コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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Phase4

「──クソッ、まさかハマっちまうとは──」

 

 カレンと別れてから数十分、俺は地下鉄の一角で毒を吐いた。というのもアクセルを踏み込めど、一向にトラックは進もうとしないのだ。

 どうやら泥のような剥き出しの地面へトラックのタイヤがハマってしまったらしい、大きい上に太いタイヤは盛大な音を立てて空回り。もちろん前も後ろもダメ、完全な立ち往生だ。

 

「ダメ、だな。仕方ない、保険だけは掛けとくか──」

 

 トラックには、いくつかの付属装置を取り付けてある。作戦に必要な発信器と通信機に加え電源供給用のコンセント、そして──万が一の場合の、自爆装置。

 自爆装置は文字通り、運転席の周囲へ爆薬を張り巡らせてある。ぶっちゃけ証拠隠滅と自決用の、できることなら使いたくない付属装置だ。

 なんて能書きを垂れたけど俺は自決なんてしない、というか無理。自分で言うのも何だが、そもそも俺にそんな度胸はない。それにカレンを置いて死ねるわけがないだろ、俺の死に場所はカレンの胸を予約済みだ。それ以外の死に場所はノーサンキューなのですよ。

 それはそうと、"どこ"とは言わないがカレンの奴も最近はずいぶんと育ってきててお兄ちゃんは嬉しいぞ。たまにチラ見してしまうが許せカレン、それは男に見るなって方が酷なもんよ。いやいや、ホントけしからん。

 

「──なんて、寝ボケてる場合じゃないな。とりあえず発信器は起動させとくか──」

 

 ボードのスイッチの一つを押し、ついでに扇さん達にも見付けやすいよう荷台のハッチを開放させた。

 さっさと扇さん達に見付けてほしいところだけど、まだ完璧じゃない。可能性の話だけど、先にブリタニア軍に見付かった時のことも考えておかないといけない。

 退路の確保は追々やるとして、陽動は欲しい。となると、いま俺が使える陽動といったら──自爆装置しかない。

 

「えーっと、どうせ通信機は地下だから使えないよな、外しちまおう。あー、接続とか細かい所は部品は壊れた端末のやつ使うか──爆薬の信菅と接続して、端末から電波飛ばすだけの機構を──」

 

 ダッシュボードから工具を取り出した俺はディスプレイが破損した端末を分解、さらに付属装置のカバーを外すと作業を始めた。

 機構は簡単、ボタンを無線にして遠隔操作可能にするだけ。エンジンは掛けたままだからバッテリーから電気の供給もあるし準備万端、あとは起爆スイッチ側の信号発信。とはいえ、こっちは数メートルの直接送信だ、地下だけど至近距離なら問題ないだろ。

 

「──こんなもん、かな」

 

 だいたい作業も終わった、ちょっとゴチャゴチャしてるけど、どうせトラックは動かないから大丈夫だよな。発信装置に早変わりした端末を握り直し、俺は大きく息を吐いた。

 さて、あとは扇さん達が来るのが先か、ブリタニア軍が来るのが先か、神のみぞ知るってやつだな。

 

──と、そこで、大きな音が荷台から聞こえた

 

(いまのは、何の音だ? 結構、大きな音だったな)

 

 何かが倒れ込むような大きな音が、間違いなく聞こえた。けど、今は何も聞こえな──いや、何か聞こえる。誰かが言い争ってるような、話し声だ。

 

「殺すな? だったらブリタニアをぶっ壊せ!」

 運転席の影からチラッと荷台を覗き込むと、誰も居ないはずの荷台に二つの人影が見えた。片方は黒髪、華奢な印象の学生服を着た少年──その対面に居るのは隠密部隊を思わせる格好の、たぶんブリタニア軍人。

 

(どういうことだ?)

 

 ブリタニア軍が居るのは分かる、扇さん達より先にブリタニア軍に見付かったってだけ。でも、あの学生は?

