砕蜂のお兄ちゃんに転生したから、ほのぼのと生き残る。   作:ぽよぽよ太郎

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第13話

 

 

 

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 「龍蜂。わ、儂はおぬしを好いておる……。儂の隣で、儂のことを支えてほしい」

 

 

 

 

 理性の箍の外れた音が、聞こえた。俺は一歩前に進むと、目の前に立つ夜一さんを抱きしめる。

 

 「ぬっ! ちょ、ろろろ、龍蜂!?」

 

 俺の胸に顔を埋めた夜一さんは、慌てたようにジタバタと慌てる。こうして抱きしめると、夜一さんは俺の身体にすっぽりと覆われてしまう。普段は頼り甲斐のある女性だが、こんなにも小さいのだ。女性らしい柔らかな感触が、さらに俺の頭を熱くした。

 

 「ろ、龍蜂! ううう、嬉しいのじゃが、もう少し落ち着いた場所でじゃな――」

 

 「――夜一さん」

 

 恥ずかしさからか俺から逃れようとする夜一さんだったが、俺は一段と力を込めて彼女を抱きしめ、口を開いた。

 

 「俺も、貴女のことが好きです」

 

 「はぅぁ……っ!?」

 

 夜一さんは一度大きく身体を震わせると、朱に染まった頬をさらに赤くしうっとりとした表情で俺を見上げた。なにかを期待するかのように、口から甘い吐息を漏らして。二人でしばらく無言で見つめ合っていると、夜一さんは静かに目を閉じた。

 

 「――ん……」

 

 そして、二人の唇がゆっくりと触れる。唇が触れた途端、不意に漏れた夜一さんの嬌声に俺の中の雄を掻き立てられた。媚薬のような甘い香りが脳髄へと浸透し、得も言われぬ酩酊感が俺を襲った。舌を入れてもいない、唇が触れるだけの口付け。たったそれだけのはずなのに、どうしようもなく彼女を愛おしく思えた。

 

 「――んはぁ……」

 

 どれくらいそうしていただろうか。どちらともなく、自然と俺たちは唇を離す。夜一さんはしばらくうっとりとした表情でぽけ〜としていたが、俺がそれを見て笑っていることに気が付くとハッと元に戻った。

 

 「ぬぬぬ……やはりお主、手慣れておるな……。(わ、儂は初めてじゃったのに……)」

 

 そして、どことなく悔しそうにしながら夜一さんが呟いた。最後のあたりはよく聞こえなかったが、キスをした時の様子から見るにこういう経験はほぼなかったみたいだ。こんな素敵な女性のファーストキスをもらえたのだと思うと、更にこらえようのない愛おしさが湧き上がってくる。男っていうのは単純なんだ。

 

 俺の顔の下で未だにあわあわしている夜一さんを見ると、微笑ましさと同時に征服欲すらも出てきた。我慢ができず、もう一度そっと触れるようなキスをする。そしてそのままそっと唇を離すと、夜一さんが名残惜しそうに目を開けた。先ほどよりもさらに顔が赤くなっているが、その表情はどこか不満そうだ。

 

 「も、もう一度じゃ……」

 

 彼女の要望に応えてもう一度そっと口付けを交わし、顔を離す。

 

 「もも、もっとじゃ……」

 

 さらにもう一度。

 

 「も、もっとぉ……」

 

 そして、夜一さんは再び呟く。その顔はこれでもかと真っ赤に染まっていて、とろんとした瞳はこれでもかと扇情的に輝いていた。

 

 ――もう我慢ならん。

 

 俺は左手を彼女の後頭部に添えると、もう一度唇を重ねた。もっちりとした彼女の唇を感触を感じると、俺はその唇に沿って舌を這わせる。

 

 「――っ……!?」

 

 夜一さんは驚いたのか一瞬身体をびくりと震わせるが、徐々に唇を開いて俺に舌をチロチロと当ててくる。まだ恥ずかしいのかぎこちない動きだったが、それがより俺を昂ぶらせた。

 

 「んちゅ、れろ、んふぅ、ちゅっ、あむ、ちゅぱ……」

 

 夜一さんはだんだんと慣れてきたのか、積極的に俺の舌へと自らの舌を絡めてくる。夜一さんは口内を行き来する唾液を愛おしそうに口で転がすと、時折ごくりと飲み込んでいく。ぴちゃぴちゃと唾液の混じる音が響き、それをBGMに俺たちはさらにお互いの舌を貪る。溶け合ってしまうんじゃないかというほどキツく抱きしめ合い、いつの間にか夜一さんも俺の首へと腕を回して積極的に口に吸い付いてきていた。

 

 「はむ、ちゅぶ、ちゅぷ、れろ、んむぅ、ちゅる……ん……ぷはっ……ぬ、あぅぅ……」

 

 数分か、数時間か。時間の感覚がなくなるほどお互いの唇を求め合い、ぷはっと顔を離す。夜一さんはしばらくうっとりとした表情で物足りなさそうに俺を見つめていたが、ふと我に返ったのか酔ったかのように頭をふらふらと揺らし始める。俺の右腕はいつの間にかムッチリとした夜一さんの尻を揉んでいるし、そのことにも気がついたみたいだ。そして、自らの下腹部に感じる硬い感触にも。

 

 ご覧の通り、正直言って俺の理性は限界を超えている。ここで止まれそうになかった。

 

 「夜一さん、俺――」

 

 だが、俺が夜一さんへと話しかけると――

 

