姫ギルな我の周りには変な雑種共が多すぎる   作:招き蕩う黄金劇場

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二話 姫ギル様は甘草君のサポート役となる

「ふう……」

 

自宅の玄関まで辿りついた所で、思わずため息が洩れる。疲れた……今日はとにかく疲れた。絶対選択肢に加えて、お断り5の雪平、遊王子コンビとのうんざりするような絡み。

しかし、このドアを開けたところで、お疲れさま、と出迎えてくれる家族は居ない。

親父の転勤にお袋もついていってしまったので、今現在、甘草家の住人はただ一人。俗に言うギャルゲー状態というやつだ。

今から夕飯の支度はきっついな、などと、やたらに主婦じみた思いを抱きながら、ドアを開けた。

 

「すーすー」

 

……なんかいた。

 

「すーすー」

 

……もとい、なんかが寝てた。

 

寝てる。ものっすごい寝てる。俺ん家の廊下に、なんか、すごい豪奢な装飾が施されたソファーが置いてあって、その上でなんかが、ものっすごい気持ち良さそうに寝てる。

意味が分からない……なにが起こってるのか全く分からない。いつだ?俺はいつメダパニをかけられた?

頭は混乱しきったままだったが、体の方が勝手に動いた。しゃがみこんで、その生物の体を勢いよく揺する。

そいつは、目をこすりながらゆっくりと上体を起こし、寝ぼけ眼でこっちを見た。

 

「む……?何処の雑種だ、貴様」

「俺が聞きたいわ!」

 

とはいえ、その正体は分かり切っていた。ストレートの腰まである長い金髪、ただの白いシャツがとんでもなく豪華な服だと錯覚してしまうほどのオーラ、尊大で周り全てを見下してるかのような声……間違いなく朝に会ったギルガメッシュとかいう生き物だ。

 

「何だ、奏ではないか、おかえり」

「あ、ああ、ただいま……ってただいまじゃねえよ!」

 

いや、なんかあまりにも自然に居るせいで、普通に返してしまった。

落ち着け。いっぺんに考えても仕方ない。

 

「まず……まず、だ。お前、どうやって人の家の中に入った?

それに、そのお前が寝ているソファーはどうしたんだ?」

 

こいつの目的がどうのこうのって前に、物理的な問題だ。いまさっき使った鍵は、たしかに俺のポケットに入っているし、合鍵は家の中に置いてあった。

ギルガメッシュはニヤリと笑う。

その直後、目を疑うような出来事が起こった。

何もないところから、突如、黄金の波紋が現れて、ソファーを吸い込んでいったのだ。さらに、もう一つの黄金の波紋が現れて、今度は何か小さな棒のようなものが出てきた。

 

「何が起こったんだ……」

「クハハハ、我自ら、教えてやろう。先程のソファーは我の宝物であり、普段は宝物庫に仕舞ってあるが任意に呼び出すことが出来るのだ。

そして、奏、貴様の家の錠はこの宝具を使ったのだ」

 

ギルガメッシュは、棒のようなものを、見えやすいように掌に置く。

 

「この宝具はな、錠に差し込むと形状を自動で変化させその錠にあった形となる。まさに王たる我に相応の宝物よな!」

 

人知を超えたものを見て、口が半開きのままフリーズしてしまう。今の俺は相当間抜けな顔をしているに違いない。

 

「奏よ、どうしたのだ?顔色が大分悪いように見えるぞ」

「いや、びびったんだよ!そんな凄いもので平然と人の家に侵入するお前にびびったんだよ!」

 

理解した。例え、お伽噺のような神秘を使っていたとしても、こいつは単なる不法侵入者だ。悠長に問いただしている場合じゃない。力ずくで出ていかせるしかない。そう決意して手を伸ばした矢先――

 

「自分の庭に入って何が悪い。この世界は余すことなく全て我の所有物だ。決して凡夫のものではない。

それと、我は、奏の呪いの解呪の手伝いに来たのだ」

「な……に?」

 

