アイツは──」
夕暮れ時、クロヴィス暗殺事件の犯人を奪還したメンバーがアジトへ帰還。手厚い歓迎もそこそこに、ゼロは捕虜と話があると言い残しスザクを連れて席を外してしまう。
残されたのは、扇メンバーの面々。
口々に上がるのは、信じられない、まさか、という羨望と疑念の声。メンバー達は報道を通して一部始終を目撃した、ブリタニア軍が張った罠を抜け、華麗に目的を達成したゼロの手腕を。
「ハッ、馬鹿馬鹿しい。あんなハッタリが何度も通用するかってぇのッ!!」
そんな中、一際ゼロへ厳しい評価をし続ける玉城。彼は不信感、敵意を隠そうともせず柱に背を預けたまま不満そうに表情を歪めていた。
「しかし、認めざるを得ない──」
呟いたのはリーダーの扇、彼は目の前でゼロの手腕を見た。力もなければ物資もない、ガラクタから作り上げたハリボテだけでブリタニア軍を翻弄し目標を奪った。それは今まで扇や前リーダーであった紅月ナオトでさえ、成し遂げることは叶わなかった。
しかし、ゼロはやってのけた。
「──彼以外に誰が、こんなことできる?」
その質問に、玉城を始めとした他のメンバーも答えることはできない。たとえハッタリといえども結果を残したゼロ、誰も成し得なかった成果、それは彼等が得たかったものに他ならない。
「ま、ゼロの腕は認めるよ。気に入らないとすりゃ、なァんで最初に連絡を寄越すのが扇じゃなくてカイトの奴なんだよってこと。シンジュクの時もそうだったろ──お前等、グルじゃねぇのかァ?」
そこで、舌打ち混じりに玉城が言葉を漏らす。ゼロは認めるが、ただ単に彼の中では腑に落ちないところがあるのだろう。露骨に話題の矛先がゼロではなく、カイトへと向けられた。
シンジュクでのこと、今回のこと、たしかに発端はカイトが関係している。実際、玉城の指摘通りゼロとカイトはグルだ。とはいえ、それを明かすつもりのないカイトは玉城の指摘を聞き鼻で笑う。
「ハッ、八つ当たりなのか嫉妬なのか知らないけど俺を巻き込まないでほしいね。ゼロが俺ばっかりメッセンジャーに使う理由が知りたいなら、本人に直接聞けばいいだろ」
「──テッメェ、先輩に対して──ッ!!」
「おい、やめろ玉城──ッ!!」
柱へ預けていた背を離し、適当な木材へ腰掛けていたカイトへと歩み寄っていく玉城。そのまま腰掛けていたカイトの胸倉を掴み立ち上がらせた玉城は、周囲の制止を振り切り拳を振りかざす。
「──ッ──」
拳はカイトの頬を打ち、鈍い音を響かせた。その衝撃にカイトは少し体勢を崩すも、倒れ込むには至らない。だが口内が切れたのか、唇の端からは一筋の血が漏れ出てきていた。
「ちょっと、何すんのよッ!!」
その光景を目の当たりにし、カレンが立ち上がる。無抵抗な兄を殴られ頭に血が上っているのだろう、その表情には鬼気迫るものがあった。
「あ"ッ!? お前まで指図すんのかよッ!!」
しかし、玉城は怯むことなくカレンを睨み付ける。その瞳に宿るのは怒りと敵意、それがカレンへと向く。今度はカレンへと拳を振るうつもりなのか、足早に距離を詰めていく玉城。
──再び振り上げられる拳
──身構えるカレン
──しかし
「────あ"?」
今まさに拳を繰り出そうとした玉城の肩を、誰かが叩く。
忌々しげに振り返る玉城、しかし彼は自分の肩を叩いた人物が誰であったのか分からなかった。なにせ、振り向き様に彼の視界へ映ったのは、握り締められた拳だったのだから。
先ほど玉城がカイトを殴った時の比ではない、極限まで力を込められた拳が玉城の頬を捉えた瞬間、拳と歯が衝突する生々しい害音が響く。
「──ガッ──ッ!!」
辛うじて踏み留まった玉城は、自分を殴ったのが誰なのかをようやく理解した。衝撃に揺らぐ彼の瞳に映ったのは、無表情のままに拳を突き出すカイトの姿。
反撃を、と玉城が体を硬直させる。しかし、そんな反撃をカイトは許さない。殴った時の勢いのままに腰を落とした彼は、逆の手を腰に抱き身構える。
刹那、繰り出される打ち上げ様の拳。下方から全体重を載せた拳がよろめく玉城の顔面を、再び捉えた。
「────ぐッ、がァッ!!」
その威力は、先の奇襲で放った一撃目とは比べるまでもない。全体重ごと放たれた拳は、決して小柄ではない玉城の体を浮かせる。
受け身も取れず、地面へ背中から倒れ込む玉城。
「テ、メェ──ッ!!」
倒れ伏す玉城が、憎悪を孕む瞳でカイトを見上げる。しかし、そんな瞳を向けられてもカイトは眉ひとつ動かさない。その瞳は、まるで道端の石ころを眺めるような、心底どうでもいいと感じているような、空虚で淀んだ瞳。
「二人とも、落ち着け──ッ!!」
そこで、ようやく扇が仲裁へ入ってきた。
しかし、二人は聞く耳を持たない。
立ち上がり殴り掛かろうとする玉城を他のメンバーが押さえ付けるなか、カイトが再び拳を持ち上げる。すると、それを見かねたカレンが、持ち上げられたカイトの腕へしがみついた。
「もういい、もういいんだよカイ兄ッ!!」
「─────ッ──」
カレンの必死の制止、叫びにも聞こえた声は、我を失っていたカイトを現実へと引き戻すことができた。直後は何度か目を瞬かせていたが、ふと見たカレンの無事な姿を見て体が弛緩したのだろう。
持ち上げられていた拳を下ろし、苦笑を浮かべるカイト。その表情は、カレンも見慣れた兄の笑顔。困っているような、でも安心したと表しているような、穏やかな笑顔。
「悪い、完全にキレてた──ちょっと頭、冷やしてくる」
持ち上げていた拳を下ろすと、カレンの拘束も解ける。その時、ふとカイトは自身の手の甲から鋭い痛みが走ってきたことに顔をしかめた。
見れば、甲からは血が滴っている。おそらく玉城を殴った時に歯で切ってしまったのだろう、大怪我ではないにしても結構な出血量だ。
「あ、ちょっと、せめて手当て──ッ!!」
だがカイトは痛みと出血を無視しながら、アジトの外へと去っていく。そんな彼を、ハンカチ片手に追いかけるカレン。
「クソガキがァッ!! 逃げんのかァッ!!」
そんな二人へ、背後から玉城の雄叫びが上がる。どう見てもダメージは自分の方が大きいというのに、背を向けて去っていくカイトを目と威勢で殺さん勢いだ。
──しかしカイトも、カレンも
──振り返ることはない
──夕暮れ時、玉城の咆哮はゲットーへ虚しく響いた
~scene out~
【補足】
本作の玉城は原作以上にブリタニア人との差別意識が高く、攻撃的で直情型に描いています。
過去とか妄想したんですが「コイツのこと考えるだけ時間の無駄だわw」と思い至ったので、どうやって人格形成されたのか等の詳細は割愛します。