「それではフジエダさんのご予定もあるようですし、今日はこれまでとしましょう。 明日は9時にお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません」
「それでは明日朝9時にお伺いします。 ウィルソン外交官もそれで?」
「ああ問題ない。 フジエダさん、よければ今夜ディナーをご一緒に…」
「申し訳ありません。 今日は急ぎの予定が詰まっておりまして… 明日の夜は時間が空いているのでよろしければ? 蒲田外交官もご一緒にどうですか?」
こちらに来てもうすぐ一ヶ月が経とうかとした頃、ロンデニオンにアメリカと日本の外務官が来訪した。
両国の大使はにこやかな表情で友好的に接してくれてはいるが、裏で何を考えているか分からない人種なので俗人、凡人の俺としてはあまり関わりたくない。 正直、誰かに代わって欲しいがハロに任せる訳にもいかず、笑顔で自ら対応している。
付加された知識のお陰か、外交官の専門的な言葉は理解出来るが会話を完璧に理解するには至らないので、不明な点はその都度に聞いて確認している。
なめられて困るプライドはそんなにないので、実も蓋も無く序でに底もなしという某提督の言葉を借りて慣れない事をやってみている。
「ええ、ご一緒させていただいます」
「…わかりました。 それではディナーは明日に」
爽やかな笑みを浮かべてディナーの同伴を了承する七三オールバックに、紺の上品なスーツを着こなす白髭の蒲田外交官。
そして俺とマンツーマンでディナーがしたい、金髪を短く刈り上げて茶色の豪華なスーツを着たウィルソン外交官。
様々な思惑があるであろう両国の外交団には、軽く観察しただけで分かる共通する一点があった。
両外交官の補佐官に美人さんがいらっしゃる事だ。 俺も男ですから良い目の保養です。
やっぱり国の顔となる外交官だから美人さんを連れてるんだろうね~ 羨ましいかぎりだ。 …「良いではないか、良いではないか」とか想像しちゃいそう…
…それは置いといて。 コロニー時間の朝8時ごろに港に到着した一行を、アシガラ、リバティークルーが宿泊するホテルへと案内してホテル内の会議室で改めて顔見せしたんだが、そのまま会談前哨戦に突入し昼食会を挟みながら今現在は午後の4時になろうとしていた。
外交団とは別に、こちらから要請して来てもらった戦車関係の方々を思いのほか長く待たせた事に内心焦っていた。
外交団と分かれて、ホテル内で待っていてもらった戦車関係の人々を館内放送で別の会議室に集まって貰うように連絡し、一足先に会議室にてハロの淹れてくれた緑茶を啜っていると流石に軍人と言うべきか、放送から五分も掛からずに関係者全員が集まった。
黙々と目の前で整列されては座ったままというのも失礼なのでこちらも立って待つ事にする。
ギィ、ギィ…
微かに聞こえた何かが擦れる音。 その音の方角に視線を向けると、日本帝国軍の制服を着た一人の男が僅かに右足を引き摺りながら歩いている。
「気をーつけー!」 「アテンション!」
バッ!
全員が整列すると先ほどの足を引き摺った男と額に横一文字の傷が有るアメリカ軍制服を着た男が声を張り上げ、あまりの迫力に俺の背筋も伸ばされる。
「「敬礼!」」
ザッ!
会議室に居る10名の人間が一斉に俺に向かって敬礼を送り、釣られて俺も敬礼を返してしまう。
「…」 「…」
「ん? …ぁ、楽にして下さい」
「「休め!」」
バッ!
「ああ、座って下さい」
「「はっ!」」
まあしょうがない。 だって軍人さんだもの…
「遠路をお越しいただき、ありがとうございます」
「はっ! 労いのお言葉ありがとうございます閣下!」
「は?」
閣下? えっ? 何? 何それ?
「あの…その閣下ってのは…?」
「? はっ! 外交官殿から技術准将殿であるとお伺いしておりますが?」
えっ? そんな口裏合わせ聞いてないよ?
