砕蜂のお兄ちゃんに転生したから、ほのぼのと生き残る。   作:ぽよぽよ太郎

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あけましておめでとうございます。
更新が大幅に遅れたことについては、本当に申し訳ありません。
まったり更新な本作ですが、どうか今年もよろしくお願いします。

新章のプロローグです。

*注意*
本日は2話更新しています。ご注意下さい。
こちらは1話目です。





第2章 尸魂界動乱編
第22話


 

         +++

 

 

 

 

 瀞霊廷にある霊術院の屋上。真央霊術院一年一組の生徒たちは、魂葬実習のためにこれから現世へ向かうところだった。特進学級として将来を期待される生徒たちだったが、初めての実習、初めての現世ということもあり、この時ばかりは学生らしく浮かれていた。

 

 「まずは簡単に自己紹介しとくぞ」

 

 今回の引率、真央霊術院の六回生である檜佐木修兵が自己紹介を始めると、一部の者を除き生徒たちの間にどよめきが走った。その名は非常に有名なものだからだ。霊術院の卒業前に護廷十三隊への入隊が決定している六回生で、将来的には席官入りも確実と言われている麒麟児。それが、彼らの引率を行う檜佐木修兵だった。

 

 彼の後ろに控えるのは蟹沢と青鹿という六回生で、それぞれが鬼道と斬術を得意としていた。檜佐木と比べれば劣る部分はあるものの、彼らも六回生の中では有数の実力者である。これ以上ないというほど恵まれた環境だといえるだろう。

 

 「それじゃ、ここからは三人一組で行動してもらうわ」

 

 蟹沢の言葉で、生徒たちはそれぞれが持つ紙を見た。そんな生徒の1人、雛森桃の持つ紙には、デフォルメされた黒い髑髏が書いてある。

 

 「誰と一緒なんだろう……?」

 

 雛森は若干不安そうにしながらも周囲を見る。すると、同じマークを持つ二人が目についた。阿散井恋次と吉良イヅルの二人だ。

 

 「……あの……」

 

 顔見知りではあるものの、雛森は彼らと特別頻繁に話すわけではない。そのため、少し自信なさげに問いかける。

 

 「よ、よろしく……」

 

 「何だ、雛森か。よろしくな」

 

 「……!」

 

 雛森に気がついた恋次は返事を返すが、イヅルは何かに驚いた様子で固まってしまう。雛森はそんな様子を不思議に思うが、そこで檜佐木の声が響く。

 

 「各自、地獄蝶は持ったな?」

 

 その声に、三人は慌てて地獄蝶を取り出した。

 

 「――行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 「……なんつーか、思ってたより全然ラクだったな。魂葬ってなもっと面倒なもんだと思ってたぜ」

 

 「そ、そうだね……」

 

 所変わって現世のとある街。一組の面々はとあるビルの屋上にて魂葬実習を行っていた。魂葬とは、斬魄刀の柄尻の部分を死者の額に押し付け判を押し、その魂を尸魂界(ソウルソサエティ)へと送る儀式である。死神の基本的な業務であるため、霊術院の生徒は在学中にこうして現世で実習を行うことになっていた。

 

 初めてということもあり力みすぎて魂魄に痛みを与えてしまう生徒もいるが、実習自体は概ね順調に進んでいた。雛森、恋次、イヅルの三人も、すでにノルマである二回の魂葬を終えて残った班が魂葬を終えるのを待っているところだ。

 

 班を組んでからどこか落ち着かない様子のイヅルは、待っている間斬魄刀を出したり仕舞ったりしてカチャカチャと音を立てていた。貧乏揺すりに似たようなものだろう。

 

 きっと自分と同じように、緊張しているのかもしれない。雛森はそんな彼の様子からそんなことを思い、密かに親近感のようなものを覚えていた。もちろん、ただの勘違いである。

 

 そうこうしていると、最後の生徒が魂葬を終えた。これで実習が終了というわけだ。

 

 後は檜佐木らの指示で穿界門を開き、尸魂界(ソウルソサエティ)へと帰るだけである。終わりが見えたからか、雛森はどっと疲れがやってきたような気がした。実習中、良くも悪くも個性的なこの二人に色々と振り回されたせいかもしれない。

 

 それは雛森だけじゃなく、一組の生徒たち全員も同じようだった。大小の疲労を抱えているようで、彼らの間には来た時ほどの喧騒はなかった。

 

 「よし、集合! 以上で本日の実習を――」

 

 全員が尸魂界(ソウルソサエティ)へ帰った後のことを考えながら、檜佐木の指示に従い集まろうとした時、それは起こった。

 

 「……ひ、檜佐木く……きゃあ――ッ!」 

 

 引率役の一人、蟹沢の悲鳴。そして、轟音。

 

