姫ギルな我の周りには変な雑種共が多すぎる 作:招き蕩う黄金劇場
人は、特典つけて転生できると聞いたらどうするか。
もちろん、『王の財宝』とか『一方通行』とかを特典に貰って最強の存在になるに決まってる。
たまに、「俺は努力で強くなるから宝具とか超能力とかいらねえッ!」とかいう稀有な奴も居るには居るのかもしれないが、大抵の奴は努力とかなしで最強の存在になる方を選ぶに決まってる。
それで、いざ特典に『王の財宝』に黄金律Aなどのギル様ステータスを貰って転生して、俺は最強だー!!って叫んでみたり。
しかし、そういった小さな幸せというものは、えてしてぶち壊されるもので。
「どうしてこうなったのだ……」
今現在、俺は公園の車イス用のお手洗いの鏡の前で立ち尽くしていた。
輝く白雪のように白い肌と煌めく金髪に全てを見通すような紅眼、服装は白いシャツに蛇柄パンツと、これだけであれば
これでどんな阿呆でもわかるだろう。俺は人類最古の王のスペックを手に入れた代わりに、女体版ギルガメッシュ――通称姫ギルになってしまっていたわけで……。
これでも男に戻ろうと『王の財宝』で性転換薬を出そうとしたのだが、全然出てこない。エリクサーやら不老不死の薬やらは出てくるのに、性転換薬だけ全然出てこない。人類最古の王が性転換薬程度、持っていない筈が無いのだが。
さらに、何かの謎エネルギーによって口調までギル様口調になる始末。
「はぁ……王たる我がこの世界で力を振るう手筈であったのだがな。おのれ……我は一度たりとも
俺はお手洗いを出ると、現実逃避気味に公園周辺の散歩を始めた。
「うわっ、なんだあいつ」
「エロ本の臭い嗅いでるぞ、ヘンタイだ!」
暫く歩き、少し広い通りに出たときであった。突如、通りを曲がった先から小学生の大きな声が聞こえてきた。どうやらエロ本の臭いを嗅いで興奮するという特殊性癖の御仁がいるようだ。朝っぱらから堂々と人前で臭いを嗅ぐとは……なかなか胆も据わっているらしい。
「やっべ、エロスメルがこっち見てんぞ」
「はは、あいつ絶対ドーテーだぞドーテー」
これらの声を最後に小学生達が駆けてきた。皆が爆笑している。そこまで面白おかしいやつなのか、エロスメル(仮名)さんは。どんな人なのだろうか。
俺は純粋に、そのエロスメル(仮名)さんに興味が湧いたため、通りを曲がることにした。
そして、いざ通りを曲がってみると――
「……抱いてください」
高校生くらいのイケメンが、五十歳くらいのデカいおばさんを口説いている?現場に遭遇してしまった。どうやらこのイケメンがエロスメル(仮名)さんのようだ。
デカいおばさんはイケメンの言葉を聞くと、その目に獲物を狙う狼の如き鋭い光が宿る。
「奏ちゃん……ついにっ」
おばさんが体を前に屈めて――
「ちょ、ちょっと待った、今のなしっ――」
「いただきますっ」
――イケメンに突進した。それはもう闘牛みたいに。
そして、おばさんはそのまま突進の勢いで、イケメンに抱き付く。イケメンは断末魔のような叫びをあげた後、ギブ……ギブと掠れた声を苦しそうに出す。
十数秒経った頃、おばさんは「ごちそうさま」とイケメンをを解放してヌフフとニヨニヨしながら去っていった。
俺は一連の出来事につい思考がフリーズしてしまう。気が付いたときにはイケメンは、俺がつい先程通った十字路に差し掛かっていた。
そして、追いかけようと右足を踏み込んだ瞬間、俺は空を舞っていた。文字通り、空を。雲が昇る空を。
「キャアアアアアアアアア!?そ、空アアアアア!?」
俺のソプラノボイスの叫びは、落ちていく体が奏でるゴーゴーという風の音に虚しく掻き消されたのだった。