「…ちょっと待ってくださいね?」
「はっ!」
壁際に備え付けられたインターフォンを通じて蒲田外交官とウィルソン外交官に繋いでもらう。
…
……
………
何時の間にやら技術准将なるものにされてしまっていた…
なんでも、これからは外部の人間と接する機会も多くなるであろうから、対外的な肩書きが必要になるであろうと配慮したそうな。
いきなり現れた人物が個人で新勢力を宣言したとしても各国が信用するのは難しく、今の情勢下では世界に更なる混乱を招いかねない事で、暫くはこのコロニーはアメリカと日本が共同で作ったコロニーとして、そして俺はそれの開発と管理を任された国連軍技術准将として各国に紹介して徐々に信用を勝ち取った上で改めて真実を発表した方が良いと、日本帝国政府とアメリカ政府の間で意見の一致を見たそうだ。
なお、唯の技術准将だけではなく、俺は日本帝国軍技術准将とアメリカ合衆国統合本部付きの技術准将でもあり、両国からの出向扱いとして国連軍技術准将の地位も用意中でもあるそうな… 将官の地位は他国に容易に手を出させないためで、権限やらなんやらの無い名誉だけのお飾りの階級で、こちらの反応を探ってるのかな? 地位としては向こうが出せる最大限の物なんだろうけど。
「なんという三足の草鞋…」
いや、本来のコロニーの管理者としての肩書きを加えると四足… 俺は四足動物か?
なお、表向きは俺に対する命令権は日本帝国皇帝と征夷大将軍、アメリカ合衆国大統領のみに有り、他の将校や政治役人には一切命令権は無いそうだ。 それに皇帝と大統領の命令権にしても表向きの建前だけで、勿論従わなくても良いし此方を尊重しているので命令する気もないとの事。 但し、両政府からの要請はあるかもしれないからその時はよろしくとも言っていた…
正直、やられた!とは思ったが、両国の保護下に入れば表向きの面倒な事は任せられる部分は大きいので助かるといえば助かる。 あとは悪い方向へ利用されないように十分に気をつけて、この世界に根付ければいい。
長いものには巻かれとこう。
とりあえず了承し、詳しい話を明日聞いて正式に回答する事を両外交官に告げた。 正式な辞令や書類、制服などは明日手渡すとの事。
「…あの、制服は今のままがいいんですけど…」
保管所で発見した連邦軍服が思いのほか着心地が良く、出来ればこのままでいたいと要望すると、そのくらいならと了承してくれた。 これまた但し、公的な場では帝国軍、アメリカ軍、国連軍の制服をお渡しするので、出来るだけこちらの要望に沿って欲しいと事。 今の制服はこのコロニー関係者用に小数作られた物と口裏を合わせるようにとの事でお互いに了承した。
ぽんぽんと言葉の出る外交官二人に半ば感心しつつ受話器を置き振り返ると、微動だにせず椅子に座って待っている方々が…
「重ね重ねお待たせしてすみません。 どうぞ楽にして下さい」
「はっ! ありがとうございます!」
…しょうがないもの、だって軍人さんなんだもの。 そして俺も軍人さん… しょうがないよな… うん、しょうがない… これもこの世界で生きてく為だ。
「え~、そんなに硬くならないで。 准将とは言っても実戦も経験してないし、まともな将校教育も受けていない技術将校だから気楽に…って言っても軍人だから無理か。 とにかく楽にして下さい、お願いがあって来て貰ったのはこっちですから。 あっ、自己紹介が遅れましたが私は当コロニー、ロンデニオンの管理者でシンジ・フジエダ…技術准将です。 どうぞよろしく」
「はっ! 自分は帝国陸軍大尉、宇喜田 英彦であります!」
「私はアメリカ合衆国陸軍、機甲師団所属のエーリック・カービンソン大尉であります。 お会いできて光栄です閣下」
閣下… しょうがない。 しょうがないんだ…
「閣下じゃなくてフジエダで…准将でお願いします」
「了解しましたフジエダ准将」
准将の方がまだまし…かな?