 「――きゅう……」

 

 「うぉ!? 夜一さん!?」

 

 ボフンと音を立てて夜一さんの鼻から血が漏れ、そのまま俺のほうへと倒れ込んでくる。俺は少し慌てたが、どうやら意識を失っているだけのようだった。

 

 「あー……良かった……」

 

 こんなことで大事になったら修行どころじゃないからな。まあ、これで良かったんだろう。

 

 結局その後、このまま目覚めそうになかった夜一さんを寝床に運んで、俺も昂った気を鎮めてから眠りにつくことにした。夜一さんの持って来た二人用テント(←ここ重要)で寝てしまうと我慢ができなくなりそうだったので、わざわざ外に寝袋を持って来て外で寝たんだけどな。

 

 一応、昂りを鎮めるために少し離れた場所でソロプレイを敢行した。お供はもちろん先ほどの夜一さんの艶かしい肢体と痴態だ。うん、久しぶりのソロプレイだったが、お供が良かったのかとんでもなく気持ちが良かったな。

 

 

 

 

 

 

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 その後、修行は一応ギリギリ三日間で終わった。

 

 一日目とは違い二日目、三日目の鳴神は異様に攻撃的で容赦がなかったため、何度も瀕死の重傷を負うことになった。念のために、と持たされた”()()()()()・喜助印の特殊丸薬Ver.3”をバリボリと咀嚼することで無理やり動けるようにして、なんとか乗り切ったという感じだ。

 

 正直もう無理か、と何度も思った。

 

 しかし、最終的には鳴神とわかりあうために思ったことを伝えながら拳を交わしたのだが、何故だかそのあたりから徐々に鳴神が顔を赤くし動きが鈍っていったのだ。そしてその結果、なんやかんやあって鳴神が渋々俺のことを認めてくれたというわけだ。夜一さんがやけに拗ねていたのが気になったが、可愛かったので良しとしよう。

 

 なお、肝心の副作用だが精力の増強という意味のわからないものだった。喜助は面白がってそんな感じにしたんだろうが、俺としては最悪の副作用である。特に二日目なんかは。

 

 一日目にお互いの気持ちを伝えあい、しかも最後まで行く前に夜一さんの失神でお預け状態だったわけだが、その夜一さんが恥ずかしがって俺と目を合わせてくれなかったのだ。修行が終わってからもあうあうと言って俺を避けていたため、仕方なく俺は一人で温泉に入って疲れを癒していた。そしてそこで、例の丸薬の副作用が現れてしまった。ギンギンに昂った俺の逸物はそれはもう立派な自己主張をしていて、しかも間の悪いことにそこで夜一さんが入ってきてしまった。

 

 それからはもう、あっという間だった。なぜだか夜一さんのほうから好きにして良いと言い出したため、散々彼女を貪ってしまったのだ。まさかとは思ったが予想通り夜一さんは初めてだったので、最初はなけなしの理性を総動員してなるべく痛みを感じないよう丁寧に事を運んだ。ある程度夜一さんが慣れてからは……まあ、言わずもがなだ。お互いぐしょぐしょになるほど乱れ合い、夜一さんに至っては何度も気をやってしまうほどだった。

 

 三日目の修行は案の定さらに厳しいものになったが、そこはもう丸薬ドーピングと気合で乗り切った。結局最後のほうは鳴神が拗ねてしまったため、今度斬魄刀の中で埋め合わせをすると言ったら修行が終わったのだ。気が付いたら卍解を使えるようになっていた。なにを言っているのかわかr(中略)。うむ、不思議なこともあるものだ。

 

 

 

 

 

 とまあそんなこんなあって、俺は今洞窟内から出て瀞霊廷内を歩いていた。ニヤニヤとした笑みを浮かべて眠る夜一さんを背負いながら。

 

 なんでこうなったかといえば、一言。

 

 「……ヤリすぎた」

 

 そう、三日目の修行を終えてから俺と夜一さんはそのまま翌日まで交じり合い、お互いを求めあっていたのだ。そのまま朝方にはベトベトのぐしょぐしょになってしまっていたため、汗やら体液やらを流そうと温泉へ。それでそのまま気分が盛り上がり、最後にもう一戦。そこで夜一さんに限界が来て、幸せそうな表情のまま眠りについてしまったというわけだ。

 

 ピロートークで知ったことなのだが、夜一さんは丸薬の副作用を知っていたみたいだ。喜助から教わっていたらしい。全く、喜助め……よくやった!

 

 いやーしかし、ここまで欲望のままに求め合うことになるとは……。我ながら恥ずかしかった。あれじゃあまるで獣じゃないか。いや、夜一さんがエロくて良かったんだけどさ。

 

 背中に感じる愛おしい存在に想いを馳せ、俺は自然と笑みを浮かべる。

 

 動乱の気配は、着実に近付いてきていた。そして、いずれ起こる悲劇も。だがそれでも、こうして笑っていられる日々を精一杯楽しもう。

 

 覚悟を新たに、俺は前を向いて歩き始めた。

 

 ――ていうか、通り過ぎる人たちがみんな、微笑ましいものを見るような笑顔を向けてくるのは一体なんなんだ……? なんというか、出歯亀根性を感じるというか……。

 

 とにかく居た堪れない気持ちになった俺は、足早に夜一さんの家へと向かうことにする。背中で眠る夜一さんが、小さく笑った気がした。

 

 

 

 

 

 





 

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