 雛森は思わず、悲鳴の聞こえたほうへと目をやる。そこにいたのは、両手に大きな二本の爪を持つ巨大虚(ヒュージ・ホロウ)――大半の生徒たちにとっては、初めて目にする本物の(ホロウ)だった。

 

 先ほどまでそこに立っていた蟹沢の姿が見えないことから、雛森は最悪の想像をしてしまう。虚と対した死神に等しく訪れる可能性を。他の生徒たちも、あっという間の出来事に反応できずにただ顔を青くしていくだけだった。檜佐木や青鹿も同じで、突然の事態に動くことが出来ないでいる。

 

 だがそこで、彼らは(ホロウ)の前に立つ一人の死神に気が付く。彼は黒い長髪を白い布で後ろに一本でまとめていて、垂れた部分が風に吹かれて尻尾のように揺れている。身長は高く、線は細い。だが、見習いの彼らから見ても実力者だということがわかる佇まいをしていた。

 

 「――あ、あれは……?」

 

 彼の脇には目をぱちくりさせたまま固まる蟹沢が後ろ向きに担がれていて、緊迫した状況に酷い違和感を投じていた。

 

 この死神は、一体誰なのだろうか? 雛森はもちろん、生徒たちの間にも疑問が広がっていく。

 

 魂葬実習は頻繁に行われる行事であり、それに一々死神の護衛が就くことはありえない。だからこそ、この死神がなんなのか検討もつかなかったのだ。

 

 「――おい、檜佐木修兵」

 

 左肩に蟹沢を担ぐ彼は右側から顔だけこちらへ向けて、檜佐木へと声をかける。右耳付近の髪も編み込んで後ろに流しているため、鋭利な瞳がはっきりと見えた。彼は落ち着いついた低めの声で、それを聞いた雛森たちは次第に冷静さを取り戻していった。

 

 「()()()()の相手は俺がする。お前は生徒たちを連れてさっさと逃げろ」

 

 彼はそう言うと、抱き抱えていた蟹沢を地面に下ろす。蟹沢は腰が抜けているのか、下ろされたと同時に地面に座り込んでしまう。降ろされた後も蟹沢は事態が理解できていないのか、戸惑った表情のままその死神を見ている。

 

 そこに慌てて檜佐木と青鹿が駆け寄り、蟹沢の無事を確かめた。幸いにも怪我がないようで、彼女はただ困惑の表情を浮かべているだけだった。檜佐木はそれを確認すると、その死神へと向き直る。

 

 「蟹沢を助けてくれたことは感謝する。だが――」

 

 それを受けて、生徒たちはやはり彼は檜佐木の知り合いであるのだろうと思い、安堵の息を吐いた。

 

 護挺入りが確実視されている檜佐木なら、死神の知り合いくらいはいるだろう。大方、護廷十三隊入りする檜佐木の普段の様子を見るためにどこからか見守っていて――

 

 「――一体誰なんだ、あんたは?」

 

 ――知らねぇのかよッ!!!

 

 だが、そんな生徒たちの現実逃避気味の考えも檜佐木の叫びで潰える。この瞬間、生徒たちの心の叫びは一つになっていただろう。

 

 「この実習に死神が来ることは聞いていないし、あんたはこの街の担当者でもない――」

 

 ――はずだ。檜佐木がそう言おうとした所で、謎の死神を警戒していた(ホロウ)が動き出した。雛森にはそれが見えていて、思わず悲鳴を上げてしまう。ちょうど、その死神が檜佐木のほうへと振り向こうとしていたところでもあったからだ。

 

 だが――

 

 『ギィヤァァァ――!!!!』

 

 その(ホロウ)は腕を振りかぶったところで、悲鳴を上げた。そして、ズルリと顔が、身体がズレていく。縦に真っ直ぐ、綺麗な真っ二つになって。

 

 叫び声とともに消滅し、辺りに静けさが戻った。檜佐木もその光景に驚いているようで、何も言えずに固まっている。

 

 先に動いたのは、謎の死神だった。

 

 「――(ホロウ)はこいつだけじゃない。さっさと生徒たちを穿界門へ」

 

 「――あ、あぁ……」

 

 檜佐木は未だ呆然としながらも、尸魂界(ソウルソサエティ)への連絡を済ませると青鹿に指示を出す。実習中に(ホロウ)に襲われ、たまたま付近にいた死神とともに撃退した、と。そして、まだ(ホロウ)が存在する可能性があるため、援軍を求めるということも。

 

 一方の青鹿は、立ち上がれるようになった蟹沢に穿界門の解錠を任せ、自身は雛森ら生徒たちのほうへと走った。自分たちを含め、一刻も早く避難しなくてはならない。先程のレベルの(ホロウ)には、未だに未熟な自分たちでは全く太刀打ちができないからだ。

 

 「……せ、穿界門が開いたらすぐに尸魂界(ソウルソサエティ)へと戻る。こっちに集まって、じっとしているんだ」

 

