・「転校生」の一人称であり、「」付の台詞は喋らないという形式です
・思いついたらと言うか書きたくなったら書くだけなので不定期です
・前書きに書いていなければ全ての話に繋がりはありません。短編でしかない
・SSRほぼ未所持の微課金なので設定面の把握など甘い所が多いです
この魔法学園で、僕は「転校生」と呼ばれている。勿論あだ名である訳だけれど、これが中々浸透し過ぎている。僕の本名を呼ぶ奴なんてまずいない。この学園に来てから一年以上経ち、僕の後から転校してきた奴なんていくらでもいるようになったのに――だ。
まぁ、理由は分かる。僕は魔法を使う事が出来ないが、代わりに他人に魔力を受け渡す事が出来るなんていう唯一無二の力を持っている。本当に、これは世界でも僕一人だけしか持っていない特性らしい。それは学園生達にとって特別な事だ。僕がいるかいないかでは出来る事が全然違う。戦略的に自分がどれだけ大事なのか、この一年と少しで僕は嫌ほど思い知っている。
まぁ、と言う訳で。僕は僕と言う個人よりも、「魔力を受け渡す事の出来る転校生」としてまず名前が知れたのだ。
生徒会でも風紀委員でもどこもかしこも「あの転校生」で通じるし、僕と親しい人でも他人と話す時は「転校生さんの事ですよ」と言った方が伝わりやすい。しかも外部に僕の能力が漏れてはいけないので「学園生は全員分かるが、他の人間が聞くと誰の事だか分からない」この言葉は一種暗号めいた意味を持つ。
濃密な活躍をした初めの数か月で、僕は「転校生」として定着してしまった。
寂しくないと言えば嘘になるが、まぁ皆悪気がある訳じゃないので別に良い。むしろ皆僕の事を信じてくれているのは分かるし、転校する前よりも毎日が充実しているぐらいだ。
さらに言えば女の子達の内、僕の事を、その、恋愛対象――として、見てくれているんじゃないか、と思う子もいる。今そうでなかったとしても、僕の方から押せばどうにかなるんじゃないのかな、とか。思ったりもする。
でも、問題がある。
それは僕達が命がけの戦いをしていて、僕自身には戦闘能力なんてないって事。僕の武器は皆の信頼だけだ。
さらに言うなら――僕は彼女いない歴=年齢と言う奴だ。上手な恋愛なんて出来るつもりはない。
僕だって高校生の男の子だ。女の子とそういう関係になりたいという欲もある。
だが状況が許さない。修羅場なんて作ってしまえば、僕も学園生の皆もすごい大変だ!
「……まぁ、お前の気持ちは分かるよ。うん。いや許しはしないけど……うわっ、泣くな泣くな」
そんな愚痴を、僕は執行部のうのすけさんに零していた。
うのすけさんは過去の大きな戦いで命を落とした魔法使いだ。なんやかんやあって機械の身体となって蘇り、記憶の全てを失ってこのグリモアに所属する事になったらしい。うさぎのぬいぐるみの外装を纏いよく校門の前に浮いている。
ただのスケベなおっさんにしか思えないうのすけさんだが、そこはそれ一応大人の男。学園の数少ない男子と友人になる機会を逃した僕にとっては唯一と言っていい『相談できる男』である。
なにせ、男は女より魔法が弱いのが基本なのだ。こういう風に全方面から頼られて言っちゃ悪いがハーレム状態の僕は妬まれたり、気後れされたりする訳である。
「くそっ、羨ましい……羨ましいが……うん、まあ、そだよな。一人に絞れないし、絞っても問題ありありだもんな。分かるぜ……今夜は飲もう……」
とは言っても僕は未成年でうのすけさんはそもそも飲食出来ないのだが。
気分だけグラスに水を注ぎ、うのすけさんと乾杯した。あぁ、明日は生徒会への協力と風紀委員の手伝いと茶道部の買い出しと園芸部と薔薇園の様子を見て料理部に簡単に出来る料理も教えてもらうんだったな精鋭部隊に言われている訓練も欠かしちゃいけないそれから散歩部と天文部で夜の散歩から星を見に行って――
そんな僕は、多忙だけど魔法学園グリモアでわりと楽しくやっています。命の危機と修羅場の危機は胃が痛いけど。