コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

24 / 31

今回は伏線回。
原作キャラとの絡みは少なめです、あしからず。




Phase23

 

「あら、おかえりなさい──」

 

 アジトを後にしたカイトとカレンが自宅へ帰ると、内職の造花作りに励む母が二人を迎えてくれた。相変わらずの柔和な笑みは、二人へ改めて"帰ってきた"と感じさせる。

 

 しかし、ふと何かに気付いた母の表情が曇った。瞳の先にはカイト、正確に言うなら真新しい傷跡が残る彼の口元とハンカチで巻かれた手に視線が注がれている。

 

「あ、これ? ちょっとケンカしちゃって──」

 

「まぁ大変、救急箱取ってくるわね」

 

 腰を上げ母がタンスの方へ歩み寄っていく。途中、もう応急処置はやったから治療は必要ないとカイトは言うも、母は聞く耳持たない。小振りな救急箱片手に二人の傍らへと戻ってきた母は、「めっ」と人差し指をカイトの鼻先へと突き付けた。

 

「化膿したらどうするの? ホラ、見せて──」

 

 どうやら、彼に拒否権はないらしい。諦めたように溜め息を吐いた彼は居間へ入り、母が作業のために陣取っていたスペースから離れた場所へ腰を下ろす。

 

 すると、取り残されたカレンは救急箱片手にカイトの傍らへ座り込んだ母へと視線を向けた。

 

「あ、じゃあ今のうちに私、シャワー浴びてくる」

 

「カレンは怪我とかしてないのよね?」

 

「うん、ないよ。兄貴に助けてもらったからね」

 

 母の心配をよそに、カレンはそう言い残すと踵を返し自室へと消えていった。そんな彼女とカイトを交互に見つめた母は、嬉しそうににっこりと微笑む。

 

 先ほどのカレンの言葉と、傷付いて帰ってきたカイト。その二つから母が立てた推察は、しつこく妹へ言い寄ってくる男から、身を呈して妹を守る兄の構図。

 

「さすがはお兄ちゃんね──」

 

「あ、あはは──」

 

 ふとカイトの頭を撫でてくる母、その行為に気恥ずかしくなった彼は苦笑するしかない。同時に彼は思った、やっぱり母には敵わない、たぶん一生頭が上がらないかもしれない、と。

 

「はい、手出して──」

 

「あ、うん──」

 

 ハンカチを取り傷付いた側の手を母へ差し出すと、母は優しい手付きで患部の消毒を始めた。時おり消毒液が傷口に触れてチクッと痛みが走るが、カイトは堪えない。母の優しさに触れていた彼には、その程度の痛みは幸福感が塗りつぶしてしまう。

 

 そして、それほど時間を掛けることなく手と口元の消毒は終わり。最後に、母が手へ包帯を巻き始めた頃、ぽつりと母が呟いた。

 

「──カイト、カレンをよろしくね?」

 

「──え?」

 

「あの娘、頑固じゃない? それに抜けてるっていうか、危なっかしいところがあるからお母さん心配なのよ──ホント、誰に似ちゃったのかしら?」

 

 真顔のまま、心底悩んでいる様子の母。隣で大量の疑問符を浮かべ首を傾げる母に、この時カイトは心の中だけでツッコんだ。

 

(うん、間違いなく貴女ですよ──)

 

 と。

 

「はい、おしまい。包帯は大丈夫? きつくない?」

 

「うん、大丈夫。サンキュ、母さん」

 

 口元は確かめる術が無かったので何とも言えなかったが、手に巻かれた包帯は二度、三度と動かしたり拳を作ってみても窮屈ではない。おそらく、緩んだりすることもないだろう。ただ、巻かれた包帯が少し歪んでいるようにも見えるのはご愛嬌、というものか。

 

「じゃ、部屋に戻ってる。カレンが出たら教えて」

 

「あ、ご飯はどうするの?」

 

「ごめん、外で食ったからパスで」

 

 会話もそこそこに、カイトはお礼がてら立ち上がると居間を後にする。居間で待っていても良かったのだが、スザク奪還作戦の心労と、玉城とのケンカは彼を疲弊させるには十分すぎた。

 

 疲れきった表情のカイトが自室へ戻ると、さっさと部屋着に着替えて小休止。ベッドへ寝転がっても良かったのだが、汚れているだろうからと代わりに椅子へと腰を下ろした。

 

「あ"ー、疲れた。色々と──」

 

 もはや、習慣なのだろう。椅子へ座ると同時、カイトは無意識のうちに机上のパソコンを起動させていた。

 

「ありゃ、つい────あれ?」

 

 起動したパソコンを前に苦笑するカイト、しかし、ふと画面へ見慣れないブラウザが上がっていたことに気付く。しかし、彼にとっては、そのブラウザ画面は初めて見るものではない。

 

 立ち上がってきたブラウザ、それは数年前にカイトが所属していたハッカーグループが連絡を取り合うため独自に作成したチャットアプリ。

 

「誰かログインしてるな、懐かし過ぎるだろ──」

 

