コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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Phase30

 

 学園内を疾走するカイト、もはや恥も外聞もない。怒濤の如く舗装された校内路、植えられた木々や草木、とりあえず猫が居そうな場所を根こそぎ探して回っていた。

 

 周囲はお祭り騒ぎ、馬術部を始めとし運動系のクラブは軒並み参加しているようで声掛けや気合いの円陣組みが騒がしいこと、この上ない。行き交う者達は千差万別、様々なスポーツのユニフォーム展覧会と見紛いそうだ。

 

 そんな中、ハンズフリー状態にしたカイトの携帯電話へルルーシュから着信が入る。

 

『──カイト、いまどこに居る?』

 

「外だ、正面玄関からグラウンド方面に走ってるッ!!」

 

『よし、猫は校内の一階だ。その場所からならクラブ棟と本館を繋ぐ入口からが最も近い、そのルートを通って校内へ入ったら食堂方面へ向かえ。挟み撃ちにする』

 

「了解──ッ!!」

 

 指示を聞くや否や、カイトは急停止をかけ砂塵を巻き起こす。そして体のバネを利用し、直角の方向転換。火事場の馬鹿力もかくや、という重戦車ぶり。すれ違う生徒達も何事かと目を点にしている。

 

 だが、彼はそんな周囲の視線をモノともしない。

 

 ただ、ひたすらに突き進む。

 

 途中、ふとカイトの前方にカメラを持った生徒達が見える。どいつもこいつも、冴えないインドア派と全身で表現する一団。要約すれば、オタクっぽい集団である。

 

 その中の一人、望遠カメラを持ち、肩口からフィルムを弾薬の如く備える重武装のリーダー格らしき生徒が見える。彼こそはカレンファンクラブ(非公式)会員筆頭であり、カイトのクラスメイト。

 

 カイトとは毎日の如く「妹さんを下さい」、「死ね」という気さくなジョーク(?)を交わす程度の間柄。そんな彼が、突っ込んでくるカイトを見つけ声を張り上げた。

 

「あ、義兄さm「誰が義兄様だゴルァッ!!」──ぐっほォッ!!」

 

「「「た、たいちょォォォッ!!」」」

 

 少し離れた位置からカイトは跳躍、走ってきた勢いそのままにクラスメイトのこめかみへ右足を叩き込んだ。切り揉みのままに吹き飛ぶカレンファンクラブ(非公式)隊長、そのまま街路樹へと頭から突っ込んでいく彼をカイトは歯牙にもかけない。

 

 着地、同時にファンクラブ(非公式)会員達を一瞥したカイト。その背中には怒りのオーラが湧いており、瞳は射殺さんまでの覇気に満ち満ちている。

 

「──この件から手を引け、わかったな?」

 

「「「サーッ、イエッサーッ!!」」」

 

 一団はカイトへ向かい敬礼。

 

 彼等の反応に満足したのかカイトは、邪悪に口元へ弧を描くと再び走り出す。

 

 颯爽と本館から校内へと突入した彼は、食堂方面へと視線を向け──ようとしたが、ふと見知った顔を見付けて怪訝な表情。

 

 なぜなら、水着姿のシャーリーがカイトの方へ走ってくるからだ。すこし水気を帯びた競技用の水着は、彼女のスレンダーな体格を惜しげもなく際立たせている。そして何より、走るたびに上下へ大きく揺れる乳房は男子にとって絶大な破壊力を有していた。

 

「あ、カイト先輩?」

 

「──ああ、っと、もしかしなくても猫、探してる?」

 

 例に漏れずカイトも年頃の男子、"その気"はないにしても無意識のうちにシャーリーの体へ視線が行ってしまうのは正常で健全な反応だと言える。そんな彼の心情をよそに、シャーリーは切羽詰まった叫びを上げた。

 

「当たり前です、私達のキスがかかってるんですよッ!?」

 

 彼女と対面したカイトは、彼女との邂逅で少なからず理性を取り戻したらしい。先ほどまでの異常な威圧感は姿を潜め、代わりに首を持ち上げたのは羞恥心。少し頬を染め、溜め息混じりに彼は上着を脱ぐとシャーリーへと投げ付けた。

 

「うわっぷ──ッ!!」

 