 最初、いや、玉城から毒ガスを受け取った時、荷台には誰も居なかったはず。どうやって荷台に入ったんだ、アイツ。

 コソコソと運転席を降り、二人の視界へ入らないようにしつつ様子を伺う。すると、ブリタニア軍人はヘルメットを脱いでいるのが見えた。その軍人は学生と同じくらいの年格好で驚いた。それに、さっきまでの剣呑な雰囲気は、いつの間にか緩んでるように思える。耳を澄ますと「久しぶり」なんて言ってるのが聞こえるから、二人は知り合いか?

 

──思考に耽っていた矢先

 

──突如として、二人の傍らに鎮座していた毒ガスが

 

──大きく鳴動し始めた

 

 おいおいおい、どういうことだよ──ッ!!

 こんな所で、いきなり何の前触れもなく毒ガスが起動するとか有り得ないだろ──このままじゃ、俺も、アイツ等も──ッ!!

 その時だった、機械の塊が左右へ割れ、出てきたのは──

 

「毒ガスじゃ、ない──?」

 

 てっきり毒ガスが詰まった装置だと思っていたのに、そこから出てきたのは煙でもなければ毒でもない。出てきたのは、長い緑色の髪と華奢な体つきの、拘束衣によって自由を奪われている女の子だった。

 荷台へと倒れ込む女の子、恐る恐る近付いていく二人。

 

「──毒ガスか? この子が?」

 

「しかし、ブリーフィングでは確かに──」

 とりあえず、と女の子の自由を奪っている拘束衣に手を掛けようとするブリタニア軍人と学生。

 まいったね、こりゃ。毒ガスだって兄貴の計画にあったから疑ってもなかったけど、それは偽物の情報だったんだな。出所にもよるけど、その辺りの下っ端には偽らなきゃいけないほどのモノ──それが、あの女の子か。

 

(奇襲をかければブリタニア軍人といっても相手は一人、見たところ銃の類いも持っていないし勝てる見込みはある──いっそのこと、この自爆装置を脅しに使って──)

 

──その時、今まで薄暗かった地下が光に照らされた

 

「この猿が、名誉ブリタニア人にそこまでの権利は与えていない」

 光のほうを見ると、ブリタニア軍の団体が居た。危ない危ない、勝てると思って出ていってたら間違いなく殺されてた。

 

「しかし──ッ!!」

 

 荷台から指揮官らしき奴へと駆け寄って行くブリタニア軍人の少年、いや、元日本人の名誉ブリタニア人の少年か。

 何やら指揮官もモメてるのが遠目で分かる、こりゃもう逃げるしかないかな。毒ガスだと思って連れ出した女の子と学生には悪いけど、俺は一足先に退散させてもらうわ。

 

──トラックから離れようとした、その瞬間

 

──"パンッ"と小気味良い音が地下へ響いた

 

(────なッ!?)

 

 視線を戻すと、指揮官の足元へ名誉ブリタニア人の少年が横たわっている。まさか、撃ったのかよ?

 いや、あの口振りだと指揮官は日本人への差別意識が高い。となれば、なんらかの理由で反論したり命令を聞かない名誉ブリタニア人を射殺するくらいやってのけるだろう。実際、撃ったっぽいしな。

 そして、その指揮官は手にする銃を、今度は荷台に居る学生と女の子へと向けた。雰囲気から、たぶん脅しじゃないなアレは。

 

(──────仕方ねぇな──ッ!!)

 

 俺は改造した端末のスイッチを、力いっぱい押した。

 

──すると、さっきまで俺が居た運転席が爆発した

 

──轟音と衝撃、そして爆煙が地下を蹂躙する

 

「─────────ッ!!」

 

 なにか叫んでいる指揮官が見えたけど、その姿が爆煙で遮られた瞬間、俺は物陰から飛び出し女の子を担ぎ上げ、同時に学生の腕を取る。

 

「────ッ!!」

 

 いきなりのことに驚いている様子の学生だったけど、構ってる暇はない。肩口へ女の子を背負ったまま、俺は強引に学生の腕を引きながら荷台から飛び降りた。

 後ろは、振り返らない。

 何度か銃声が聞こえたような気もするけど、怖くて振り向けなかったよ。水気を帯びた地面の上、ブリタニア軍の団体と距離を取るために──ただただ、俺はアテもなく、女の子と学生と共に全速でその場を後にした

 

 

 

~scene out~

 

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