「それでは自己紹介も済んだので本題に入りたいと思います。 先ずは此方を御覧ください」
右手に掲げるのはA4サイズの61式戦車マニュアル。 席についた全員の目の前、コの字形に設置された机の上に同じものが置かれている。
全員がそれを手にした事を確認して話を続ける。
「これはロンデニオンで生産予定の戦車、61式のマニュアルです。 皆さんに来ていただいたのは、実戦経験のある戦車戦のエキスパートとそれを支える整備兵の方に61式を評価してもらい、現場の目で意見をして欲しいのです」
その言葉に大尉二人を始めとした数人の目が細まり、見極めるように俺を見据えた。
「やあ、こんな格好で失礼するよジョージ」
「構わないよ、久しぶりだなメラニー。 体の具合はどうだ?」
アメリカ北部に在るとある屋敷で 二人の人物が顔を合わせていた。
一人はガウン姿でベッドに身を起こすを老人で、長い時の中で色の抜け落ちた長い白髪に皺に埋もれた顔から穏やかではあるが隙の無い視線を来訪者に向けている。
訪れた来訪者、アメリカ合衆国大統領ジョージ・エデンは古い友人に労わりの視線を向けるとベッド脇に置かれた椅子に静かに腰を下ろす。
「変わり無くだ… それよりも“こんな”忙しい時期にどうしたのだ?」
古い友人、メラニー・カーマインの言葉に苦笑を浮かべるエデン。
目の前に居る人物がただの老人ではなく、やせ細った体から発するオーラのようなモノが未だに現役である事を教えて少しだけ嬉しく彼は思った。
軍を退役して政治家であったエデンの父の人脈を受け継ぎ、目の前に居る老人を紹介されてそのサポートをうけて政財界へと入った。
今のエデン、大統領の地位に就けたのは彼のお陰だった。
「“こんな”時だからこそ尋ねたのさ。 政財界の重鎮である君をね」
「こんなベッドに横たわる老人にか?」
「表向きは息子のケビンに職を譲ってはいても、実権は君が握ったままなのだからしょうがない」
「あれはまだ未熟よ… あの驕りと傲慢をコントロール出来ぬ内はまだまだ…」
二人要人による密談は深夜にまで及んだ…
二両の獅子が土煙を上げて疾走し、二本の長大な牙を持つ頭を互いに巡らせて噛み付く隙を伺っている。
「楠田ー! 進路そのまま! 限界まで走らせろー!!」
「たっ大尉ー! 悪路で安定が~!?」
「言い訳はいい! このじゃじゃ馬を乗りこなしてみせろ!!」
「ヘンリー! 左45度ターン!!」
「イエッサー!」
地球をモチーフにした地球連邦軍マーク、今ではロンデニオンの御旗代わりになっているマークが入った二両の61式戦車を駆り、コロニー内の演習場を駆け回るのは日本帝国陸軍の宇喜田大尉が戦車長、楠田曹長が操縦手の日本チームと、アメリカ合衆国陸軍のカービンソン大尉が戦車長、ヘンリー少尉が操縦手のアメリカチームだ。
61式の評価試験を頼んで1週間。 マニュアルを渡された翌日にはそれを読破して、そのままファクトリーへと直行し実物と対面。 その翌日にはファクトリー内のシミュレーターに、日米仲良く一日中引きこもり基本操作をほぼマスター。 ロンデニオン滞在4日目には演習場で実機を乗り回し始め、今ではレーザー照準を用いた模擬戦を体力の続く限り行っている始末だ。
「決着が付いたようだぜ准将」
少し皺枯れた声に横を向くと、ツナギ姿にサングラスを掛けた初老の男性、日本帝国陸軍で整備班の1つを任されているという後藤整備班長が61式に視線を向けながら隣に立っていた。
「くそぉー! また連勝できなかったー! 楠田ーー!!」
「えーー!? 俺のせいですかーー!?」
「ははっ、そう簡単に連勝はさせんよウキタ」
「次はこちらが連勝にチェック(王手)ですね大尉?」