 カイトがハッカー紛いのことをしていたのは数年前、彼を含め4人のメンバーが所属していた。神出鬼没、しかし狙った標的には必ず侵入を果たすとして当時は話題のハッカーグループとして活躍していた。

 

 しかし、ブリタニア政庁サーバに到達するという偉業を成し遂げたことでグループは自然消滅、事実上解散しネット上から姿を消した。

 

 カイトの場合はカレンと共にテロリストになったから、というのが理由だが他のメンバーについて、その後の行方などを彼は知らない。

 

「えーっと──」

 

 キーボードへ指を滑らすと、ブラウザの画面が変わっていく。そして最後に辿り着いたチャット画面、そこには一文だけが記載されていた。

 

『J:誰か見ているかい?』

 

 左端はログインしているユーザー名、ハンドルネームだ。そして、このJという人物はカイトも馴染み深い古き盟友の一人。

 

『K:よ、久しぶり』

 

 目的は定かではないが、特に身構える必要はない。ネット上だけとはいえ、それなりに深い付き合いのあった関係だ。警戒することもないと、カイトは当時のハンドルネームであった"K"でログインし、何の気なしにキーボードで文字を入れた。

 

『J:K? 久しぶりだね、調子はどうだい?』

 

『K:ボチボチってとこ。そっちは?』

 

『J:至って順調、と言いたいんだけど…』

 

『K:どったの?』

 

『J:ああ、実は困ったことになってね』

 

 その後、Jが言う困ったことの詳細を聞いた。どうやら彼のリアル、つまりは現実での仕事が行き詰まっているらしい。

 

 要約すると、プログラム関係ではあるものの、お抱えのプログラマー達は早々にお手上げ。様々な部署を巡り巡って、最終的にJが問題を解決するハメになってしまったのだと言う。

 

 彼が困っている点は2つ、この問題を解決するために必要な知識と技術はJの苦手分野であるらしく、一人で解決するのは難しいとのこと。

 

 加えてJの職場はチェックが厳しく、他の企業へ助けを求めることができないらしい。他企業へ支援要請を進言しても、上司は認めず「お前がやれ」と一点張り。

 

『K:うっはw パワハラワロタw』

 

『J:こっちは笑い事じゃないよ(泣)』

 

『K:んで、ここに行き着いたわけか』

 

『J:そういうこと(苦笑) 戻ってきたとも言えるね』

 

 カイトはJが解決したい問題というのにも個人的に興味はあったし、なにより今のカイトは副業でプログラム関係の仕事をしている。ワラにもすがる思いで昔のアカウントを使い、彼等へコンタクトを図ってきたJの作戦は大成功だと言える。

 

『K:俺、いまプログラム関係の副業してるよ?』

 

『J:本当かい!? 手伝ってもらいたいんだけど…』

 

『K:おk、昔の馴染みだし安くしといてやるよw』

 

『J:お手柔らかに(苦笑) あ、でも一つ条件があるんだ』

 

 新たにクライアントを得たカイトは上機嫌だったが、Jからの条件という言葉に眉根を寄せる。彼が出した条件というのは、やはり職場が関係していた。

 

 彼の職場は社内データの持ち出しは基本的に許可されない、だが紙へ印刷すればルール違反だが見付からない限りは問題ないと言う。つまるところ問題を解決するためには実際に顔を合わせる必要がある、と彼は言う。

 

(俺がテロリストだと知られてる可能性はない、な。報道されるほど大きかった事件はシンジュク事変と、今日のスザク奪還作戦くらい。前者はナイトメアに乗っていたし、後者は顔を隠してた──うん、会ったとしても問題ないだろ)

 

『K:分かった。クライアントに従うよ』

 

 キーボードで了解の意思を示すと共に、カイトは副業用に使っているフリーメールのアドレスを叩く。

 

『K:じゃ、予定とか決まったらそっちに頼むわ』

 

『J:分かった、また連絡するよ』

 

 その一文と同時に、チャット画面とは別のポップアップが上がってきた。どうやら、Jがログアウトしたようだ。それが分かったカイトも同じようにログアウトし、ブラウザを閉じる。

 

「まさか、解散した後にオフで会うことになるとはね──」

 

 椅子の背もたれへ背中を預け、天井を眺めながらカイトは苦笑する。当時のことを思い出しているのか、どことなく楽しそうな表情た。

 

 そんな時、ふと自室と廊下を繋ぐ扉がノックされたのに気付く。次いで聞こえたのは、カレンの声。

 

「母さんがお風呂空いたから、先に入りなってさー」

 

「分かったー」

 

 カイトは椅子から立ち上がると、伸びを一つ。疲弊していたこともあり、一刻も早くシャワーでも浴びて床に着きたいと思っていたのを今さらながらに思い出した。

 

──そそくさとカイトは着替えを片手に自室を出ていく

 

──その背後

 

──脱ぎ捨てられた服の中

 

──音もなく着信で揺れる携帯電話

 

──サブディスプレイへ"ルルーシュ"と表示されたそれに

 

──気付くことなく

 

 

 

~scene out~

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。