コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~ 作:あーさぁ
『──警告する、今なら代理人を──』
爆走させるトラック、その後方からスピーカーを通した声が降ってくる。バックミラーやサイドミラーで確認すると機関銃やミサイルを搭載した軍用ヘリが数台ほど飛んでいるのが見える。
というのも建設中の建物の脇、荷物搬入ルートを経由して再び高速道路へ乗った俺達は、ものの数分で軍用ヘリに捕捉されててしまった。
おいおいブリタニア軍、仕事早すぎだろ。
今にも泣き言を吐きたいが、隣にカレンが座ってる手前カッコ悪いところを見せるわけにはいかない。
「───ッ──」
その時だ、バックミラー越しにヘリの機関銃から火花が見えたのは。明らかな発砲音、少し遅れて外から聞こえたのは高速道路のアスファルトが弾丸で削られる不協和音。
(ちくしょう、撃ってきやがった──ッ!!)
けど、弾丸は一発もトラックへ当たっていない。どうやら今のは威嚇射撃、脅しだな。相変わらずスピーカーからは停車と投降を呼び掛けてる、「次は当てる」なんて決まり文句と一緒に。
まぁ、そんなこと言われたって止めるわけないわな。
苦労して奪った毒ガスだ、はいそうですか、って従えるわけがない。だいたい、ブリタニア軍がテロリストに威嚇射撃すること自体がおかしい。
なぜならエリア11で活動してるテロリストは大体が日本人、となれば日本人を奴隷扱いしてるブリタニア軍が威嚇射撃するわけないだろ。見付かったら撃たれて大破炎上、テロリストは死にました──ここまでがテンプレ。
──では、なぜ撃たないのか?
トラックを撃たない理由は一つしかない、毒ガスが積まれてるのを知ってるってこと。逆に言えば「次は当てる」なんざ言いながらも、実は当てる気はこれっぽっちもないってことだ。ブリタニア軍が攻撃して毒ガスが暴発したら、自分達まで被害に遭うもんな。
なんて分析したまではいいけど、このままじゃ互いに決め手に欠けるのも事実。いや、むしろ俺達が地下鉄へ潜るのが先だろうな。地下鉄へ入っちまえば、こっちのもんだと言える。
──けど、それはそれ、これはこれ
今後の活動とためにも地下鉄へ入るとこは見られたくない、あとは個人的に銃口を向けられたままってのが気に入らない。
それに──
「─────────」
もうね、助手席のカレンが今にも飛び出して行きそうなんですよ。いやいや、できることならグラスゴーに乗って戦闘とか、しないに越したことはないんだよ。なんて俺の思いも虚しく、カレンは荒々しく帽子を脱ぎ捨て助手席を立った。
「カイ兄、アレ使うから──」
「───────お、おう」
「麻布ルートから、地下へ入れる──」
あー、やっぱ行っちゃう?
お兄ちゃん、すっげー心配だよ。
いや、カレンに限って軍用ヘリに返り討ちに遭うとか有り得ないんだけどさ。心配というか複雑というか、ぶっちゃけこのまま全速力で逃げたいってのが本音。
なんて考えてるうちに、カレンは荷台のほうへ向かっていく。兄の心、妹知らずってか。
「なぁ、ここでアレ使うってのは?」
「──それじゃ虐殺よッ!!」
だよねー、まぁ俺も使う気なんかないけどさ。
「分かった、任せるよカレン。ただし、危なくなったらすぐ逃げること、それだけは約束してくれ」
『分かってる──向こうが逃がしてくれれば、だけどね──ッ!!』
通信機からカレンの声が聞こえた、それと同時にトラックが揺れる。サイドミラーから後ろを確認すると、薄赤にカラーリングされたグラスゴーがトラックの後方へ現れた。
『こいつの威力は、お前達も知ってるだろ──ッ!!』
通信機越しに聞こえたカレンの怒声、それを合図にグラスゴーの肩口からワイヤー付きの射出武装、スラッシュハーケンがヘリ目掛けて放たれた。
ヘリの速度以上のスピードで射出されたスラッシュハーケンは一機、また一機と凄まじい早さで敵を撃破していく。
よしよし、これなら大丈夫だろう──
──なんて思ったのも束の間
「なにィ──ッ!?」
トラックとグラスゴーより、さらに後方。俺達の背後へ、一機のナイトメアフレームが降下してきた。青紫でカラーリングされた機体、あれはブリタニア軍が主力として使ってるナイトメア、サザーランドだ。
おいおいおい、しかもアサルトライフル装備したガチ武装じゃねぇか。あいつら、ここで戦争でもする気かよ。それほど、この毒ガスってヤバい代物なのか?
「カレン、このままじゃ共倒れだ。お前だけでも逃げろ──ッ!!」
『でも、それじゃカイ兄が──ッ!!』
言い争ってる間にも、サザーランドはカレンが乗るグラスゴーへ銃撃してきた。いくらナイトメア同士の戦いだといっても相手は生粋の軍人、しかも機体性能まで向こう有利じゃカレンに勝ち目はない。
スラッシュハーケンで応戦してるけど、いつまで保つか──
──その瞬間、高速道路外から登ってきたのは
──新手のサザーランド
「────クッソ──ッ!!」
しかも、運転席めがけて銃を撃ってきてる。当たりはしなかったけど、俺はとっさに回避しようとしたせいで高速道路から側道へ誘導された。
なんてこった、さっそくルートを外された。
たしか、こっちはゲットーに続くルート。いくら奇襲を受けたとはいえ、こうも簡単に誘導されたんじゃカッコ悪いったらないな。
ともあれ、仕方ない、まだ捕まってはないからな。
心残りは一つ、カレンの安否だけだ。
「カレン、いいから早く逃げろ──ッ!!」
『──カ────く──げ──』
ノイズが酷くて、カレンが何を言ってるのか聞き取れない。そうこうしてるうちに、トラックが向かう先に大きなトンネルが見えた。地下鉄への入り口だ、あれに入れば時間は稼げそうだな。
「──カレン、無事でいろよ──ッ!!」
グラスゴーが降りたおかげで軽くなったトラックは、俺が限界まで踏み込んだアクセルに呼応して最高速度のままにトンネルを潜る。
バックミラー越しに、もう見えなくなったグラスゴーと、それに乗るカレンを置き去りにして。
~scene out~