動きを止めた二両の61式から無線越しの声に少しげんなりする。 …皆さん、元気ですね…
宇喜田さん達と日本、アメリカ外交官が来て状況が少しだけ加速した。 三つの技術准将の辞令と、日本帝国とアメリカ合衆国の戸籍を受け取り、とりあえずの公の身分を手に入れた。 日本帝国国民 藤枝 慎治と、アメリカ合衆国国民 シンジ・フジエダの誕生だ。 しかも漢字表記が合ってるし… ぶっちゃけ両国とも俺を取り込みにきている…
だいたい階級が同じとはいえ、三つの軍属は異常だ。 多分、日本とアメリカの利害が一致した結果なんだろうな~。 日本籍とアメリカ籍は自国との繋がりを他国に見せ付けての牽制で、日本籍をアメリカが認めたのは、下手に揉めて時間をかけるより認めることでしばらくの間二カ国だけの秘密とする事で、各国に先駆けて取り込みと有利な条件を引き出すための時間を作り出す方が無難といったところか? 国連准将は他国に対する表向きの建前で、コロニーはアメリカと日本の物ですがコロニー管理者は国連の軍籍も持ってますよ~、いずれは人類のために貢献しますよ~なパフォーマンスと国連での発言権強化の為… あとは、例の計画に公に参加させるためかな?
外交官の話では各国が国連の場でコロニーに何がしかの命令をしようとすれば、日本とアメリカが大金かけて独自に開発したものだからと拒否って、両国に個別に接触しても共同開発だからもう片方の同意がなければ無理! これでロンデニオンに命令できる国はありません! どやっ!?
と、いった話だったが… お決まりでウチからの要請は宜しくね!も付け加えていたな~…
日本とアメリカに雁字搦めにされてる気がする… 今のところ武力行使などでコロニー制圧に来ないのは上の存在が押さえになっているからなんだろう。 未知の技術を持つ存在…されどその上層部は今だ把握できないから慎重融和策と搦め手で着てるんだろうな~。
本当は他の国とも交流を持ちたいが手が回りそうにない。 とりあえず現状維持で、まずは日本とアメリカから交流を深めてそれを足場にしよう。
よらば大樹の影とも言うし。
コロニー移住者の件も任せて見ようかな? 都市運営は複雑だから専門家に任せた方がいいだろうし。 コロニーでこちらが抑えるべきはファクトリーと港部分にしてと…
「眉間に皺寄せてどうした准将?」
「…色々と考える事が多いんですよ、おやっさん」
「しょうがあるめぇ? なんせ准将閣下だからな」
異世界で神様に使われ、こんどは両国に使われるのかもしれない俺の人生って…
「はぁ… おやっさん。 61式はどうです?」
気分を変えるために此所に来た本来の目的を溜め息混じりに訪ねる。
「ああ。 レポートでも出してるが、今の所は大きな問題は出てねぇな。 部品関係は国際規準に合ってるからサイズは合う物が多い、専用パーツ以外は他のから流用が利くだろうよ。 但し、材質の関係で強度にバラつきが出るかもしれんからそこら辺は現場の整備員のさじ加減だな」
「稼働に問題は無いんですね?」
「ああ。現場から見たら許容範囲だ、整備でコントロール出来る。 急に動かなくなる事はない。 良く出来てるよコイツは」
一見、冷静沈着に見えるおやっさんだが、宇喜多大尉達と同じく1日でマニュアルを読破して翌日には整備マニュアル片手に61式を分解して見せるほどの熱中ぶりだった。
「そうですか… あとは補給品の流通をしっかりすれば…」
「それとバッテリーだな。 このご時世で化石燃料を使わない電気駆動は画期的だが、その辺の環境も整えないと戦場で立ち往生しちまうぞ?」
61式はガソリンや軽油を使わない大容量バッテリー使用の電気駆動車だ。 故にこの世界では貴重な化石燃料を消費しないで済むメリットが有るが、代わりに充電設備が必要になる。
