姫ギルな我の周りには変な雑種共が多すぎる   作:招き蕩う黄金劇場

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読者様に感謝です。


四話 姫ギル様、甘草家にて斯く過ごしけり

「ふん、そこらの有象無象のつくるものに比べれば出来は良い」

 

テーブルに並べられた朝食を目にした俺は、思わず賞賛の声をあげた――筈なのだが、いつも通りギル様口調によって阻まれてしまう。

そうとは、知らない奏はこっちを睨み付けてくるし……衛宮士郎に転生しとけば良かったかな。今から後悔しても遅いけど。

だけど、とりあえず今は目の前の料理を食べるべし!

 

「至高には到底及ばんが、なかなか美味ではないか」

「お前の言う至高ってどんくらいなんだよ……」

 

食事をしながら、俺の呟きにすかさず突っ込む、奏。

確かに至高ってなんなんだろうな。今度、王の財宝の中の食材を使った料理を作ってもらうか。そしたらわかるかも。

でもね、物を食べているときに喋るのは良くないと思うのです。

一応、俺は飲み込んでから喋っているのでセーフ。奏にはちゃんと注意しておかないとな。

しかし、注意するにあたって、やっぱりギル様口調に変換されると思ったように伝えれないんだよな。諦めたけど。

 

「王の食事中に囀ずるな」

「理不尽過ぎるだろ!お前は一体、何様のつもりなんなんだよっ!?」

「愚問だな。最古にして、天上天下唯一人の英雄王様に決まっている」

「接するのに疲れた……!」

 

うん、奏くんはよくがんばったと思うよ。ごめんな。俺には君にしてやれることはないんだわ。

俺は疲れた顔をしている奏に、心の中で合掌する。

と同時にテーブルに突っ伏す奏に、フォローをするため、食事の手を止める。

 

「奏、我は忠義を尽くす臣下に褒美を取らせぬほど、厚顔無恥な王ではない」

 

すると、奏は見直したといった感じで、突っ伏していた面を上げる。

そして俺は続きを言った。

 

「我への献上品を許す」

「なんでだよっ!褒美どころか搾取してんじゃねえか!」

 

続きの言葉に絶望した奏が、またテーブルに突っ伏してしまった。

うん、今のは俺が悪い。だけど、悪いのは認めるが反省をしようとは思わない。だってただのジョークだし。

俺はニッコリ笑って奏に告げる。

 

「安心せよ、奏。今のは英雄王ジョークだ」

「全くもって笑えねえな!」

 

俺は、奏のツッコミを無視して、王の財宝に手を突っ込み、札束を取り出した。

 

「札……束?」

 

奏が呆然と呟く。

俺が取り出したのは、100枚で纏められた諭吉先生の群れ。王の財宝の中身としては、悪い意味で不釣り合いなもの。

実を言うと、これは俺の金じゃない。あのチャラ神から必要経費として送られてきたものだ。

 

「必要経費として送られてきた。足りんのならば我に申せ。追加で送らせてやる」

 

俺は諭吉先生の群れを、奏に預ける。札束を受け取るときの奏の手は震えていた。今の俺にとってはショボい金額だが、現役高校生である奏には、大金だったのだろう。かく言う俺も転生前はボンビーで、諭吉先生を見る機会もあまりなかった。

そういえば、この金はロンダリングされているらしい。

ロンダリングとは犯罪行為で得た不正資金、賄賂、テロ資金など口座から口座へと転々とさせ、資金の出所や受益者をわからなくする行為である。

 

「一応、伝えておくが、マネーロンダリングは済ませているそうだぞ」

「危ない金じゃねえか!」

 

ロンダリングと聞いた瞬間、奏は諭吉先生達を床に叩き付けた。

 

「……これはとりあえず、お前が持っててくれ」

「断る。そんなもの、そこいらの犬にでも喰わせておけ」

「お前、犬を山羊と勘違いしてるんじゃないか!?あと簡単にお金を捨てるとか言うなよ!」

「む?何故だ?その程度の額、世界全ての価値に等しい、我が宝物庫に比べれば端金にも劣るではないか」

「ああ!わかったよっ!」

 