 謎の死神に当てられ冷静さを取り戻していた生徒たちは、特に混乱することもなく指示に従う。もちろん、雛森や恋次、イヅルもそれに従っていた。だが、恋次は少し不満そうにしている。

 

 「俺らだって死神見習いなんだ。それなのによくわかんねぇ死神に全部任せっきりで、(ホロウ)から逃げちまっていいのかよ……」

 

 その言葉はもっともだ。雛森も、口には出さないが憤りは感じていた。それでも、今はわがままを言って迷惑を掛けるわけにはいかず、渋々青鹿の指示に従って穿界門のほうへと小走りで駆け出した。

 

 そうこうしているうちに穿界門が開き、生徒たちが続々とそれをくぐっていく。

 

 だが、不意に雛森は先程まで感じなかった霊圧の高まりを感じた。丁度、穿界門へと向かっている()()()()()()()()。他の生徒たちも一瞬遅れて気が付いたようで、慌てて雛森たちの上を見上げる。そこでは新たな巨大虚(ヒュージ・ホロウ)が現れていて、不気味な顔で雛森たち三人を見ながら落ちてきた。

 

 「「「う、うわぁぁぁ―!」」」

 

 他の生徒たちも、叫び声を上げながら穿界門に駆け込んでいく。次は自分たちが襲われるかもしれないのだ。慌てないほうがおかしいだろう。

 

 (――そんな! 霊圧を感じなかった!)

 

 その事実に愕然としつつ、雛森も恋次やイヅルとともに穿界門へと走り出した。立ち止まっていたら、いや、今走り出したところで間に合わないだろう。雛森は恐怖に身が竦み、身体が崩れ落ちそうになる。恋次やイヅルも同様だった。

 

 だが、そんな彼女たちの頭上で轟音が響く。驚いて見上げると、白打で巨大虚(ヒュージ・ホロウ)を殴り飛ばした死神の姿があった。彼の力は圧倒的で、その一撃で巨大虚(ヒュージ・ホロウ)はボロボロと崩れて消滅していっている。

 

 (――すごい。これが、本物の死神の力……!)

 

 雛森は安堵とともにそんなことを思い、尊敬の目で死神を見上げた。恋次やイヅルも、同じように死神を見上げて立ち止まっている。

 

 だが、その時、不意に死神へと何かが巻き付いた。白い蛇のような、霊力の塊が。そして、雛森にはそれがなんなのかを理解できた。鬼道を得意とする雛森だからこそかもしれない。

 

 (――鬼道!? 一体、誰が……!?)

 

 そして、それが巻き付いた死神の周囲に複数の巨大虚(ヒュージ・ホロウ)が現れる。その数、十体。

 

 「――危ない!」

 

 雛森はたまらず叫んだが、現実は無情だった。身動きが取れなくなっているその死神を、巨大虚(ヒュージ・ホロウ)の攻撃が襲う。ゴウッという鈍い音とともに、死神の身体は棒きれのように吹き飛んでいった。

 

 「そ、そんな……」

 

 唯一の希望が呆気なく退場したことに、三人を始めとした残った生徒たちに動揺が走る。

 

 「呆けてないで、さっさと穿界門へ急げ! ここは俺が食い止める!」

 

 死神が吹き飛ばされた様子を見た檜佐木は、咄嗟に斬魄刀を抜いて残った生徒たちにそう言った。構える武器はただの浅打ちだが、ないよりはマシだ。そう自分に言い聞かせながら、檜佐木は決死の覚悟で宙にいる(ホロウ)たちを睨んだ。

 

 だが、多勢に無勢なのは火を見るよりも明らか。どう考えても、檜佐木に勝ち目はなかった。

 

 そんな檜佐木を見て、雛森は駆け出そうとした足を止めた。

 

 「何をしてるんだ、雛森君! 止まっちゃダメだ!」

 

 イヅルは立ち止まった雛森を見て慌てた様子で叫ぶ。

 

 「どうして……あたし達みんな逃げてるの……?」

 

 その言葉に、恋次も驚いて立ち止まる。 

 

 「何言ってるんだ! 逃げろって言われたじゃないか!?」

 

 「助けようなんて思うなよ! オメーも見たろ!? 先輩だけじゃなく、正規の死神だってやられたんだぞ! 俺ら一回生が何人かかっても――」

 

 だが、イヅルや恋次の制止も聞かずに雛森は静かに浅打を抜くと、一息に駆け出した。

 

 「あ! 雛森君!」

 

 イヅルは雛森を止めようと手を伸ばすが、その手は敢え無く空を切る。そのまま二人は遠ざかっていく小さな背中を見送り、その一瞬後で我に返った。

 

 「「くそっ!」」

 

 そして、二人も毒づきながら雛森を追って走り出す。

 

 

 

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