コードギアス 反逆のルルーシュ ~全ての命に祝福を~   作:あーさぁ

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TURN2 覚醒する白の騎士
Phase6


 

 ルルーシュが放った言葉によって自らの銃弾に倒れたブリタニア軍人達、その光景を見下ろしながら俺は階段から抜け出した。血と硝煙の臭いが鼻に付くけど、そうも言ってられない。

 

「ルルーシュ、今のは──」

 

「ああ、おそらく今のが、契約によって得た俺の"力"なんだろう──」

 

 女の子が言った契約、力を与えるという言葉。それは予想通り、ルルーシュも聞いていた。そして、契約したのだろう。

 他人へ拒否できない絶対の命令を下せる力、それは本人の意思とは無関係に作用するんだろう。信じざるを得ない。なにせ『死ね』という命令に対し、迷いや躊躇いもなく自害する光景を目の当たりにした今では。

 なら、俺は?

 ルルーシュと同じように、普通では考えられないような常識を外れた"力"を得たのか?

 

(いや、考えるのはやめだ。在るかどうかも分からない力よりも、今はやるべきことがある)

 

「ルルーシュ、この状況、どう思う──?」

 

 そう、いつの間にかゲットーで繰り広げられていたのはブリタニア軍人による日本人の虐殺。その目的はゲットーそのものの破壊か、潜伏するテロリストの掃討か、はたまた俺達が強奪した毒ガス──いや、女の子の奪還か。

 

「おそらく、この女を探しているのだろう。炙り出すつもりなんだよ、この女と、お前達を──」

 

 やっぽり、そうだよな。となれば、この惨劇は俺達が招いたものだ。覚悟はしていたつもりだけど、目の当たりにした今では後悔の念が沸き上がってくる。

 でも、それでも──

 

「そうだよな、じゃあ俺は仲間と合流しなきゃ。お前はどうする?」

 

「────ん?」

 

 そう、俺には仲間が居る。そして、守りたい人も。

 さっき自害したブリタニア軍人のモノであろう銃を拾い上げた俺は、それを懐へ忍ばせ踵を返す。ここから立ち去ろうとした、その時──

 

──コンテナのシャッターが、爆音と共に弾け飛んだ

 

 爆煙の向こうから現れたのは、サザーランドだ。そいつはアサルトライフル片手に、頭部のファクトスフィアを展開して俺達を見下ろしてきた。

 

『ここで何があった? 答えろ、さもなくば──』

 

 オープンスピーカーを通して聞こえたのは、女性の声だ。いかにも軍人、といった厳格で高圧的な口調。それを聞いた俺がルルーシュへ目配せすると、彼は苦虫を噛み潰したような渋い表情で軽く舌を打っていた。

 マズいな、色々と──

 

『──答えろ──ッ!!』

 

 サザーランドが握るアサルトライフルの銃口が、火花を吹いた。すると風を切り、空気を貫いた弾丸が俺とルルーシュの周囲へとバラ撒かれた。尻目に背後を窺うと、鉄板でできた壁に人間の頭くらいの大きさの弾痕ができている。

 またヘヴィな状況だな、けど俺もルルーシュも、表情が歪むことはない。相手がどれだけ強くても、ルルーシュにはそれとは次元が違う"力"を持ってるんだから。

 

「"そこから降りろ、今すぐに"──」

 

 自害したブリタニア軍人へ言い放ったように、サザーランドへ向けて命令を放つルルーシュ。しかし、どうにも様子が違う。サザーランドは銃口を俺達から外すことなく、出てくるような動きはない。

 

『お前、何様のつもりだ──?』

 

 ル、ルルーシュの力が、効かないッ!?

 なんてこった、理由は分からないけどルルーシュの力が通用しないんじゃ打つ手なしじゃねぇか。焦燥感が沸き上がってくるのを感じながら、再びルルーシュへと視線を向けた。

 狼狽えているとは思わなかったけど、ルルーシュは無表情で冷静そのもの。そして俺へ目配せすると、軽く両手を上げた。

 

「私はアラン=スペイサー、父は公爵だ。横に居る彼はブリタニア人のエンジニア、偶然居合わせたのでゲットーを出るまで私の保護と同行を依頼した──私の内ポケットにIDカードが入っている。確認した後、私達の保護を頼みたい」

 

 それに連れられて、俺も同様に手を上げる。

 それにしてもルルーシュの奴、よくもまぁ咄嗟にあんな嘘が吐けるもんだな。ブリタニアは格差社会、貴族にも階級は存在する。そのヒエラルキーの最底辺に位置する軍人が持ってる昇格欲、それを利用した上手い嘘だ。要約すると"自分より階級が上の貴族の嫡子を助け、恩を着せれるチャンス"という罠。

 

(出てきたところを捕まえるのか?)

 

 スピーカーから聞こえた声は女性のものだった、なら軍人といえど俺とルルーシュの二人がかりなら取り押さえれるかも──

 

──なんて希望は、脆くも崩れ去った

 

 サザーランドのハッチが開き、ワイヤーを使って降りてきたのは、たしかに女性だった。褐色の肌に薄青の長髪、俺達より歳上なお姉さんといった風貌の。

 その手には、武骨な鉄の塊、銃が握られていた。

 

(デスヨネー、いくらなんでも丸腰なわけないか)

 

「二人とも手を上げたままでいろ、IDは私が出す」

 

 どうするんだよ、いきなり計画中ご破算じゃないか。どっちか犠牲になれば倒せるかもだけど、下手に刺激したら二人とも──ッ!!

