コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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今回はちょっと文字数少なめです。




TURN5 皇女と魔女
Phase24


 

 スザク強奪事件から一夜が明けた朝、カイトは始業前に屋上へと向かっていた。一緒に登校したカレンとは校門で別れており、今は彼一人。

 

 重々しい扉を開くと、カイトの視界へ青々とした空が飛び込んできた。それと、鉄柵にもたれかかり仏頂面で待ち人が来るのを待っていたルルーシュの姿も。

 

「悪いな、夜中の電話。気付かなくてさ──」

 

「──いや、構わない」

 

 ルルーシュへと近付き、同じように鉄柵へ背中を預けるカイト。メールで始業前に屋上へ来いと指示を受けていたので、てっきりルルーシュが激怒していると予想した彼は肩透かしを喰らった気分だった。

 

「で、どうした? 何かあったの?」

 

「ああ、昨夜の話だ。帰ったら、あの女が目覚めていた──」

 

 ルルーシュが言う"女"が誰なのか一瞬わからず、キョトンとした表情のカイト。しかし、ふと思い出した。シンジュクゲットーで出会い、彼とルルーシュへ"力"を与えてくれた、契約相手の"彼女"のことを。

 

「あの娘か? それどころじゃなかったから完全に忘れてたけど、もしかして今まで意識なかったの?」

 

「そうだ。クローゼットへ放り込んで日々観察していたんだが、起きている様子はなかった──それなのに昨日、帰ったらナナリーと談笑していたよ」

 

「うわぁ──」

 

 その状況を想像してみて、カイトは露骨に嫌な顔をした。ナナリーからすれば、真夜中に自分達の住処へ見ず知らずの女の子が現れたようなもの。誤解しか生まない。

 

 帰宅するなりそんな光景を見せられたルルーシュに、さぞや生きた心地はしなかっただろう。と、カイトは心の中だけで合掌。

 

「ナナリーの方は誤魔化しておいたから、そっちはいい。問題はあの女に質問しても、はぐらかしたり無視したりで何も喋ろうとしないことだ」

 

「え? "力"のこととか、契約のことも?」

 

「ああ、ただ俺達が"力"と呼ぶこれは、"ギアス"と言うらしい。それ以外、昨夜は聞き出すことができなかった──おまけにベッドは占領するわ、脱ぎ捨てた服は床へ投げるわ、憎まれ口を叩くはとやりたい放題だ──ッ!!」

 

 なぜかルルーシュは彼女が喋らないという事実より後半のベッドを占領された、という辺りの方が語気が強い。

 

 よく見れば、ルルーシュの目の下にはクマらしきものも見える。どことなく彼が不機嫌に見えるのは、ベッドを占領されて満足に眠れなかったのが原因だろう。

 

「ってことは、たぶん俺が行ってもダメだろうね」

 

「おそらくは、な──」

 

 諦めの意思表示かルルーシュが溜め息を吐く、その様相にはいつもの覇気はなく、疲労が顔に浮かんでいた。

 

 そんなルルーシュの弱った姿を見ていられなかったのか、ふとカイトは屋上から下方へと視線を向ける。すると、一人の女子生徒が壁に向かって何かをしているのが見えた。

 

「ん? なんだ、あれ?」

 

「ああ、あれか。ギアスをかけて、どれくらい効果が続くのかテストをしている。"あれ"の他にも色々とテストをしているぞ、おかげで性質や制約、発動条件がだいぶ分かってきた」

 

 あれ、とルルーシュが称したのは何かで壁にХ印を付け去っていく女性徒。すでに壁にはいくつかのХ印が刻まれている辺り、一日一回だとしても、すでに数日は経過しているだろう。

 

 用意周到なルルーシュの行動に「へぇ」、と感心した様子のカイト。しかし、ルルーシュはそんな相手の反応を見て眉根を寄せる。

 

「で、カイト。お前は何か分かったのか? ギアスについて」

 

「─────────」

 

「─────────露骨に目を逸らすな」

 

 現時点でカイトができることは、触れただけで電子機器の情報を読み取ること。キーボードなどのデバイスを使わず、パソコンを操作できること。この二つ。

 

 では、その時の副作用はどうか。何か発動に必要な条件があるのか。制約はあるのか。そういった検証を、カイトは全く行っていなかったのだ。

 

「まったく、もう少し危機感を持てないのか──」

 

「悪い、たしかに勉強不足かもな。ちゃんとやっとく」

 

 やれやれ、と額を押さえながら苦笑するルルーシュ。場合によっては致命的になるかもしれないから強めに言ったが、彼は決して怒っているわけではない。

 

 信頼しているからこその、苦言である。

 

 自分にとってカイトは切っても切れない間柄、共犯者であり仲間、そして友人。色々と手を焼くこともあるが、ルルーシュは彼を放っておけない。

 

 何の制約も、しがらみもなく、お互いに思ったことを口にできる関係。自分の意を汲んでくれる時は、以心伝心とも思えるほどに自分の思考を読み、察してくれる。

 

 かつてルルーシュがそこまでの関係を築けたのは、枢木スザクだけ。あの頃は、もう彼以上の友人には生涯出会うことはないだろうと思っていた。

 

 だからこそ、スザクと話すことができない今、隣に誰も居なかったルルーシュは楽しくて仕方がない。カイトとの会話は楽しいと思えるし、居心地の良さを感じている。もちろん、ここへスザクが加わってくれるに越したことはないが。

 

「──っと、そろそろ授業が始まるな」

 

 そんなルルーシュの内心を知ってか知らずか、カイトはわざとらしく言い放つ。そして、彼は唐突に鉄柵から体を起こすと小走りに扉へと向かって走り出した。

 

 叱られるのは勘弁、と彼の背中が語っている。

 

 そんな相手を見てルルーシュは笑みを深くし、呼ばれるままに扉の方へ一歩を踏み出す。

 

──自分と、カイト、そしてスザク

 

──この三人が揃えば、どれほど楽しいのだろうか

 

──本当に、できないことなど無いと思える

 

──だからこそ、ルルーシュは決意を新たにする

 

 

 

(スザク、俺は必ず、お前を──)

 

 

 

 この場には居ない親友を思い、ルルーシュは屋上を後にした。新たにできた仲間、友人であるカイトと共に。密かな誓いを、胸中へ宿しながら。

 

 

 

~scene out~

 

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