奏は汚れた諭吉先生達を、ズボンのポケットにしまった。

いけないな。お金をズボンのポケットに入れるなんて。しかも100諭吉だし。

 

「とりあえず、学校行ってくるわ」

 

奏が軽くため息をつきながら立ち上がって言った。

 

「うむ、いってらっしゃい。留守は我に任せよ」

 

俺がソファーに寝転びながら言うと、途端に奏がはっ、とする。

どうやら俺が留守番をちゃんとするのか心配みたいだ。

まあ、心配なんてするだけ無意味だと言っておこう。なぜなら最初から留守番なんてするつもりはないからな。

洗濯とかやったら出掛けるか。――とか思ったけど、今日が晴光学園への転入の日だった。どっちみち留守番なんて出来ないね。

 

「ほんとに大丈夫だよな……洗い物とかやり方わかるか?」

「愚問だな。我に任せておけと言っている。我の宝具を使えば一発だ」

「逆に不安になってきた……」

 

奏がジト目で此方を見てくるが、気にしないふりをする。

男のジト目とか誰得だよ……。いらねえし、求めてねえよ。

 

「ギルガメッシュ、留守を預けるにあたっての、ちょっとしたテストだ」

「王への進言を許す」

 

俺は体を起こし、奏へ顔を向ける。テストとは何だろうか。

奏は体を起こした俺を確認すると、質問を出した。

 

「それじゃあ、急に雨が降ってきたら?」

「宮に帰らないといけないと思う」

「お前の心境は聞いてねえよ!しかも然り気無く、留守番を放棄してんじゃねえっ!洗濯物をとりこんでくれよ!」

 

いや、だって雨が降ってきたらお家に帰らないといけんじゃん。濡れるよ?

洗濯物は確かに取り込まないといけないけど、やっぱり答えとしては家に帰る、で合ってると思うのです。

 

「新聞の勧誘が来たら?」

「我の宝具とかで迎撃するとか」

「物騒な事してんじゃねえよ、お前!」

 

いや、誤解ですよ。砂糖や塩を撒くと言ったつもりだったんですー。ギル様口調変換システムがいけないんですー(嘘)

ワイングラスにオレンジジュースを注ぎながら、俺はニヤニヤする。

そんな俺とは対照的に頭を抱えながら、奏は口を開く。

 

「オレオレ詐欺っぽい電話がかかってきたら?」

「受話器の送話口に、わたもてのエンディング曲を大音量で流す」

「お前、最古の王とか言ってるわりに、わたもてとか随分博識だな!びっくりだわ!」

「こんなもの一般常識であろう?」

「常識からほど遠いだろ!」

 

わたもての曲良いよな。何と言えば良いのだろうか、歌詞が新しくて新鮮?

奏は、胃が痛くなってきたのか、お腹を抱える。

……次の質問へGO!

 

「ナカジマが誘いに来たら?」

「野球をする。勿論、我ルールでな!」

「我ルールってなんだよ!野球のルール、勝手に変えんなよ!そもそもあいつはイソノしか誘わねえよ!」

「喚くな。今のは奏がふざけていたのだろうが」

「う……そうだな」

 

悪ノリをしてしまった奏をたしなめ、俺はふんぞり返る。

やばい、楽しい。奏が悔しそうにしてるのすげーウケるわ。

俺は歯軋りをする奏に、イラっとする態度で喋る。

 

「ふふん、わかれば良い。最早、このような低俗な輩より、我がこの家の主に相応しいな」

「何言いくさってんだ!って……時間!」

 

学校へ行く時間が厳しくなってきたのか、ツッコミを途中で切ると、奏は大慌てで鞄をもつ。

 

「く、じゃあ、いってくる」

「いってらっしゃい」

 

俺は玄関から飛び出していく奏を眺めながら、奏が焼いたクッキーを頬張った。

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