 

「"寄越せ、お前のナイトメアを"──」

 

「─────え?」

 

 ルルーシュが、小さく呟いた。

 おい、それは効かなかったろ、今さら使っても──

 

「分かった、ナンバーはXG2IG2D4だ──」

 

 そう言って女性は右手で鍵らしきものを取り出すと、ルルーシュへ向けて放った。その瞳は、さっきブリタニア人が自害した時と同じ。わずかに赤く発光しており、その表情は無表情。

 

「ルルーシュ、力は効かなかったんじゃ?」

 

「いや、さっき効果がなかったのは発動させる時の条件を満たしていなかったからだ。"直接相手を見る"、という条件がな──」

 

 ルルーシュは女性から受け取ったキーを手の中で弄びつつ、さも当然のように言い放った。いや、それ推測だったんだろ。直接見ても効かない時のこととか、考えてたのかな?

 なんて、口には出さないけどね。

 

「カイト、ナイトメアの操縦経験は──?」

 

「ん? 作業用ならあるけど?」

 

「そうか、なら操縦はお前に任せる。話をするにしても逃げるにしても、まずはコイツを使って移動したほうがいいからな」

 

 俺へと放られたキー、それを受け取りつつ俺は溜め息を吐き出した。何だよ、つまりは足になれってことじゃねぇか。何様だよルルーシュの奴、王様気分かよ。

 

(あれ、そういえば──)

 

 ルルーシュの奴がブリタニア軍人に命令した時、引っ掛かる言葉を口にしたな。記憶を引き出した俺の脳裏に再生された先程の光景、その時に聞いたルルーシュの言葉は"ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアが命じる──"。

 え、ちょっと待て。

 ブリタニアが性名ってことは、もしかしてルルーシュは──

 

「どうした? 早く階段のところの女を連れて来い」

 

「え? あ、ああ──」

 

 ルルーシュの言葉で我に返った俺は言われるがままに階段へと戻り、いまだに意識のない女を担ぎ上げた。色々と気になることはあるけど、あえて今は言わないことにした。まずは、この場を離れることが第一だから。

 

「コックピットに3人は無理があるな、お前が乗り込み俺と女を運んでくれ」

 

「ああ、分かってる。振り落とされんなよ?」

 

「それは俺の台詞だ、無茶な運転はしないでくれ?」

 

 抱えていた女の子をルルーシュに担がせると、俺はいまだに呆けている女性の傍らを通り過ぎワイヤーを使ってコックピットへと上がる。

 中へ入ると計器やディスプレイが張り巡らされていて身動ぎするのも面倒な狭苦しさ、グラスゴーやトラックの運転席よりはマシだとは思うけどね。

 キーを挿し込むとディスプレイが淡く光りだし、周囲から機械の駆動音が響いてくる。よし、あとは──

 

──その時、俺の頭へ、鈍い衝撃が走った

 

「─────クッ──ッ!!」

 

 何かで頭を殴られたような感覚、軽い目眩で視界が揺れる。断続的に頭が割れそうな頭痛に苛まれる俺は、頭の中へ"何か"が入り込んでくるのに気付いた。

 

「こいつの機体名称はサザーランド(Sutherland)、形式番号はRPI-13、ブリタニアが量産する1人乗りの第五世代KMF。全高は4.39m、重量は7.48t。ランドスピナーによる機動を主とし、武装はスタントンファ、内蔵式対人機銃、スラッシュハーケン、アサルトライフル。搭乗登録者はブリタニア軍人の騎士候、ヴィレッタ=ヌウ」

 

 それが、俺の頭の中へ入ってきた"何か"。機体を起動させた途端、その機体の情報が俺の頭の中へ叩き込まれてきたらしい。

 何故かは分からないが、俺にはこの機体の動かし方や武器の使い方が直感で理解できる。どうやって操作すればいいのか、何を押せばいいのか、その全てを。

 

『どうした、何があった?』

 

 ディスプレイの一つに、女の子を抱えたルルーシュの姿が映っている。無意識のうちに機体のファクトスフィアを展開して、声と映像を拾っていたらしい。 

 

「いや、少し頭痛が──」

 

 その時、ふとディスプレイに俺の顔が反射しているのに気付いた。毎朝、顔を洗うときに見る自分の顔。もちろん今朝も見たはずの、見慣れた顔。けど、いまディスプレイに反射する俺の顔には、"見慣れないモノ"が映り込んでいた。

 俺の右瞳、瞳孔の部分で赤く輝く羽に似た形の紋章。それは契約する前に見たイメージの中にもあった、誰かの額に"コレ"と同じモノがあったはず。

 

──ああ、と納得した

 

 走馬灯のようなイメージの中で結んだ契約、頭の中へ入り込んできた機体の情報、そして、この瞳。そうか、これが俺の"力"なんだと気付いた。

 詳しくは分からないけど、出来るのなら使うまで。

 

「いや、大丈夫だ、行くぞルルーシュ」

 

 サザーランドに片膝を着かせ、手のひらを下ろす。ファクトスフィアでルルーシュと女の子が手のひらへ乗ったのを確認し、俺は溜め息を一つ──

 

「行くぞ──」

 

 直感のままに、俺はサザーランドを走らせる。痛んだ直後ほどじゃないけど、まだ断続的に続いている鈍い頭痛を意識しないよう努めながら。

 

 

 

~scene out~

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