姫ギルな我の周りには変な雑種共が多すぎる   作:招き蕩う黄金劇場

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一話 姫ギル様は甘草君とチャラ神と邂逅する

急に生身で空に放り出される。

そんな非現実的な経験を持つ人間は居ないと思う。もし、そんな経験を持った人が居たのなら、現在進行形で地上へ落下していく俺に助言を授けてくれ。

現実逃避を繰り返しても、上空から落ちて助かるなんてことは起こり得ない。故に何か対策を講じなければ……。

地上まで、目測で20メートルくらい。数秒後には、俺の体は地面に叩き付けられて、愉快なオブジェになっていることだろう。

『王の財宝』に、高所から落ちても助かるアイテムはないのだろうか。ヴィマーナなどの飛行宝具があるくらいだ、あってもおかしくない。

心の中で、空から落ちても助かる効果を持った宝具を呼び出し続ける。

 

「……っ!来た!」

 

伸ばしている両手の前の空間から、黄金の波紋が現れて一つの体全体を覆えるほどの巨大なクッションが出てきた。しかし、大きさに比べて厚みがない。こんなので耐えれるのだろうか。といっても既に地上までの距離は目と鼻の先だ。今更、別のに変える時間などはない。

俺は目を瞑り、来るべき衝撃に備える。

そして、ついにクッションを下にして地面に突っ込んだ。

 

ポスン

 

そんな音と共に。

 

どうやら、地面に激突した衝撃をクッションが吸収してくれたみたいだ。これで一安心。

全身を駆け巡る安堵に身を任せ、クッションに大の字に仰向けになった。

ふと、視線を横にすると、小学生からエロスメルと呼ばれていたイケメンが目を大きく見開いたまま、フリーズしていた。

イケメンは我に返ったのだろうか慌てて此方に駆け寄ってくる。

 

「だ、大丈夫かっ!?」

 

俺は服に付いた小石などを払うと立ち上がる。

とりあえず怪我がないことをイケメンに伝えないと。

 

「心配せずとも良い……。この我の体に傷がつくなどありえんのだからな。

しかし、我の身を案じる心意気は忠義であった。褒美に我に名を名乗ることを許す」

 

そのまま、イケメンに顔を向けると目があった。

すると、イケメンはまたも呆然と立ち尽くす。俺の顔に何か付いているのだろうか。もしかして、見蕩れていたりとかだったりして。いや、ないな。初対面ですげー上から目線の奴に見蕩れるとかありえんわ。

 

「どうしたのだ、雑種。早く答えぬか」

「あ……ああ。俺は甘草奏。

えっと……君は?」

 

甘草奏か。女性っぽい名前だな。顔も中性的なイケメンだし、女装とかしたら性別がわからなくなるかもしれない。

 

「我の名を聞くか、雑種。まあ良い。我が名はギルガメッシュ。その耳にしかと刻み付けよ」

「あ、はい……」

 

その場に沈黙が訪れる。

それにしても滅茶苦茶気まずい。いくら相手がエロスメルだろうが、初対面相手に尊大なギル様口調はいただけない。多分、奏さんは口に出しはしないが心の中でイタい奴だと思っていることだろう。

そうして、沈黙に堪えれなくなったのか、奏さんが口を開いた。

 

「ええと……じゃあ、学校へ行くんで」

 

学校ねえ。一応、学校に通っておきたいけれど戸籍無いからな。まあでも宝具で何とかなるか。

俺は歩き出そうとした奏さんの背中へ声をかける。

 

「おい、貴様の通う学舎の名を言っていけ。これは王命だ。拒否するならば今後、日の光を拝めぬと知れ」

「私立晴光学園ってとこに通ってる」

「フム、そうか。行って良いぞ」

 

春の雰囲気が残る初夏の陽気を浴びながら、早足で俺はその場を後にした。

 

◆◇◆◇◆

俺は暇ですることもないため、腕に嵌めている金のブレスレットを指で弄りながら散歩していた。

 

「それにしてもこの我が学舎に通えるようになるとはな。つくづく宝具とは便利な物よな」

 

俺は奏さんと別れた後、私立晴光学園の教師に宝具で暗示をかけて転入生という立場を手に入れたのだ。

教師にかけた暗示は、fate/zeroでウェイバー・ベルベット君が冬木での拠点確保の際に老夫婦にかけた暗示の上位瓦換であり、効力が高く破られることはない……と説明書に載ってた。ここで言う説明書とは、転生した際に『王の財宝』やその中身の宝具の使い方の情報を神によって直接脳内にインプットされたものである。

