姫ギルな我の周りには変な雑種共が多すぎる   作:招き蕩う黄金劇場

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五話 姫ギル様が晴光学園に来るそうですよ?

カツカツと小気味良い足音をたてながら、前を歩く教師についていきながら廊下を歩く。

そうして、着いたのは2‐1の教室の前。

久しく感じていなかった学校の独特な雰囲気に、転生前のことをちらりと思い出す。

転生前の俺は、学校生活を割りと充実して過ごしてた。

といっても恋愛方面に関してはその限りではなく、素敵な出会いなんてものは幻想で、彼女居ない歴=年齢という童貞風見鶏だったわけなのだが……。

それでも、気の置ける友人達とバカやって遊んだりするのはとても楽しかった。

だからこそ、今世の学校生活が始まる、今この瞬間に、期待や不安なんかで緊張してしまう。

 

「ええー、皆、席について下さい」

 

教師が扉を開けながら、クラスに声をかけて教室内に入っていく。

すると、一人の女子生徒が教師に尋ねた。

 

「あの~、せんせー。宴せんせーは?」

「ええー、道楽先生なら、甘草の特別指導をしておられるのでいません。ですので朝のHRは私が担当します」

 

奏ェ。一体なにをしたんだろうか。特別指導とか結構ヤバめのことしないと経験出来ないからな。

ただ、俺が気になるのは、奏が特別指導と聞いて、ああー納得ー、といった表情をしながら着席する女子生徒。普通、そこまですんなり納得出来ないと思うんだが。

いくら変人でエロスメルな奏でも、クラスで奇行はしない筈だし……。しないよな?

 

「ええーゴホン。今日はクラスに転入生が来るそうですよ?」

 

いやいや、何で教師が疑問形なんだよ、おかしいだろ。あんたの言う転入生はお前が連れてきたんだよ。

教師の言葉に心の中でつっこんでいる間に、教室が喧騒に包まれる。「男かな、それとも女かな」とか、「かわいいと良いなあ」とかそんな言葉が聞こえてきた。

 

「ええー、では入ってきて下さい」

 

教師が、此方に呼び掛ける。

俺は、扉を開いて教室内に入った。

俺が入ってきた時の、クラスの連中の反応は千差万別で、「パツキン美少女ktkr」だとか、「俺はロリコンをやめるぞ!ジョジョ!」とか叫んでいる人も居れば、無言で心ここに在らずといった表情で呆けている人も居た。

流石、ギル様フェイスだな。

 

「ええー、では自己紹介をして下さい」

 

教師が、黒板に俺の名前を書きながら声をかけてきた。

もちろん、名前は、そのままギルガメッシュではなく偽名を使っている。

俺は、教卓に立つとクラスを見渡してニコリと 嗤う。

 

「我の名は甘草 儀瑠(あまくさ ぎる)だ。

雑種共、本来であれば許可なくして王たる我を前にして面を伏せぬ無礼をした貴様らは万死に値するが、此度は我は機嫌が良い。前の不敬、不問とする。我の寛大さに感謝せよ。

だが、思い上がるなよ、雑種共。次はないと知れ。努々、忘れるな」

 

俺の自己紹介が終わったとき、クラス中が静まり返った。それはもうシーンと。

だけど、弁解させてほしい。俺はただ、皆さん仲良くしてくださいと言おうとしたのだ。だけどもう駄目だ。おしまいだ。自己紹介でクラスメイトに雑種とか言っちゃうなんて……。

俺はこれから、灰色の学校生活を送るのだろう。俺は、少しだけ顔を伏せた。

そんな中、誰かが声を洩らした。いや、訂正、叫んでる奴もいる。

 

「俺様系ならぬ、王様系美少女……だとッ!」

「う、狼狽えるんじゃあないッ!一流紳士は狼狽えないッ!」

「これが、魔術師達(童貞)の求める根源だったのか!」

「奴に求婚する前に言っておくッ!俺は今、奴の萌えをほんのちょっぴりだが体験した。い、いや、 体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……。あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ!『俺は奴を金髪系清楚お嬢様かと思いきや、その実、王様属性持ちの美少女だった!』

な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何に萌えたのかわからなかった……。

頭がどうにかなりそうだった……。高飛車だとか、強がりだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 

俺はお前らの事がわからねーよ。

そんな何かの境地を見つけた変態紳士たちに混ざり、何人かの変態淑女達まで、「強がってる儀瑠ちゃんをッ……ウフフ」とか、「私を踏んでェ!その冷たい目で蔑んでェ!」とか叫び、クラスはカオスな状態になってしまった。

教師も「元気が良いのは良いことですねー」と呟きながら、自分のハゲ頭を撫で始める始末。

完全に収拾がつかなくなってしまったのだった。

そして、HRの後、何故かクラスメイト達に囲まれて、質問やら何やらをされていった。

 

◆◇◆◇◆◇

「はああ……」

 

何があったんだよ……。

俺は今まで、絶対選択肢によって強制させられていた《教卓の上で仰向けになり『リンチを受けている最中の豚』の鳴き真似十回》によって、宴先生に絞められた挙げ句、生徒指導室に連れていかれそこで指導されていたため、今、教室で起きていることがわからなかった。

クラスの八割が、ある一つの席に一斉に集まっている。

その席に、足を組みながら頬杖をついている、見覚えのある金髪。本来、俺の家で留守番をしている筈の金髪……。

 

「ギルガメッシュ……」

 

金髪は、俺の存在に気が付いたのか、椅子から優雅に立ち上がり、こっちに歩み寄ってくる。

 

「奏よ、聞いたぞ。畜生の真似事をしていたとは、つくづく恥を知らぬ道化よな」

 

くっ、絶対選択肢のことを知っているくせに。

まあ、そんなことはどうでもいい。俺は聞かねばならないことがアイツにはある。

 

「ギ――ッ!?」

 

俺が、ギルガメッシュの名前を呼ぼうとしたその瞬間、口を手で塞がれる。

文句を言おうと、ギルガメッシュを見ると、教室の外に行けとジェスチャーをしていた。

 

「良いか、奏。学舎の中では、我は甘草儀瑠だ。間違えれば、我が手ずから処断する」

「ああ。って儀瑠!お前なんでここにいるんだよっ!?留守番はどうした!」

「留守番はちゃんと結界を張っているから、心配はせずともよい。ただ学舎に通いたかっただけだ」

 

教室を出て、ギルガメッシュが宝具とかいうのを使って人払いをして、誰も居なくなった廊下で俺達は会話をしていた。

それにしても結界?まあ、ギルガメッシュが心配しなくても良いと言うんなら、留守番は大丈夫なんだろう。

ただ、俺が聞きたいのは、どうやってこの晴光学園に入ったかだ。

 

「儀瑠、正直に話すんだぞ?どうやってこの学校に来たんだ?」

「教員共に暗示にかけ、我を転入生ということにした」

 

催眠術みたいなもんか。

 

「とりあえず、儀瑠。余計な面倒事を起こさないでくれよ」

「起こしているのはお前であろう?」

 

正論だけど、ドヤァとしているギルガメッシュを見ると、すんごい苛立ってくる。

まあ、でも害がないなら良いか。そんなことよりも、神からのミッションの雪平を笑わせる手立てを考えないと。

俺はギルガメッシュと共に、教室に戻った後、クラスメイト達の「儀瑠さんと甘草くんってどんな関係?」って感じの視線に晒されながら、ミッションクリアについて考え続けたのであった。

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