専用の充電器具はコロニー内で量産出来るし、時間は掛かるがこの世界の発電機を使って充電する事も可能だ。
対策としては61式と一緒に大量の充電器具を提供して普及させるぐらいしかない。
「准将! コイツは何時、実戦配備されるのでありますか!?」
まだ早いですよ宇喜田さん。
「実際に使われる立場としては、61式は合格なんですか宇喜田大尉、カービンソン大尉?」
「スペックは問題ありません准将。 性能面ではエイブラムス戦車を全て上回っています」
「ああ。 90式も良い戦車だったが、コイツは段違いだ! しかも名前が61式というのも帝国戦車乗りとしては馴染み深い」
宇宙世紀の技術で作られた連邦軍正式戦車は伊達じゃない…か。 想像以上の好感触だな。
「それじゃあ問題はないんですか?」
「…あ~。 いえ、准将。 1つだけ問題になりそうな事が…」
「…そうですね。 国土に余裕のある我が国はともかく、帝国では…」
難しい顔をする大尉2人。 カービンソン大尉の言葉、国土の広さで連想される問題は…
「サイズ…ですか?」
「そのとおりです准将。 国土が広く平地の多い我が国や、それに近い土地なら問題は無いと思われますが…」
顎に手をやり思案顔のカービンソン大尉の言葉を軽く手を上げて遮り、後を繋ぐ宇喜田大尉。
「帝国の領土内…国土に敷かれた道の幅と強度が61(ろくいち)に耐えられる物はかなり限られるかと…」
狭い国土と起伏の多い日本では大型車が通れる道は限られてくる。 前に呼んだ本に、日本の戦車はその辺りの制限が他国に比べて厳しいと呼んだことがある。
61式は90式やエイブラムスより一回り以上に大きく、その分重量が嵩む。 下手な道路を通ればアスファルトが砕けて、道が陥没してしまい他の車両が使用できなくなってしまう。
「道を破壊しながら進軍するのは、まずいですよね…」
「はあ。 BETA襲来に備えて戦術機を載せた輸送車の展開の為に、帝国でも交通道の整備が進められてはいるらしのですがあまり進展は無いと小耳に挟んだことがあります。 …しかし、それを差し引いてもコイツは欲しいんですよ准将。 他の冷や飯食らいの戦車兵も同意見だと愚考します」
戦場の主役の座を戦術機に取られた者同士、宇喜田大尉とカービンソン大尉が視線を交わして頷きあってる。
ていうか仲良いですね二人とも。 外交官さん達も一緒に会談する時は口裏合わせたように息が合ってるし…
ああ、そうか。 オルタネイティブ第5計画をアメリカがまだ発表してないし、BETAも日本に上陸してないので在日米軍も引き上げてないから決定的溝が出来てないからか。
このまま友好的な状態でいてくれると人類にとっては良いと思うんだけどな~
…今はそれを考えても詮無いか…
ロンデニオン時間深夜
当直の兵士などのごく一部を除き静まりかえったコロニーに1つの動きがあった。
日本とアメリカの滞在者が使用している港とは反対に位置するもう1つの港…
今のところコロニー管理者以外の人間が立ち入る事ができないファクトリーとも繋がる港の一画で、1つのゲートがゆっくりと静かに開いていく。
姿を現すのは白い木馬にも似た形の艦を背にした黒色の機体。
人の形を模したそれは、背面に備えられたバックパックのバーニアを軽く吹かしてゆっくりと港を進んで行く。
やがて、照明が殆ど落とされた港から出たそれは、月明かりに照らされて宇宙(そら)へと踊りだした。
流星のようなバーニアの軌跡を残し、恐るべきスピードで疾駆する機体。
そのコックピットに座ったシンジは、襲い来るGに耐えながら白いヘルメットの奥でこう呟いた。
「これがガンダムか…」と…
その呟きに答えるように機体の頭部に付いたデュアルアイが力強く煌いた。