そうして、歩いていると、突如、勝手に『王の財宝』が開き、スマートフォンが出てきた。スマホの原典とか何だよそれ。

というか、何で勝手に『王の財宝』が開くんだよ。

 

「何故、我の宝物庫から勝手にスマホが出てきたのだ……」

 

すると、俺の台詞に合わせるかのように、スマホから電話の着信を示すメロディが鳴った。

スマホを手に取り、相手の確認をすると『神』という表示。なんだよ神って。こんな奴が登録されてんのかよ。

とりあえず相手を待たせるのは良くないので電話に出る。例え、名前の表示が『神』だとしても。

 

「王たる我に何の用だ、下郎」

 

もしもしと言った筈なのに、いつも通り大幅に台詞が改変されてしまう。もう諦めたけど。

 

《どもども、神でーっす》

「畜生にも劣る身で我を愚弄するか、雑種」

 

俺はそう言い放つと瞬時に電話を切る。

ああいう類いの悪戯電話は、電話を切ってしまうに限る。会話をしたとしても得るものなど何一つないからな。

しかし、悪戯電話師が相手のスマホに、名前を表示させるするなんてこと可能なのだろうか。もしかしたら、悪戯電話では無かったのかもしれない。

とか考えていると、またスマホからメロディが鳴り出す。

 

《もしもーし、何で切っちゃうのー?ギルガメッシュちゃーん?もしかしておこなの?》

 

非常に軽い声がかけられる。もう切っていいかな。

しかし、俺の名前を言っているし、知り合いだったようだ。

 

《あれー?シカトするのー?もしもーっし、神だよお》

「御託はよい。疾く用件を話せ」

《うっは、マジ性急》

 

ウザすぎてこめかみに青筋が立ちそうなレベル。

自称神、チャラいにも程がある。全くどういう育て方をされたらこうなるんだよ。

 

《えーっとねー。甘草奏くん、知ってるよねー?》

「そやつが我と何の関係がある?」

 

もしかして、このチャラ男は朝の一件に関わっていたのではあるまいな。

 

《実はねー。ギルちゃん、空から落ちたでしょ?》

「あれは貴様の仕業だったのか……?もしそうであるのなら、その命をもって我に償え」

《いやー、あれねー、ちょっと手違いがあったんだよねー》

 

やはり、俺を空から落としたのはこいつだったようだ。チャラ男に見えて、英雄王である俺を空から落とすほどの力を持っている。油断は出来ない。

神というのは、案外本当のことなのかもしれないな。

 

《本来、奏くんの所に行く筈だったのは、こっちが用意した(しもべ)の筈だったんだよねー。

実はさー。奏くんにはね、呪いがあってねー。それで用意した僕を呪いを解くサポート役にするはずだったわけね。だけど、手違いでギルガメッシュちゃんが奏くんのもとへ行っちゃったんだよね。それでキミに代わりをやってもらいたいわけ》

「我が協力したとして、我にどんなメリットがある?」

《ギルガメッシュちゃんのお願いをなんでも叶えてあげちゃうよ。だから僕と契約してサポート役になってよ》

 

最後の台詞……お前は俺を魔法少女にでもしたいのかよ。

しかし、なんでも叶える……か。男版の英雄王になれるかもしれないな。それなら断る道理は無いね。

 

「良いだろう。我が直々に協力してやる。それで呪いとやらの解呪方法を教えよ。どうせ解呪は単純にはいかんのだろう?」

《サンキューね。それで解呪方法だけどねー。下されるミッションをこなしていけばいいみたい》

 

なんだろうか、このチャラ男、解呪方法が適当じゃないか。もしかして、呪いについて全てのことを完全に把握している訳ではないのだろうか。

 

「おい、貴様、もしや事を完全に把握していないのか」

《うん、ほとんど分かってないよ。これについてはさー、奏くんが居るときに一緒に話したいからさ。奏くん家に行ってきてくんない?

場所の情報送るからさ。じゃぁ、忙しいから切るねー。ばいび~》

 

そうして、通話は有無を言わさず切られてしまった。

 

◆◇◆◇◆

俺は、神から送られてきた位置情報を頼りに、二階立ての一軒家――甘草奏の家を見つけ出した。

鍵開け用の宝具で、ドアの鍵を解錠して侵入する。

時計を見ると、まだ昼過ぎだったため、奏さんが帰宅するまで寝て待つことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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