俺の動きが止まる。

 

「呪いってもしかして……絶対選択肢の事か?」

「ククク、絶対選択肢だと?随分と愉快な名を付けているのだな」

「う……」

 

何故だか直感でそう思ったため、尋ねてみると笑われた。

今まで口にする機会なんてほとんどなかったから、意識しなかったが、たしかにちょっと恥ずかしいネーミングかもしれない。

そして、案の定、ギルガメッシュは肯定する。

たしかに宴先生が、選択肢を手放す為の準備が云々とか言ってたけど……。

 

「奏よ、こんなところで話すのもなんだ、奥へ行くぞ」

「いや、なんでお前が言うんだよ……」

 

うさん臭い……ただひたすらにうさん臭い。が、絶対選択肢を解除できるかもしれない、と聞いては、即座に追い出すわけにはいかなくなった。

 

「そら、付いてこい、奏」

 

何故か、この家の人間といった感じを醸し出しているギルガメッシュに先導されて、リビングへと入る。

 

「……なんだ、これは」

 

絶妙に保たれた室温。鼻腔をくすぐる紅茶の芳しい香り。見た目にも楽しませてくれる、凝った形の手作りクッキー達。そこには極上のくつろぎ空間が展開していた。

 

「フン、感謝せよ。そろそろ奏が帰ってくる頃だろうと、我の手で直接準備をしてやったのだ」

 

これが仮に彼女とか奥さんのセリフだったら、さぞかし幸せなんだろうけど、相手が美少女であろうと見ず知らずの他人に言われても薄気味が悪いだけだった。

 

「王たる我の面前で恐縮するのは仕方のないことだが、遠慮はしなくとも良い」

「いや、だからなんでお前が言うんだよ……」

 

俺は促されるままにソファーに腰を降ろし、湯気をたてる紅茶に手を伸ばした。

 

「どうだ?奏」

「まあ、うまいけどさ」

 

ギルガメッシュは不敵な笑みを浮かべながら、得意気に胸を反らす。無駄にカリスマがあるためこんな動作でも、つい敬服しそうになるが、こいつは不法侵入者だ。

 

「そうであろう、そうであろう。この紅茶の茶葉は、我にとって有象無象の雑草の一つに過ぎんが、この時代の茶葉の中では比較的高級品であるからな」

 

いや、それ買ってきたの俺だから知ってますけど。というか雑草なんて言うなや。

続いてギルガメッシュは、クッキーの載った菓子皿を差し出して来た。

 

「どうだ?奏」

「まあ、うまいけどさ」

 

再び、不敵な笑みを浮かべ、ドヤ顔をつくる。

 

「そうであろう、そうであろう。このクッキーは我が作ったものではないせいか、少し味が劣っているが、手間がかかっているものだからな」

 

いや、それ焼いたの俺だから知ってますけど。というか何でもかんでもディスんなや。

 

「まあそんな事はどうでもいいんだ……本題に入ろうか」

 

ギルガメッシュに、反対側のソファーに座るように、右手で促す。

 

「うむ、尋ねるがいい。貴様が知りたいことを」

 

ギルガメッシュがソファーに腰かけるのを待って、口を開いた。

 

「まわりくどい話は無しだ……お前、絶対選択肢を手放す方法を知ってるのか?」

「うむ、知っているぞ」

 

いともたやすく首を縦に振るギルガメッシュ。

マジか……本当に手放せる?この一年、俺を悩ませ続けた忌々しい選択肢を?

 

「頼む、教えてくれっ!」

 

興奮を抑えきれず、半ば反射的に席を立つ。

 

「そう急くな。まずはともあれ、落ち着け。我は方法を知っているが、教えるのは我ではない」

「じゃあ、一体誰なんだっ!?」

 

俺の切迫した問いに対して、ギルガメッシュはあくまで冷静に紅い相眸を輝かせながら言い放った。

 

「忌々しいチャラ神だ……」

「……………………はい?」

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