 カイトの上着が頭から被せられ、シャーリーは急に真っ暗になった視界に驚きオタオタと慌てだす、いきなりのことで自分に何が起こったか分からないのだろう。

 

 しばらくは上着を頭から被り千鳥足だったシャーリー、しかし上着の向こうから顔を出した彼女は、ようやく自分へカイトの上着が投げ付けられたと理解できた。

 

 何故、上着を投げられたのか、すぐにそれを理解することが出来なかったらしく、シャーリーは呆けた表情をしている。彼女は、おそらく自分の魅力というものに気付いていないのだろう。そして、今の自分の格好にも。

 

 もしかしたら生徒会長の放送でキスがどうの、と言われ他のことに思考を回す余裕がなかったのかもしれない。そればかりは本人に聞くしかないのだが、すでに彼女は色々と失敗してしまっている。

 

「それは同感。ただ、せめて服は着てくるべきだったね。とはいえ今さら遅いし、仕方ないから、それ着ときなよ──」

 

「─────ぁ」

 

 カイトに言われて、シャーリーは初めて自分が水着姿のままであることに気付いたらしい。彼に投げられた上着を肩から掛け、自分の身を抱くように腕を交差させ顔を真っ赤にしてしまう。

 

「──ここ、こ、これは、ですねッ!?」

 

 もはや言い訳も何もない。カイトに会うまで自分の水着姿を衆目に晒していた事実と彼の気遣いで、シャーリーの思考は羞恥心に苛まれ完全にショートしていた。そのおかげか彼女は何かを言いたいらしいが、混乱しきった頭と震える唇から二の句は出てこない。

 

『──カイト、目標が転身したッ!! 多目的教室方面に向かっている、早くしろ、見失ってしまうッ!!』

 

 その時、カイトの耳に当てたイヤフォンからルルーシュの怒号が飛んできた。その声で本来の目的を思い出したカイトは、苦虫を噛み潰したような表情で唸る。

 

「──あ、やっべッ!! またな、シャーリーッ!!」

 

「──へ? ちょ、ちょっと、先輩ッ!!」

 

 いきなり踵を返すカイトは、シャーリーの言葉に振り返ることはなかった。そのまま走り去っていくカイト、その背中を見送りながら、シャーリーは彼の上着を握りしめる。

 

 色々と頭が混乱していた。それも原因なのであろうが、この時シャーリーは、カイトの異常な猫への執着を超絶的に曲解していた。つまり、カイトも生徒会メンバーへのキスを狙っているだのだろうか、と。

 

 実際のところ、彼は妹であるカレンの唇を守りたいだけなのだが、そんな事情をシャーリーが知る由もない。

 

 まだ知り合って日も浅い先輩、気さくで優しいという印象を受けた先輩、それが彼女、シャーリーがカイトへ抱いた第一印象。同じ生徒会メンバーとして頼れるようになってきていた今日この頃、"このような出来事"を通して見た彼はシャーリーの胸中へ疑念を生む。

 

(も、もしかして先輩、生徒会メンバーの誰かが好きなんじゃ──)

 

 と。

 

 では、誰にだろう?

 

 生徒会長? ニーナ? カレン、は妹なので除外。

 

 あとは、自分──

 

「──────いやいや、ないないないッ!!」

 

 湯気が出そうなほどに耳と顔を真っ赤にしたシャーリーは、「う"ぅ"」と唸る。彼女が恋心を抱いているのはルルーシュだ、自覚もある。だというのに何故カイトが生徒会メンバーの誰かへ好意を寄せており、それが自分へ向けられているかも、と考え至ったのだろうか?

 

(え、私って、こんなに移り気だったの──ッ!?)

 

 自分で自分が分からない。しかし彼女は、きっと"全ての原因はいま自分の肩へかけられている彼の上着のせい"にすると決めた。きっと優しくされたから、変に勘違いしているのだと決め付けた。

 

──まさにその通り、とは誰もツッコまない

 

 勝手にパニックになったシャーリーは先ほどの結論に至り、深呼吸しつつ思考を原点回帰。今の最優先事項、猫を捕まえて自身の唇を守るという使命を思い出し、人知れず気合いを入れ直した。

 

 

 

~scene out~

 

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